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事例紹介2014.12.27

ネバー・ギブアップ、地域でサバイバル!~雨水博士のBOPビジネス(最終回)

Skywater Bangladesh Limited/会長 村瀬 誠 さん

地域:クルナ管区バゲルハット

テーマ:水資源・防災

団体の種類:民間企業

Skywater Bangladesh社

現在、Skywater Bangladesh社では、22名の職員が働いている。

「AMAMIZU」誕生

「一人でもBOPビジネスをやる」と心に決めたが、さてどのように資金を調達すべきか。村瀬氏は、あちこちにあたるが、十分な資金が調達できない。

その頃、ちょうどJICAの協力準備調査(BOPビジネス連携促進)の第1回目の公募を知った。応募したところ、今までの実績や、ビジネスモデルの実現性を評価され、見事に提案が採用された。これで事業をスタートさせることが出来る。追い風が吹いてきた。

JICAとの契約も無事に済み、バングラデシュの左官工をタイに派遣。研修を終えて、バングラデシュでの試作に取り組んだ。満を持しての試作であった。ところが、結果は期待はずれの失敗続きである。研修で学んだ通りに作っても、ひびが入り、まともな完成品ができない。

調べるとタイとバングラデシュの気候や砂の微妙な違いが原因とわかった。モルタルの作り方や天日干しの方法などを見直した。湿度の保ち方、日差しに当てるタイミングなど、繰り返し試行錯誤を重ねて、ようやく完成品第1号が生まれた。値段は3000タカ。大幅にコストを削減することができた。

AMAMIZU

AMAMIZUは、一つ一つ職人の手で端正に作られている。きちんと品質チェックを行い、日々改善に取り組んでいる。

村瀬氏は、バングラデシュで完成した新しい雨水タンクを「AMAMIZU」と名付けた。天からの恵みである雨水を活用して、人々が安全な飲料水を確保できるように願いを込めて。

地域に広がるAMAMIZUの思い

JICAの調査も完了し、市場に関するデータは十分に把握できた。チラシを配り、かわら版もつくって、マーケティング活動を開始。近隣のあちこちで販売説明会を開き、AMAMIZUの良さと購入することのメリットを訴えた。

しかし、思うように売れない。新しいコンセプトを理解し、受け入れるには時間を要する。村瀬氏はあきらめずに丁寧に一人一人と向かい合い、安全な飲み水の大切さやAMAMIZUを持つことで得られる利点を説明続けた。

そんなある日、説明会場の隅で聞いていた男性がAMAMIZUを是非買いたいという。その男は貧しい漁師であった。「頭金も払えないだろう」そう気を利かせた販売員は、断ろうとしたが、男は聞かずに、自分の家に来てくれという。

家に入ると、男は貯金箱を取り出し、販売員の前で割って言う。「これは私の全財産だ。子供達の健康のために、この雨水タンクを買いたい。」長年コツコツと貯めてきた小銭は、頭金を払って余りがある額に達していた。「私は貧しいが、寄付して欲しいとは思わない。この雨水タンクは、家族のために自分で買う価値があるものだと信じている。」

AMAMIZUの連結

AMAMIZUを連結することで、貯める雨水を増やしていくことが出来るモジュール発想で作られている。

AMAMIZUの販売は順調に伸びる。2012年には、200基を販売。2013年には600基の販売実績を挙げた。2014年は1000基を目標にしているが、既に大型の受注も入り、目標を大きく超える実績になりそうだ。現地の事業を本格化するため、2013年には現地にSkywater Bangladesh Ltd.を設立した。

公共施設にも広がる雨水利用システム

現在、村瀬氏は公共施設の雨水利用にも力を注ぐ。JICA バングラデシュ事務所と協働で、2014年に大規模な雨水利用システムのパイロットプラントをモレンガンジの県立病院に施設した。公共病院やコミュニティクリニックに大規模な雨水利用システムを導入するのは、バングラデシュ初の試みであった。利用開始のセレモニーには地元の有力者をはじめ大勢の方が参加し、大いに注目されている。ここで得られる利用実績や水質のデータは、今後のバングラデシュにおける公共施設の雨水利用の貴重な資料ともなる。

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あきらめず、しぶとく、会社を生かす

村瀬氏は、一貫して現場にこだわる。それが村瀬氏のスタイルだ。途上国の現場では、何が起こるか最後まで分からない。机上で、どれほど用意周到に考えても、予想外のことが起きるのだ。だからプランB(次善の策)では足りず、その先のプランCが必要だと村瀬氏は言う。BOPビジネスは、先の先へと考える用意周到さと、予想外のことが起きた時の覚悟が必要だ。

村瀬氏の挑戦は、まだスタートしたばかりだ。事業を拡大するためには、ヒト、モノ、カネの全てに渡って、新たな困難が待ち受けている。

BOPビジネスはネバー・ギブアップの精神で、地域でサバイバルすることだー村瀬氏は宣言する。

あきらめず、しぶとく。バングラデシュの人々が安全な飲み水を飲めるように会社が生き残る道を考え続ける。村瀬氏は、今日も未開の道を歩む。

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