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2023年7月に着任した久保英士と申します。

スーダンについて、みなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか?
多くの方にとっては、あまりなじみのない国、あるいは内戦や紛争といった危険なイメージがある国かもしれません。

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スーダンという国名は、アラビア語で「黒い人」を意味する言葉に由来し、古くからアフリカと中東が交わる結節点でした。国土を縦断するナイル川や砂漠、緑あふれる山地と多様な風土やそこに暮らす多様な人々は、4000年以上の豊かな歴史や文化を育んできました。また、「アフリカのパンかご」とも言われ、農産物や鉱物資源のポテンシャルでも世界の注目を集めています。

そして、何より私にとって印象的なのは、訪れた方の多くがスーダン人のホスピタリティや寛容さに感銘を受け、スーダンの大ファンになって戻ってくることです。したがって、今回スーダン事務所で働けることをとても幸運に思っています。
2011年の東日本大震災の際も、スーダンは南スーダンが分離独立する難しい時期にある中で日本に対する温かいメッセージと義援金を届けてくれました。
また、2023年4月、武力衝突の発生を受けて、日本人が国外に緊急退避するために800kmの長距離を車で移動する際、JICAと協力してきたスーダン関係者が、自らの危険や苦境を顧みず、退避をエスコートしてくれたり、大量の貴重な燃料を無償で提供してくれたこと等には、言葉では言い尽くせないほど感謝の念を感じています。

残念ながら、現在、スーダンは大きな苦難に直面しています。2019年以降、民政移管に向けた取り組みがなされてきましたが、クーデターによる停滞を受け、さらに先述の通り、2023年の4月には国軍と準軍事組織の武力衝突が発生し、8月の時点で約400万人が住む家を追われ、未だ戦闘が継続しています。
JICAはこれまで、行政能力の向上等による平和の定着支援、保健医療や水・衛生(廃棄物管理等)といった基礎生活分野支援、農業を中心とする産業振興・経済開発支援等に取り組んできました。
武力衝突の発生を受けて、安全確保のためスーダン事務所の邦人職員はエジプトに移りましたが、スーダンの人々が苦境にある今も、現地や第三国にいるスーダン人のスタッフとともにパートナーと連絡を取りながら、可能な限りの活動を行っています。

目下の軍事衝突にとどまらず、気候変動、ウクライナ戦争を始めとする地政学的リスクによる複合的な危機は、中長期的にもスーダンの経済基盤や社会基盤に大きな陰を落としています。こうした中で、一日も早く平和な日常が戻り、長く希求されてきた民主化や地域格差是正が着実に実施され、スーダン本来の地力の発揮による繁栄の実現、人々の安全や幸福につながることを願っています。そのために、引き続きスーダンや日本の皆様とともに最大限の協力を行っていきたいと思います。私自身、直前まで出向していた島根県隠岐諸島の海士町で学んだ「ないものはない」(都会的な便利さはなくても、未来のために大事なもので地域にないものなどない)精神の下、取り組んで参ります。

JICAスーダン事務所長
久保英士