パプアニューギニア・スタディーツアー

2018年3月5日

ソロモン諸島のすぐ隣にあるメラネシア地域の大国「パプアニューギニア(以下、PNG)」は、ソロモン同様に熱帯雨林に囲まれており、豊富な森林資源に恵まれていますが、歴史的に大規模な森林伐採が行われてきた国です。それ以外にも、慣習地という部族単位で土地を所有し、地方の住民の多くが未だに自給自足の生活を送っており、多様な部族が共存し、国民の大半がピジン語を話すなど、ソロモンとPNGは多くの類似点を有しています。

このPNGの森林・環境保全・気候変動セクターに対してJICAは「気候変動対策のためのPNG森林資源情報管理システムの活用に関する能力向上プロジェクト(カウンターパート機関:PNG Forest Authority)」と「生物多様性保全のためのPNG保護区政策強化プロジェクト(カウンターパート機関:PNG Conservation and Environmental Protection Authority)」という2つの技術協力プロジェクトを実施しています。その取り組みを学ぶべく、2018年2月26日から3泊4日で、本プロジェクトの主要メンバーである森林研究省の管理職6名と共にPNGのJICAプロジェクトの視察を中心としたスタディーツアーに行ってきました。

到着後、すぐにJICAパプアニューギニア事務所を訪問し、事務所長への表敬後、環境保全・気候変動セクターの担当所員による安全対策ブリーフィングや、同セクターにおけるJICAプロジェクトの位置づけや支援方針についての説明を受けました。

翌27日は、PNG国の森林資源管理を担うPNG Forest Authority(PNG森林公社:PNGFA)を訪問して、PNG及びソロモン両国の森林セクターにおける現状の取り組み、法制度や開発計画、そして抱えている課題について、情報交換や意見交換を行いました。

ソロモンからの参加者にとって印象的だったのは、PNGの国土面積は462,840平方キロメートルに対し、ソロモンは28,450平方キロメートルと、PNGの6%の国土面積しかないにも関わらず、原木輸出量を見ると、PNGは年間380万立方メートルの輸出量であるのに対し、ソロモンはその約70%にあたる260万立方メートルを輸出していることでした。この輸出量は、ソロモンの持続可能な森林伐採量である年間400,000立方メートルの6倍以上となり、伐採量を管理できる法整備と管理能力の強化が至急の課題であると再認識する機会になりました。

JICAの支援で構築した森林資源情報管理システムについての講義では、森林資源ベースマップ(注)の構築までのプロセスや、利用用途に合わせて森林の植生状況や森林伐採エリア情報、自然環境保護区情報など様々な情報を重ね合わせることができる現在のシステムの概要を説明いただきました。特にベースマップは衛星データと植民地時代に作られたという地形図を基に構築された際の苦労話や、紙ベースで伐採企業から提出される森林伐採エリア図を電子化するプロセスについてのお話を伺いました。

また同じくPNGFAでは、FAO(国際連合食糧農業機関)支援による気候変動対策関連プロジェクトの視察を行いました。

翌28日はPNG Conservation and Environmental Protection Authority(PNG環境保護・保全公社:CEPA)を訪問し、現在のPNGにおける生物多様性保全・自然保護区管理にかかる法制度や現状の取り組みについて講義を受けました。

講義のあと、同プロジェクトのパイロットサイトで、首都ポートモレスビーの郊外にある「バラリタ国立公園」を視察し、現在進められている公園周辺に住む住民を巻き込んだ環境保全及び生計向上に向けた活動内容や今後の計画について説明を受け、意見交換を行いました。

今回のPNGへのスタディーツアーで得た知見を、現在森林研究省が進めようとしている森林政策見直しや中長期開発計画の策定、本プロジェクトの実施等に役立てていただき、ソロモンの持続的森林資源が包括的に促進されるよう、引き続き森林研究省の能力強化を図っていきます。

(注)森林に関する様々な情報を多層的に重ね合わせ森林資源情報を視覚化するための基本となる地図

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JICAパプアニューギニア事務所長表敬時の様子

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PNG Forest Authority(PNGFA)の表敬時、PNGFA職員やJICA専門家と共に

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PNGFAのプロジェクト・ダイレクターによるPNG森林セクターの概要についてのプレゼンテーションの様子

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ソロモン森林研究省からもソロモン森林セクターの概要及び本プロジェクトの概要説明を行った際の様子

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森林資源情報管理システム(PNG FRIMS)について講義を受ける様子

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プロジェクトオフィスにてJICA専門家やCP職員等と

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FAO支援プロジェクト視察時の講義の様子

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PNG環境保護・保全公社(CEPA)表敬時

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CEPA及びプロジェクト・スタッフから自然保護区政策強化プロジェクトについての講義を受けている様子

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保護区管理プロジェクトのパイロットサイトであるバラリタ国立公園を視察

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国立公園で進められるインフォメーション・センターの建設及び同センターで行われる予定の活動計画について説明を受ける様子

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国立公園にてJICA専門家やプロジェクト・スタッフ等と