所長あいさつ

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アフリカの赤道直下に位置するルワンダは、四国の1.5倍程度の小さな内陸国です。ルワンダと聞いて、1994年に起きた大虐殺(ジェノサイド)を思い起こす人も多いのではないでしょうか。2019年にルワンダは、大虐殺から25年目を迎えますが、ルワンダの人々はその悲劇を繰り返さないために過去に向き合い、未来に向けて歩み続けています。

ルワンダは、赤道直下にありながら平均標高が1,600メートルであることから、年間を通じて平均気温が25度と穏やかな気候に恵まれ、高原の避暑地のような環境にあります。また年間変動の少ない気温と適度な降水量により農業適地も多く、「千の丘の国」と言われる丘の斜面に作られた段々畑や谷間の水田風景は、日本の風景を思い起こさせます。そのように恵まれた自然環境にあるルワンダには、小さな国土にもかかわらず1200万人を超える人々が暮らしており、日本よりも高い人口密度を抱えています。

日本と同様に、石油等の地下資源を豊富に有するわけではないルワンダは、ジェノサイド後の国の発展の方向性を、知識集約型経済に移行するという野心的な開発戦略に求めました。その結果、2000年以降、平均7%を超える経済成長を続けており、「アフリカの奇跡」と称されています。また世界銀行によるDoing Business 2019という投資環境のランキングにおいて、ルワンダはアフリカの中では第2位、世界191か国地域中でも29位(日本は39位)という高い順位を占めています。そのような投資環境に加え、2019年1月にカガメ大統領が訪日したこともあり、日本の民間企業や自治体、大学等のルワンダに対する関心が益々高まっていることを実感しています。

内陸に位置するルワンダは外港を持たないため、海上輸送においてはタンザニアのダルエスサラーム港やケニアのモンバサ港に頼らざるを得ません。しかし、それを逆手に取り、「Land Linked Country」と称してICTや航空、観光といった産業を重視し、国際会議の招致に積極的に取り組むなど、内陸国であるが故の不利な点を乗り越えよるべく巧みな開発戦略を取っています。さらにルワンダは、スペシャリティコーヒーで有名であると同時に、紅茶も高品質な茶葉を生産するなど、高付加価値農産品の生産も重視しています。

このように高い潜在性を有したルワンダではありますが、インフラ開発・農業開発・栄養改善・衛生的な水環境整備・人的資源開発など、まだまだ開発課題は他のアフリカ諸国と同様に少なくありません。

また、当事務所で兼轄しているルワンダの隣国ブルンジは、ルワンダと国土面積や人口規模や気候条件など、ルワンダとの類似する部分が多くありますが、2003年に内戦が終結し再興の途にあり、貧困度合も大きく国の基礎作りの支援が求められています。国内情勢の悪化からJICAはしばらく多くの事業が中断してきていましたが、治安情勢の改善を踏まえ、ブルンジの国づくりにも貢献していく準備を進めています。

日本から遠く離れたルワンダとブルンジ、それぞれに開発のポテンシャルと課題を抱える両国の人たちの幸せに貢献できるよう、日本の産学官民の皆さんや国際社会の皆さんと共に、信頼されるパートナーとして両国の開発に取り組んでいきたいと思います。

JICAルワンダ事務所長
丸尾 信