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事例紹介2014.12.27

ネバー・ギブアップ、地域でサバイバル!~雨水博士のBOPビジネス(第1回)

Skywater Bangladesh Limited/会長 村瀬 誠 さん

地域:クルナ管区バゲルハット

テーマ:水資源・防災

団体の種類:民間企業

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Skywater Bangladesh Ltd.会長の村瀬 誠氏
No more tanks for war, Tanks for peace

途上国でのBOPビジネスは、予想外の出来事の連続である。次から次へと困難が打ち寄せ、休む暇もない。未知の市場の開拓は、並大抵の覚悟で取り組めることではないのだ。それでも人は何故このような困難にあえて立ち向かうのであろうか。

「それがヒューマンスピリットだから」

そう答えるのは、バングラデシュで安全な飲み水の供給に画期的な手法で取り組む村瀬誠氏である。村瀬氏は墨田区の職員として日本の雨水の利活用を推進し、この分野での世界的な権威として知られている。彼が自らのヒューマンスピリットの実践の場として選んだのが、飲み水に困っているバングラデシュであった。

天の恵み「雨水」を飲み水に

「1000基目のタンクを完成しました。」嬉しそうに目を細めながら、Skywater Bangladesh Limitedの会長である村瀬誠氏は、胸を張ってこう語る。出来上がった鈍色のタンクが、バングラデシュの南部の日差しを浴びて、出荷を待っている。

これは村瀬氏がタイの技術を応用して開発した雨水貯水タンク「AMAMIZU」である。安全な飲料水に欠くバングラデシュの貧しい人々の為に、世界中の事例を研究してデザインした。簡単な仕様であるが、丈夫で長持ち、手が掛らずに、コストも安い。画期的なアイデア製品なのである。1基5300タカ(約7千円)で、貧困層向けに割賦販売している。

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AMAMIZUには1トンの雨水を貯めることができる。乾季と雨季に分かれるこの国では、年間の降水量が2000mmあるという。このタンクに、屋根に降り注ぐ雨を集めて貯め、日々の飲料水とする。

黒いプラスチック性のタンクが市販されているが、高温になりやすく、水にプラスチック特有のにおいと味が付く。これに対して、AMAMIZUは、水温が上昇しにくいので、このような問題がない。また大気汚染の影響がない農村の雨水は、蒸留水のようなものなので菌が増殖しにくく、水が腐るということがない。

1トンのタンク一つで、6人家族の3ヶ月間の飲料水となる。乾季の熱い季節に、このタンクから飲む冷たい水を、地元の人は「sweet water(甘い水)」と呼んで重宝する。

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安全な飲料水から見放された人々

ここはバングラデシュの南西部、クルナ県モレルガンジにあるSkywater社のタンク製造工場。この地域の井戸水のヒ素汚染は他の地域に比べそれほど深刻ではないが、地球温暖化の影響によって海水面が上がり、川や地下水の塩害が年々深刻になっている。水道が通らず、ペットボトルの水を買えない地域の貧困層は、毎日1キロ、中には4キロも水を求めて池の水を汲みに行く。水運びができない人は、水汲みを人に依頼せざるをえないが、その費用も生活に重くのしかかっている。しかもその水は大腸菌などで汚染されており、村人達は慢性的な下痢で苦しんでいる。水が少なくなる乾季の終わりごろには病院は下痢患者で溢れる。

貯水池から直接水を汲む少女

政府や国際的な支援機関が何もしてこなかった訳ではない。砂で池の水を濾過する装置や、雨水を貯めるタンクの設置が行われてきた。しかし、砂ではゴミは取り除けても、塩やヒ素は取り除けない。これらを取り除くフィルターもあるが、高価である。

もっと問題なのは、これらの装置はメンテナンス負担が大きいことだ。支援機関は、装置を置くところまではするが、砂を入れ替えたり、故障したタンクを修繕したりはしない。置き去りにされた装置は、風化に任せて利用できず、人々は再び安全な飲料水から見放される。

1999年、この現状を知った村瀬氏は、立ち上がる。

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