所長あいさつ

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ミクロネシアには、第一次大戦から第二次世界大戦終結まで、日本が委任統治していた時期がありました。
戦争終結後、ミクロネシアは、米国を施政権者とする国連信託統治地域になりましたが、1986年から米国と自由連合関係に移行し、独立国家ミクロネシア連邦となり、現在に至っています。
日本とは、このように歴史的な関係があり日系人も少なからずいること、親日的であること、広大な排他的経済水域での豊富な水産資源を有し漁業協定が締結されており、マグロやカツオなどの多くの日本の漁船がこの水域で操業していることなどから重要なパートナーと位置付けられています。
そのため、日本政府は、1997年以降3年ごとにミクロネシアを含む大洋州の島国から首脳を日本に招へいし、島嶼国特有の課題解決を協議する「太平洋・島サミット」を開催しており、この結果が援助の方向性などに反映されています。
ミクロネシア連邦は、独立国家ではあるものの、国の防衛主権を米国に委ねその見返りとして財政の4割以上が米国からの援助で賄われている自由連合盟約(コンパクト)を結んでおり、さらに米国以外の援助を含めると国家予算の6割以上が援助によるものとされています。ミクロネシア政府はコンパクトが終了する2023年以降もこれを継続すべく米国との交渉を進めていますが、今後、いかに経済を活性化し、援助に依存した財政の脆弱性を克服していくかが課題となっています。また、これに加え地理的に広大なエリアに拡散し、市場から遠く、また国内市場も小さく、気候変動の影響による自然災害を受けやすいなどの大洋州島嶼国特有の課題も有しています。

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保健プロジェクト形成に向けたWebセミナー

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廃棄物管理プロジェクトでのWeb研修

一方、2020年初頭から始まった新型コロナウィルスの世界的な流行によりミクロネシア政府は厳しい入国制限措置を講じており、当支所の邦人スタッフも約2年間にわたり日本国内からの遠隔勤務を余儀なくされてきました。この結果、当国は世界的にも類のないコロナフリーの状況を維持していますが、人流の制限により経済活動は停滞しており、財政も逼迫していることから、国境を再開してコロナから守られた社会づくりを目指すことが喫緊の課題となっています。当支所では、ミクロネシアが抱える困難な状況を改善するために協力重点分野を1)脆弱性の克服と、2)環境・気候変動に絞り、ボランティア派遣、研修員受け入れ、技術協力プロジェクトおよび無償資金協力を可能な限り有機的に連携を持たせ、効果的かつ効率的な開発協力を実施するべく取り組んでいるところです。コロナ禍により調査団・専門家、ボランティアの派遣ができない中でも2020年には「水産海事学校能力強化プロジェクト」が遠隔方式で開始され、また広域対象の「大洋州地域ハイブリッド発電システム導入プロジェクト」(太陽光発電を組み込んだ安定的な電力供給技術支援)や「大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト」(廃棄物管理行政および技術支援)もそれぞれ工夫しながら遠隔技術協力を展開しています。2022年に入り支所の邦人スタッフの帰還が徐々に進みつつあり、年内には「大洋州地域強靭な保健システム構築に向けた連携強化プロジェクト」が開始される予定ですので、資金協力、ボランティア派遣、研修員受け入れ事業とのシナジー効果により、ミクロネシアの困難な状況の克服に協力していきたいと考えています。

ミクロネシア支所
所長 村岡 敬一