ボランティアレポート:マラウイから日本へ思いを馳せて

2023.08.09

名前:阪本竜也
隊次:2021年度3次隊
職種:環境教育
配属先:リロングウェ水公社
出身地:大阪府堺市

普段、異なる場面に出くわすと、過去の自らの経験と照らし合わせることで対応しようとしますよね。私はその後で、無意識的に「比べて」いたことに気づきます。言わずもがな、1年半前にマラウイにやってきてからは、日常のあらゆる場面で̶しかし私にとっては非日常なのですが̶マラウイと日本を比較してきました。

マラウイの首都リロングウェでは、生活に必要なものはおおよそ手に入るため、物資の面では日本とそこまで変わらない生活を送っています。しかし、大多数のマラウィアンは質素に暮らしています。彼らと話していると、初めは快活であっても、話題はそのうちにマラウイの貧困や自身の貧しさにシフトしてゆくことが多いです。生活においては、金銭的な負担を減らすために彼らは工夫して日々を送っています。個人的な見聞から、彼らが他人に頼らなくてもできることの幅は非常に広いように感じます。幼い時から家事などを手伝い、親の働く背中を見て育つことで能力の幅が広がっていくのではないでしょうか。加えて、近隣住民や友人、家族・親戚間でコミュニケーションを密に取りながらサポートし合うようなコミュニティで成長することにより、確固たる居場所があるために、物が無くたって心は豊かなのです。これらのことが、彼らに備わっているであろう自ら工夫して課題を解決し壁を乗り越えてゆく能力、すなわち「生きる力」に結びついているのだと考えています。果たして、現在の日本人はどうでしょうか。スマートフォンで何でも購入できる時代。コミュニケーションすら、メッセージアプリ上で完結してしまいます。物が溢れかえっている割に、我々の心が豊かとは言えないことは何とも皮肉であり、物が無いと決して幸せではない、と決めつけていた自分の想像力のなんと貧しいことでしょうか。ある日突然、生活に必要な物資が手に入らなくなったら…生きる力が不足したように思われる現代の日本人が、心身ともに飢えてゆく姿を想像するとゾッとします。もちろん杞憂だと信じていますが。

このマラウィアンの「生きる力」に惹かれながらも、多くのマラウィアンとは比べ物にならないほど豊かで満ち足りた生活を送っていることに疑問を抱き、金銭的または生産性のある支援をするわけでもなく、まるで非の打ちどころのないリロングウェ水公社にとって果たして必要とは思えない(ともすれば不必要な)活動をさせてもらっていることに、自らの存在意義を幾度となく考えてきました。とはいえ、右も左もわからない自分に、マラウィアンがそっと救いの手を差し伸べてくれるたびに、ほんの少しでもマラウイのためになるようにと気持ちを新たにし、自分ができうる限りの活動を行ってきました。

マラウイに派遣されるまで、COVID–19の感染拡大の余波により約2年間待機していました。しかし、待ち焦がれて叶ったマラウイでの生活は忘れることのない人生の1ページとなり、マラウイと日本を比べて「貧しさ」や「幸せ」のイメージが覆ったことは、そのページ上で鮮やかな色彩となって眩い輝きを放っています。これこそが青年海外協力隊として活動する醍醐味であり、決してお金で買うことのできないかけがえのない経験ではないでしょうか。待機したことを差し引いても、予想だにしない額の御釣りが返ってくるほどです。

マラウイには「Masiku amathera kuchiseko(マシク アマテラ クチセコ)」ということわざがあります。直訳の意「空いたドアはすぐに閉まる」から、「時間が過ぎるのは早い」と意訳できるそうです。早いのか遅いのか、帰国まで半年を切りました。自分はいま日本ではなくマラウイにいるのだということを常に心に留めて、帰任まで思い残すこと無きよう走り抜けたいと思います。この場をお借りして、そして帰任まで半年を先んじて、私の派遣やマラウイでの活動に関わっていただいたマラウィアン・日本人の皆様に感謝申し上げます。

語学訓練修了後、同期隊員&語学の先生と

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教育分科会にて

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カムズ・ダムⅡ

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マラウイの主食シマと副菜

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