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低中所得国における非感染性疾患の社会経済インパクトと課題分析に関する研究

近年、低・中所得国(Low- and Middle-Income Countries: LMICs)の社会環境が大きく変化する中で、非感染性疾患(Non-Communicable Diseases: NCDs(注))による早期死亡者数が急激に増加しており、世界のNCDsによる死亡者数の約8割 (2800万人)がLMICsに集中している。今後2030年までにNCDsで亡くなるLMICsの人口数は倍増すると推定され、治療費が高額で致死率の高いNCDsへの対策の遅れが貧困国における医療支出の増大を招くとともに、労働人口の生産性を低下させることが懸念される。

しかし、LMICsにおけるNCDsの社会経済インパクト(公的医療支出の増加、労働生産性面での損失、家計の貧困化など)は、統計データの整備が進む高所得国に比べて十分には把握されていないのが現状である。そのため、NCDs対策への予算配分や援助が進まない悪循環が生まれており、海外援助を含むLMICsの公的医療支出に占めるNCDs対策予算は約1%に留まっている。

本研究は、LMICsにおけるNCDsの社会経済インパクトとNCDs対策推進に向けた政策的課題を、文献のシステマティックレビューと西アフリカの低所得国ブルキナファソに関する事例研究を通じて示すことを目的とする。研究の問いは、(ア)NCDsに起因して、LMICsへどのような社会経済インパクトが生じているのか、(イ)LMICsがNCDs対策を実施する上で、現状の保健システムにNCDs対策を統合するための政策的課題は何か、の2点である。

本研究は、2030年に向けたSDGsターゲット3.4(非感染性疾患による早期死亡率を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健及び福祉を促進する)、およびユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage)の達成に貢献するものである。

(注)非感染性疾患とは、主に心血管疾患、がん、慢性呼吸器疾患、糖尿病などの慢性疾患を指す。

研究領域
人間開発
研究期間
2023年05月29日 から 2024年03月31日
主査
井田 暁子
JICA緒方研究所所属の研究者
井田 暁子
関連地域
  • #アフリカ
開発課題
  • #保健医療