パプアニューギニアJICA海外協力隊ストーリー
~子どもの興味を引く教材づくり~

2023.07.25

「パプアニューギニアの水を飲んだ者は、またパプアニューギニアに帰ってくる。」

初めて足を踏み入れた異郷に魅了され、その国を第二の故郷として感じるJICA海外協力隊は少なくなく、パプアニューギニア(以下PNG)のみならず、アフリカやアジア等、様々な地で言い継がれている有名な諺の一つです。

2015年から2017年にかけて、JICA海外協力隊小学校教育隊員としてPNG東ニューブリテン州ココポ市の小学校で活動を行った笹瀬正樹さんもまさにその一人です

【追加情報 】
笹瀬さんが2023年6月から1か月に渡る活動を動画に纏められました。
6年半ぶりとは思えないぐらい、活き活きと活動を行われていいます。笹瀬さんの活動の様子だけではなく、パプアニューギニアの子供たちの様子や学校の雰囲気を感じていただけます。
活動報告 パプアニューギニアKAMISHIBAIプロジェクト

JICA海外協力隊としての活動

笹瀬さんはJICA海外協力隊として活動していた当時、地域の子どもたちが本に触れる機会が非常に少ないことに気付き、絵本や物語を通して楽しく学ぶ機会を提供したいと考え、現地で課題とされていた「ごみのポイ捨て(環境)」「児童喫煙」「職業とジェンダー」をテーマにした絵本を制作しました。

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笹瀬さんは制作した絵本を活用し、配属先の小学校や近隣のコミュニティを巡回し、小学生に対して絵本の読み聞かせを実施しようと考えました。生活に身近なテーマを題材とし、絵本形式でわかりやすく説明する活動に、児童のみならず教員や保護者からも好意的な反響が多く寄せられました。

PNGでJICA海外協力隊としての活動を終えて

JICA海外協力隊の在任中は、活動に協賛する任地の企業からの支援を受け、制作した絵本を100部増刷し、近隣の学校に配布しました。しかし、この活動に対するインパクトを測定する調査を実施する前に、笹瀬さんのJICA海外協力隊としての任期が終了してしまいました。そのことをずっと心残りに思っていた笹瀬さんを後押ししたのは、任期終了後に入職した教育系NGOでの職務経験でした。

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NGOの活動では、東アフリカのタンザニアの学校において、JICAの草の根技術協力事業の教育専門家として活動し、「どのような伝え方をしたら現場の教員に響くのか」「どういう情報やデータがあれば説得力が得られるか」などの知見を、経験を通して習得すると同時に、担当していた広報業務を通じて、SNSでの発信や動画の制作など、効果的に伝えるためのスキルも身に着けられました。

そこで笹瀬さんは、JICA海外協力隊時代に実施した絵本の読み聞かせ活動を更に発展させ、パプアニューギニアで持続可能な教育支援活動の可能性を探る事を目的とし、一般社団法人協力隊を育てる会・帰国隊員支援プロジェクトに応募し、絵本読み聞かせ活動の効果を測定すると共に、PNGの教育支援活動の可能性を探る為の調査計画を立ち上げました。

PNGの再訪と活動の発展

今回のPNG訪問は2023年6月上旬からの約1か月間。笹瀬さんが実施した活動は、

①JICA海外協力隊時代に活動していた地域(東ニューブリテン州ココポ市)の近隣の小学校において、児童と教員を対象に絵本(ゴミのポイ捨てをテーマとした絵本「ポイポイとゴミおばけ」)の読み聞かせを実施する。

②読み聞かせを通じて児童自身が楽しく学びを得ることができたかを、事後アンケートにより調査する。また、日ごろの行動を振り返り、行動変容に繋げることができそうかを、読み聞かせ前後のインタビューで確認する。

③読み聞かせ活動に対するフィードバックを教員から聴取し、絵本の教育現場での活用の可能性を探る。

④PNG国内で図書館の普及を行うNPO「Buk Bilong Pikinini」や国立図書館、教育機関等に活動を紹介し、PNGの児童書に関する意見交換を実施する。

の4点です。

笹瀬さんは今回のプロジェクトで、JICA海外協力隊時代の配属先の小学校を含む4つの小学校、そして、コミュニティやマーケットなどで読み聞かせを実施しました。その中で、以下のような成果が得られたとのことです。

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  • 小学4年生へのアンケートでは、「面白かったか」「勉強になったか」「ポイ捨てをやめられそうか」との質問に対し、約9割の児童が「はい」と回答した。また、インタビューでは、読み聞かせ前には「ゴミのポイ捨てはダメ」と認識しながらも、その理由まではうまく答えることができなかった児童が、1週間後に同じ質問をしたところ、紙芝居の学びを活かした回答ができていた。環境問題について友達に注意喚起をする場合の伝え方にも同様の変化が見られた。
  • 教員からは「物語を通じた学習は、理解しやすいし記憶にも残りやすいため、とても効果的だと思う」「ゴミのポイ捨ての内容は、理科や健康教育など様々な教科に関わっている」「学年問わず小学校教育全体で活用できると思う。」など、多くのポジティブな意見が得られた。
  • 町役場や保健局の職員へのプレゼンテーションを実施したところ、健康推進や環境推進の担当者の方が関心を示した。管轄地域内の学校や保健センターに印刷した資料を配布することとなった。

今回のプロジェクトで実施した紙芝居を通じた教育に対して確かな手応えを感じたと、笹瀬さんは話します。

PNGをはじめとする大洋州島嶼国では、廃棄物処理能力の向上は非常に重要な課題の一つです。それと同時に、草の根レベルでゴミを減らしたり、再利用を行ったりすることの重要性も広く認識されてはいますが、PNGでは環境教育を積極的に取り組んでいる教育機関は多くないのが現実です。

そんな中、笹瀬さんは絵本の読み聞かせを行うことにより子どもたちに行動変容を促す、という新しいアプローチでPNGにおける教育支援の可能性を探り、JICA海外協力隊の任期中から様々な活動を展開してきました。

笹瀬さんは今後もPNGに対する教育支援活動を継続して行っていくことを計画しており、今回の活動を足掛けとして、日本国内で立ち上げた団体で国際協力活動を続けていく予定とのことです。

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