熱帯泥炭地の温室効果ガス評価・持続的管理プロジェクト署名式典開催

2023.10.06

先進的なグリーン経済などの活動を推進

国際協力機構(JICA)による技術協力プロジェクト「気候変動LULUCFセクター緩和プロジェクト」について2023年9月22日に、環境林業省でプロジェクト実施文書の署名式典が開催されました。インドネシア政府を代表して環境林業省アグス気候変動局局長代行、日本政府を代表して在尼日本大使館野本書記官とJICAインドネシア事務所次長の岡村が署名式典に出席しました。

近年、地球全体で深刻な課題となっている気候変動課題に対して、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)において、LULUCF(Land Use, Land-Use Change and Forestry:土地利用、土地利用変化及び林業)セクター由来の温室効果ガス(GHG)排出削減及び保全による吸収量増大が着目されています。インドネシアは陸地面積の約53%に相当する94百万haの森林資源を保有し、ブラジル、コンゴ民主共和国に次ぐ世界第3位の熱帯林保有国です。同時に巨大な炭素貯蔵庫と呼ばれる最大の熱帯泥炭地保有国であり、世界全体の泥炭地の約36%を保有しているとされています。しかしながら、1970年代前半から森林開発、木材生産等が増加してきた結果、1990年代までの間、年間2,000万m3の原木生産による顕著な森林減少が世界的に問題視されるようになりました。加えて、鉱業の進展や農業・プランテーションへの土地転用、森林火災、違法伐採等が森林減少・劣化に拍車をかけ、1990年から2007年までの17年間にインドネシアの森林面積は年平均187万haが失われ、森林率は、1990年の約62%から2015年の約53%へと減少しました。こうした森林伐採、プランテーション開発等は熱帯泥炭地の乾燥を促し、大規模な森林火災の発生及び泥炭分解が進むことにより温室効果ガスが大量に放出され、社会的な課題となっています。

インドネシアの温室効果ガス排出量は、森林伐採や泥炭地の開発等による土地利用変化を考慮すると、アメリカ、中国に次いで世界3位と言われています。特に泥炭地分解によるCO2の排出量は、インドネシアにおけるCO2総排出量の約38%を占め、気候変動問題への対処という観点から、泥炭地の適正管理を含めた森林減少・劣化対策は喫緊の課題となっています。例えば、2015年に発生した大規模な森林火災では、170万haの森林地と89万haの泥炭地が焼失し、同火災由来のGHG排出量は7.1~17.5億t-CO2であったと推定されています。過去のGHG排出量傾向をみると、泥炭由来のGHG排出量は森林減少/劣化由来の約62%(1990年から2012年の年平均GHG排出量は森林減少/森林劣化由来が351.2Mt-CO2eq/年、泥炭分由来は217Mt-CO2eq/年)とも推定されており、森林のみならず泥炭由来のGHG排出削減ポテンシャルは高い状況にあります。

JICAは2010年7月から2015年7月までの5年間にわたり技術協力プロジェクト「インドネシア国泥炭湿地林周辺地域における火災予防のためのコミュニティ能力強化プロジェクト」を実施し、コミュニティ型の泥炭湿地林における火災予防手法を開発しました。また、2009年12月からは、4年4か月にわたり、科学技術協力(SATREPS)「インドネシア国泥炭・森林における火災と炭素管理プロジェクト」を実施し、泥炭地管理手法の構築に向けて現場での測定やリモートセンシング、シミュレーションモデル等を活用した基礎データを蓄積し、火災検知システムと炭素評価モデルを構築しました。さらには、2013~2018年にかけて「日本インドネシアREDD+実施メカニズム構築プロジェクト」(IJ-REDD+)を実施し州レベルのREDD+の枠組みを構築しました。2023年6月に開始した「森林土地火災予防のためのコミュニティ運動プログラム実施体制強化プロジェクト」ともに泥炭地管理の促進をし、今後、適正な泥炭を含むLULUCFセクターの管理・評価に向け、これらを活用した泥炭地からの排出削減の方法論の確立及び国際標準化、REDD+活動との相乗効果による気候変動緩和策への貢献が期待されています。

今回、新たに署名されたプロジェクトでは、これまで JICA が実施してきた様々なスキームでの協力の成果を活用し、インドネシアにおいて泥炭地からのGHG排出量モニタリングの方法論および泥炭地の水位を確保した農業手法の改善と適用 、州レベルのREDD+コンポーネントの開発とこれら方法論の適用、さらにLULUCFセクターにおけるGHGインベントリ及びMRVの政策策定・実施の促進を行うことによって「自国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution: NDC)」(LULUCF分野)の達成に向けた気候変動緩和に資する持続的土地管理能力の強化を図ることでインドネシアのLULUCFセクターのNDC目標達成に向けた取組に寄与するものです。なお、本案件は2024年から3年間実施されます。署名式典の挨拶で、岡村次長は、「JICAは、森林火災予防への協力プロジェクトを本年6月から開始するなど森林セクターにおける気候変動対策への支援を強化している。これからも、日尼一体となってインドネシアの気候変動対策に新しい手法で取り組んでいきたい」と述べました。

岡村次長(左)Agus気候変動局局長代行(右)

岡村次長(左)Agus気候変動局局長代行(右)

岡村次長(左)Agus気候変動局局長代行(右)

本件に関するインドネシア国内問合わせ先

気候変動・森林分野について

JICAインドネシア事務所担当 井上
TEL: +62-21-5795-2112 (ex.616)
E-mail: Inoue.Erika3@jica.go.jp

広報について

JICA Indonesia事務所広報担当 プトリ
TEL: +62-21-5795-2112 (ex.222)
E-mail:putrisiahaan.in@jica.go.jp

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