所長あいさつ

ブルキナファソはサハラ砂漠の南、サヘル地域に位置する内陸国です。西アフリカの6カ国をつなぐ結節点で、古くから金を産出しサハラ交易で栄えた歴史ある国です。また、西アフリカ経済通貨同盟(UEMOA)の本部所在地でもあり、サヘル地域を経済的に結合し安定化させるためにも重要な役割を担っています。この国名の「ブルキナファソ」は、二つの異なる民族の言葉で構成され、「高潔な人々の国」を意味し別名「一体となった人々の国」であるとも言われます。この国名には、さまざまな民族や宗教の人々が1つになってこの国の発展に向かっていくという願いが込められています。人々は、勤勉で穏やかで秩序と礼儀を重んじる人々が多く、その点でも大きな魅力を有する国です。

しかし、この国は干ばつと水害を繰り返す厳しい気候条件下でその潜在力を十分に発揮できてはおりません。1人当たりGNIは754USD(2019年度)で人間開発指数では189国中182位に位置づけられている最貧国です。また、近年では国境を越えて広がる武装勢力による治安悪化に苦しめられており、北部や東部地域から100万人を超える国内避難民が発生しており、その6割近くが子供や青少年です。さらに、新型コロナウイルス対応では感染自体は比較的抑えられておりますが、空港や国境封鎖等により人の移動や物流に大きな影響が生じており、経済的なダメージは計り知れません。

このような状況下でJICAとしては時に不安定ともなりうるサヘル地域を安定化する一助となるべく、これまで展開してきた協力をしっかりと継続しつつ、新たな課題にもできる限り寄り添っていくことを目指したいと思います。具体的には以下の3点です。

1つ目は農業です。この国は厳しい自然環境にもかかわらず国民の約8割が農業・牧畜に従事する農業国です。食糧生産を安定化し、食糧安全保障の向上を目指しつつ、農業を通じた栄養改善を図ります。また、基幹産業として農産品の付加価値化を通じた経済活性化を目指します。

2つ目は教育です。人口は10年で3割以上増加しており、基礎教育、特に初等・中等教育へのアクセスと質の向上は大きな課題となっています。国家の開発の基盤となる人材育成は重要であり、教育システムの強化や教育環境の改善を図っていきます。

3つ目に地域統合の推進です。内陸国であるブルキナファソは物流・エネルギーなどにおいて域内諸国との経済的な結びつきが死活問題となっています。運輸交通やエネルギーを始めとする広域のインフラは発展のための礎であり、近隣諸国と連携しつつ整備していく必要があります。

日本は戦後の荒廃を乗り越え発展を遂げた稀有な経験を有する国の1つです。そのような国の援助実施機関であるJICAとしては、ブルキナファソが自らの社会文化への高い誇りを維持しながら直面する困難な課題を1つ1つ着実に乗り越えていくためにしっかりと手を差し伸べ、地域の安定と発展、ひいては国際社会の平和に貢献していきたいと考えております。そして、今後再びブルキナファソの治安が改善し、2020年現在中断しているボランティア事業を再開し、人々がより自由に交流し、共感しながら学びあうようになることを強く願っています。

JICAブルキナファソ事務所は、関係者一丸となって、日本国民とブルキナファソ国民の間の架け橋となり、未来の次の世代にさらに幸せな環境を手渡すことができるよう、引き続き取り組んでまいりたいと思います。

JICAブルキナファソ事務所長
興津 圭一