明けましておめでとうございます。日本の政府開発援助(ODA)の第一線に立つ機関として、今年も役職員一同、精いっぱいの努力をしてまいります。引き続き、皆様のご理解、ご支援をお願い申し上げます。
昨年を振り返ると、3月の東日本大震災をはじめとして、内外に不幸な災害が起こりました。JICAもいち早く被災地の皆様への生活支援に取り組みましたが、海外からもこれまでの日本による経済援助への感謝も込めて支援や励ましの言葉が寄せされ、支援に携わる多くの職員が国際的な相互依存の現実と、これに対応する国際協力の重要性を再認識いたしました。私自身も、JICAの事業が日本と世界の協働の場であり、日本の将来にとって重要な責任と役割を担っていることを身に染みて感じた次第です。
東日本大震災では、近年では例のない巨大な地震と津波、そして原発事故の発生で、日本のみならず世界中の人々に大きな悲しみと衝撃をもたらしました。多くの方々が犠牲となり、日々の生活に直結する数々のインフラも大きな被害を受け、10ヵ月を経た今もなお、過酷な避難生活を余儀なくされている方々が多くいらっしゃいます。1日も早く、被災された皆様が従前の暮らしにもどることができるように、復旧・復興に国民挙げて努めなければなりませんし、私どもJICAも可能な限りのお手伝いを続けさせていただきます。
2011年は、世界中で大規模な自然災害が相次いだ年でもありました。タイの首都バンコクを中心とする大洪水、フィリピン・ミンダナオ島での時季外れの台風、さらにパキスタンやスリランカの大洪水、中米地域の大雨、ニュージーランドやトルコの地震などで、数多くの犠牲者を出し、多くの方が生活の基盤を奪われました。私は、JICAの支援事業の一環として、年末にタイ・バンコクの現地に赴き、インラック首相はじめ関係者と話し合いを持ち、工業団地など被災した現場を視察し、これをもとに、さらなる復旧・復興のための支援策を検討しています。
世界各地での動きを振り返りますと、中東の民主化運動「アラブの春」では、情報が急速に広範囲に伝わる現在の社会で、より平等でより開かれた制度を持つ国をつくっていくことの難しさ、新しいガバナンスの仕組みを構築することの必要性を痛感しました。
「アフリカの角」地域で発生した大干ばつでは、支援策を立てるにあたって、まず、被害を受けた方々への影響を考えたうえで、対策をどのように実行していくか、さまざまな工夫が求められていることを改めて認識しました。
2011年は、中国や韓国などの新興国の国際社会への進出が大きく注目された年でもありました。国際的な取り組みや協力における斬新で柔軟な対応によって、プラスの効果をどのようにしてもたらしていくか、政策的な思考が求められていることが明らかになってきた、と考えます。
このような内外の動きのなかで、厳しい財政事情にもかかわらず、JICAの2012年度予算案が前年度比でほぼ横ばいにとどめていただいたことは、私どもに対する期待の表れと受け止めています。私も参画する国家戦略会議が取りまとめ、年末に閣議決定された「日本再生の基本戦略」では、震災復興計画、経済財政政策、成長戦略のすべてを通じ、JICAが重点的に進めてきた「人間の安全保障」や「インクルーシブネス(包括性、包含性)」の概念が反映されており、心強く感じました。
JICAと旧JBIC海外経済協力部門との統合から3年が経過し、本部の各部、在外事務所、国内機関をはじめとする事業部の体制も強化され、事業の幅が広がるなど、統合の成果が確実に表れています。しかし、まだまだやらねばならないことが多くあります。独立行政法人改革、行政改革における議論や提言を踏まえつつ、一層戦略的、効果的、かつ効率的な事業の実施とともに、さらなる業務運営の効率化や質の向上に引き続き努力いたします。
個々の役職員や関係者が持つ、途上国の開発や人々の生活の安定、発展への思いを実現するために、政策レベルでの戦略や計画性を引き続き強化することが必要です。途上国の現場に大きく、かつ効果的なインパクトを与える改革、改善を継続してまいります。
その原資の多くが国民の皆様の貴重な税金から成るJICAの事業は、日本と世界の協働の場であり、日本と世界をつなげる交流と協力の機会を提供する、日本の将来にとって重要な責任と役割を担っているのだということを、役職員一同、重ねて肝に銘じ、今年一年、より一層の努力を重ねていくことをお誓いいたします。
(2012年1月)
国際協力機構 理事長
緒方貞子