142. 持続可能な稲作モデルについてキエンザン省ホンダット県での研修会実施 (2025年5月24日)
本プロジェクトのモデル1「メコンデルタ地域に適した持続型農業システムの開発と応用」では、気候変動に伴って変わりつつある環境に適した稲作技術の開発と応用を進めています。海水位上昇などによる塩水遡上の影響が増大しつつある地域では、稲作を続けられるかどうかが課題となっています。また、化学肥料の使用を抑制することも長年にわたる課題です。稲作におけるこれらの課題を克服するため、有機肥料の投入や微生物の働きを活用した養分吸収効率向上などの試験が実施されています。同時に、間断灌漑(Alternate Wetting and Drying: AWD)や不耕起栽培を取り入れて、温室効果ガス排出を抑えた稲作技術の確立を目指す工夫も行っています。
今回は、試験サイトの一つであるキエンザン省ホンダット県の稲作農家を会場に、その周辺農家や地元県、村幹部を招待し、モデル研究の成果、及びそれを踏まえた持続可能な稲作モデルを共有する研修会を実施しました。講師は、モデル1のリーダーであるNghĩa先生(カントー大学農学部)、およびモデル1と連携しているモデル11「インダストリー4.0による環境モニタリング技術の農業・養殖業への応用」のリーダーであるThái先生(カントー大学情報通信技術学部)が務めました。
Nghĩa先生は、稲作改良モデルから得られたデータ評価に関する報告を行いました。その中で、農家ベースの従来型耕作モデルと比較して多くの利点が確認されたことが示されました。具体的には、生育を維持し、収量とその構成は同等であるにもかかわらず、化学肥料の使用量が削減され、有機肥料とプロバイオティクスの導入により、土壌中の有用な窒素、リン、有機物の含有量が増加し、さらに土壌の孔隙率も向上しているという点です。
また、Thái先生からは、圃場での環境条件をモニタリングし、生産記録をアプリに蓄積するためのリモートセンサーを導入したことが報告されました。
ホンダット県農業環境局長も、新しい稲作モデルの優位性を踏まえ、この地域での更なる普及を目指す旨の発言がありました。また、モデル試験に参加した農家からも、大きな可能性を感じるとの肯定的な声が聞かれました。今後もモデルの継続的な実施と拡大、ならびに改良農業モデルのデータをさらに実証していくために、地域との協力を継続していく意欲が、モデルリーダー・参加者の双方から示されました。
関連参考プロジェクトニュース:
稲作モデルについて解説するカントー大学農学部Nghĩa先生
情報通信技術の応用に関して講義するカントー大学情報通信技術学部Thái先生
研修会への参加者