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産業レポート2015.08.18

次世代のBOPビジネスがやってくる!

地域:全国

テーマ:民間セクター開発資源・エネルギー農業/農村開発

カテゴリ:ビジネスモデル

次世代BOP

BOPビジネスの見直しが必要?

日本では2010年あたりからBOPビジネスのコンセプトが広がり、多くの日本企業がJICAの支援を受けながら世界中で挑戦を続けている。世界の40億人を越すと言われるBOP層を対象に、新しい購買層として、バリューチェーンで組むパートナーとしてみて、発展途上国におけるビジネスを開拓しようと試みている。

BOPビジネスに取り組む方法には、いくつかのパターンがある。ひとつには、バングラデシュの人々を雇用したり、契約農家のような形で契約したりしながら、製品や産物をバングラデシュから国外(特に日本)へ輸出するビジネスである。「グラミン雪国まいたけ」の事例は、このパターンであり(注)、インクルーシブ・ビジネスとして貧困層をバリューチェーンに組み込む好例であると言えよう。

(注)BOPビジネス連携推進 緑豆生産の体制構築事業準備調査をご参照。

一方、今後増えると予想されるのは、バングラデシュの消費者をターゲットにしたビジネスである。バングラデシュは人口が多く、市場としても有望だ。しかし、バングラデシュの状況は急速に変化しており、従来のイメージとは随分変わってきている。これからビジネスを取り組むにあたっては、この変化を織り込んだ戦略が必要となる。

次世代BOP2

LDCから低所得国へランクアップするバングラデシュ

先頃、IMFは2015年の世界のGDP(国内総生産)のランキングを発表したが、バングラデシュは2014年から11位もランクアップした。2014年では1854億ドルで55位であったが、2015年には2053億ドルの44位に改善しているのだ。これは45位にあたるベトナムより大きいのである。

一人当たりのGDPも大きく改善している。2013年より1000ドルを超え、2015年においては1,284ドルに大きく上昇している。これは過去10年で2.5倍、2010年からの5年間でも1.5倍の水準である。以下のグラフで、いかに急激に所得が引き上がっているか見て取れると思う。

次世代BOP3

こうした所得水準の向上により、バングラデシュは、世界銀行により長らく後発開発途上国(LDC)として分類されていたが、その次のランクの貧困国を飛び越えて、今や低所得国(Lower Middle Income)に改善しているのである。バングラデシュを最貧国と呼ぶことは、もうできないのである。

この所得水準の改善は、人口に占める貧困率にも影響を及ぼしている。一般的な貧困層(Moderate Poverty)は2000年に48.9%であったものが、2010年には31.5%に下がり、2015年では24.9%にまで改善する見込みであるという。極端な貧困(Extreme Poverty)も、2000年に34.3%あったものが、2015年では12.6%になると見込まれている。

変化の意味するところ

こうした所得面の変化は、何を意味するのであろうか。

ひとつにはBOPビジネスの対象の見直しが必要となるであろう。C.K. プラハラードが「ネクスト・マーケット」を記した2004年において対象としていた貧困層は、バングラデシュにおいて半減しているのである。いわゆるBOP層だけをターゲットにするビジネスは、対象となる人口規模の縮小により、現実的ではなくなっている。

第二に、ライフスタイルの変化に注目すべきである。確実に購買力を高めている消費者は、生活を改善するためお金を使うことに躊躇しなくなってきている。農村でも電化が進む中、情報通信においてはスマートフォン、娯楽においては液晶テレビとケーブル放送、家電においては冷蔵庫が急速な普及を見せている。都市ではエアコンが飛ぶように売れているという。

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第三に、ビジネスモデルの新しいオプションに注目すべきであろう。バングラデシュの経済基盤が改善する中で、さまざまなインフラが改善してきているのだ。その最たるものが通信インフラであり、農村の電化の推進であり、モバイル・ファイナンスの普及である。これにより貧困層や社会的な弱者を支援するためのオプションが格段と増えているのだ。

このようなインフラの改善により、今まで不可能と思われていた貧困層や社会的弱を支援するビジネスが可能になってきている。より広く、よりきめ細やかに、より安く、より簡単に製品やサービスの提供ができるようになっている。次世代のBOPビジネスは、このようなオプションの組み合わせによって、新しいイノベーションを生み出していくことになろう。

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新しいビジネス機会を求めて

バングラデシュにおいて目に見えて分かるのは、人々の「量」から「質」への意識の変化である。これは製品だけに限らず、あらゆるサービスにも求められてきている。卑近な例では、都市部における外食産業の質の向上であり、清潔でお洒落なレストランやカフェが急速に増えている。このような変化は医療や教育のような公的なサービスにおいても同じである。

これはお金持ちだけの変化ではない。その変化は農村も含め、広い裾野へ広がっている。まだまだ人々の意識の変化に社会が十分に対応できてはいないが、このギャップこそが新しいビジネスチャンスである。

成長する市場を求めて、今後も日本企業のバングラデシュへの進出が進むであろう。従来のイメージを振り捨てて、新しい現実を見据えていく必要があると思われる。変化は予想以上に早く、そして劇的である。

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