日本から南へ約5,000km、大洋州(オセアニア)地域にあるパプアニューギニア(PNG)は、大小600もの島々からなり、総面積では日本の約1.25倍もあります。PNGは非常に美しい自然にも恵まれており、その陸地や近海には希少な動植物、海洋生物が多数生息しています。人口は約1000万人と日本の10分の1以下ですが、多くの部族社会が存在し800以上の言語が話されていると言われています。こうした多様性に満ちた自然や文化がPNGの魅力とも言えるでしょう。

主な産業としては鉱業が盛んで、金、銅、ニッケルの他、近年は液化天然ガスの輸出が増えており、PNGの経済成長に大きく貢献することが期待されています。また、その豊かな自然を利用した林業や、パーム椰子やココア、コーヒー栽培といった農業、カツオやマグロ漁などの水産業も盛んです。

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一方、PNGは持続可能な成長を実現するために、まだまだ多くの協力を必要としています。私たちJICAは日本の政府開発援助(ODA)事業の実施機関として、PNGにおいて「経済インフラ整備・維持管理」、「産業振興」、「教育」、「保健医療」、「環境保全・気候変動対策」といった分野で活動を行っています。

これまでも有償資金協力によるポートモレスビーの空港や下水道整備、無償資金協力による道路や橋梁の整備、技術協力による稲作振興やコミュニティ開発支援、遠隔地での教育普及や国定教科書の策定支援、感染症対策、森林保全や生物多様性保全、廃棄物管理といった事業を行ってきました。さらには海外協力隊やNGO等による草の根技術協力といった市民参加事業、そして日本の民間企業の技術を生かした民間連携事業といった様々な事業を通してPNGの経済や社会の成長に協力してきました。また、こうした事業を通して、人々が安心安全に暮らせる平和な社会の構築や、ジェンダー平等・女性のエンパワーメントにも取り組んでいます。

PNGに対する日本のODAは、独立前年の1974年に実施された無償資金協力事業「国立漁業訓練大学設立計画」から始まり、2024年はODAの50周年とともに、翌25年にはPNG建国50周年の節目を迎えます。これまで、日本とPNGは良きパートナーとして関係を構築してきました。近年においては世界情勢が大きく変化しつつあり、また気候変動対策や生態系保全、海洋汚染対策といった地球規模での課題への対応も必要となっています。そうした中、日本とPNGとの協力関係の強化はますます重要性を増しています。私たちJICAは「信頼で世界をつなぐ」というビジョンのもと、これからも日本とPNG両国の関係強化に努め、双方の成長とともに、ひいては地域の安定と発展、人間の安全保障に貢献していく所存です。

2023年9月
パプアニューギニア事務所長
松岡 秀明