シリーズ「日本の開発協力史を問いなおす」6『開発協力のオーラル・ヒストリー—危機を超えて』
JICA緒方研究所について
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日本のODAの基本原理は現地の人々の「自助努力支援」である。開発協力の主役が現地の人々であるならば、プロジェクトの成否を評価するのは、究極的には援助を「与える」側ではなく、「受ける」側の人々であるべきではないか。開発協力の歴史をバランスよく提示するには、援助を受ける側の人々の声を記録し、提示する必要がある—。本書はこのような視点から、オーラル・ヒストリーの手法を適用した援助研究をまとめています。
これまで開発協力の歴史を扱った学術文献は多数発表されていますが、援助を受ける側の人々の語りを多く用いたオーラル・ヒストリーは、日本語では、ほとんど存在していませんでした。本書はそのギャップを埋めることを目指しています。
著者は、その語り手として、中央の政策立案者でなくODAの主たるパートナーであり、日本人専門家のカウンターパートとして現地で実際にプロジェクトを運営し、実施していた人々を中心に選び、213件のインタビューを行いました。アジア、アフリカ、中南米の10カ国で、農漁業、製造業、教育、保健医療、人間の安全保障の5つのセクターから3件ずつ、計15案件を紹介します。インタビューのナラティブは、個々の案件紹介の中に効果的に埋め込まれ、対象プロジェクトを、日本、相手国双方向から立体的に浮かび上がらせています。
また、直面した政治的危機、環境的危機、組織の自立性の危機を、各プロジェクトがどのように克服していったかも丁寧に語られ、多くの具体的な教訓を読み取ることもできます。
本書は、JICA緒方貞子平和開発研究所の研究プロジェクト「日本の開発協力の歴史」の成果として発刊されている書籍シリーズ「日本の開発協力史を問いなおす」(全7巻)の第6巻です。
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