イズミル・アナトリア工業技術高校における供与機材引渡し式の実施~トルコにおける自動制御技術教育の支援とその後の発展~

2024.04.04

イズミル・アナトリア工業技術高校における供与機材引渡し式の実施~トルコにおける自動制御技術教育の支援とその後の発展~

 2月29日、トルコ・イズミル県のアナトリア工業技術高校イズミル校で、「自動制御技術教育改善計画」フォローアップ協力によりJICAが供与した自動制御の実習機材の引渡し式が行われました。
 JICAは過去に、産業オートメーション(Factory Automation)分野の設備整備や教員能力向上を支援する技術協力プロジェクト「自動制御技術教育改善計画」を実施しました。
 今回実施されたフォローアップ協力では、過去の「自動制御技術教育改善計画」プロジェクトで供与された機材の故障・不具合を解消し、継続的な使用と維持管理を支援するため、産業オートメーションに関わる機材、ロボット及び制御関連機材、コンピューター情報通信機材、その他電子部品の供与を行いました。
 引渡し式には、JICAとアナトリア工業技術高校イズミル校の関係者の他、イズミル県教育省、同校の創設者であるトルコのゾルル財閥、供与機材を製造する三菱電機株式会社、オムロン株式会社等が参列しました。同校の生徒が見守る中、式典は厳かに行われました。

イズミル・アナトリア工業技術高校のロボットプログラミング

 式典終了後、今次協力で供与された機材の視察を行い、供与機材が置かれている教室で、プログラミングされた自動制御ロボットの実演が行われました。同校教師陣からは、このようなプログラミングは大学での学習内容とほぼ同じである旨伝えられ、同校の教育レベルの高さがうかがえました。
 この他、他の教育機材が置かれた実験室や、別棟の教員研修センター(Teacher Training Center、TTC)も視察しました。教員研修センターには、日本製の供与機材が多く並んでいるほか、トルコにおける産業オートメーション分野の人材育成を期待する他ドナーや民間企業からの支援機材も導入されていました。イズミル高校の卒業生は産業界から高い評価を得ています。本視察は、日本の支援を皮切りに、同校における教育が各界から注目され、同校が、教育機材、教員、他校教員への研修施設を備えた高い技術力をもつ高校へと成長したことが随所からうかがえるものとなりました。
 式典が行われた、イズミル・アナトリア工業技術高校は、「自動制御技術教育改善計画」プロジェクトのパイロット校に選ばれた学校です。アナトリア工業高校とは、通常4年制の工業高校で、2000年台初頭、全国に157 校設置されていました。ここではトルコ中等教育を通じて、産業界、特に製造業の発展を目指し、専門人材を育てる教育が行われています。イズミル・アナトリア工業高校は、1998 年 9 月、当時プラスティック産業を中心に広く活躍していた企業家マザール・ゾルル氏の寄贈によって建てられ、生徒への教育と、教員の産業オートメーション、自動制御分野の能力向上を同時並行で進めてきました。トルコ西南部における工業都市イズミルの産業活性化に大きく寄与してきた学校です。

自動制御技術教育支援の歴史と発展

 フォローアップ協力のもとになった「自動制御技術教育改善計画」の実施は、今から20年以上前の、2001~2006年まで遡ります。2000年代初期のトルコは、産業発展が著しい時期であり、産業界が必要とする質の高い中堅技術者、特に自動制御技術を持った人材の養成と、技術者の供給を可能とする職業教育システムの確立が必要とされていた時代でした。本協力では、アナトリア工業技術高校イズミル校とコンヤ校のパイロット校2校に産業オートメーション技術学科を設立し、教育カリキュラムを策定、学習及び教育用資材を整備し、教員の技術能力を向上させるための協力が行われました。
 この協力と成果を受け、トルコ国民教育省は、2003年にイズミル校へ教員研修センターの設置を決定。その後、国内の職業訓練高校20校に対し、産業オートメーション技術学科を新設することも決定しました。トルコでは、産業界からの技術者育成と供給に対する要望は依然として高く、教員研修センターにおける教員研修の実施体制の整備が急がれていました。このような状況の中、トルコ政府からの要請を受け、2007~2010年に「自動制御技術教育普及計画強化プロジェクト」が実施され、JICAは、研修計画の作成や研修コースの実施・評価にかかる人材育成を支援しました。教員研修センターの建物は2007年に完成し、多くの国内の高校教員に対する研修が行われてきました。
 その後、2012~2015年にかけて、プロジェクトの成果を更に拡大するべく、トルコの周辺9か国に対する第3国研修「中央アジア中東向け事業制御技術普及プロジェクト(SPREAD)」が実施され、自動制御技術に係る研修カリキュラムの作成、教材の整備、研修の実施に関わる人材育成が行われました。同研修の実施では、トルコの技術教育・職業訓練能力が向上し、自動制御技術の分野において産業オートメーション技術教育を教授する体制が整ったことが実証されました。
 トルコの産業とオートメーション技術の発展と共に、自動制御技術に対する支援は継続拡大し、イズミル・アナトリア工業技術高校は、当該分野に関わる国内の人材を育成し、周辺諸国の人材育成・技術向上にも貢献出来るまでになりました。イズミル校の発展は、トルコの産業発展を象徴するものであり、トルコの自動制御技術及び技術者育成を行う教育環境が、新たな段階に入ったことを物語っています。

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