【草の根技術協力】活動の現場から①-マラウイにおける衛生環境の向上-

2023.10.23

 アフリカ南東部に位置するマラウイ。独立以降、戦争や内戦を経験していないことから「The Warm Heart of Africa(アフリカの温かい心)」と呼ばれる内陸の国ですが、水や電気といったインフラの未整備や医療現場の人材不足などから、病院や地域における衛生環境の向上が課題となっています。
 JICAとNPO法人Colorbathは、自然環境に配慮したソーラーボイラーを活用して草の根技術協力事業「マラウイ農村部におけるサステナブルな衛生環境の向上支援事業」を実施しています。今回、JICA中国職員が現地を視察しました。その様子をご報告します。

モノが無い、じゃあどうしよう?

 マラウイの首都リロングウェから北へ車で約5時間、国内最大のムジンバ県があります。100万人以上の人口を抱える県内に公立病院は1か所のみ。この病院の管轄下に診療所のようなヘルスセンターが県内33か所あります。9月21日、Colorbathスタッフとともに訪問したヘルスセンターでは、健康監視員のピりさんが近隣住民に対して講義をしていました。ヘルスセンターでは5歳未満児健診や妊婦健診などが曜日ごとに行われ、健診後の時間を使って住民への健康指導が展開されています。Colorbathが実施した研修を受けたピリさんは、お風呂に入る回数、食事の内容などジョークや問いかけを交えた和やかな雰囲気の中で、家庭で気をつけることを分かりやすく伝えていました。
 一般家庭はもちろん、医療機関にも充分な電気や水道の供給がないという中でも、ヘルスセンターのスタッフは衛生的な環境を維持する様々な工夫をはかっていました。医療器具を焼却した灰を他のゴミと分けて廃棄するために作った穴の周りには、住民がトイレと間違えないよう杭が立てられていました。ヘルスセンターでは清掃員と医療従事者は明確に分けられていますが、医療従事者がチームを作って自ら清掃活動に取り組むことで、他のスタッフの意識にも変化が芽生えたそうです。また、別のヘルスセンターのトイレの前には、木の棒を踏むと水の入ったバケツが傾いて、手を触れずに手が洗える「装置」が設置されていました。無いから欲しい、ではなく、無いからどうしよう?と当事者自らが考え、具体化していくことをサポートする、これが草の根事業の大きな特長なのかもしれません。

地域住民へ衛生教育を行う様子

灰廃棄所をトイレと間違えない工夫

トイレ前の手作り手洗い装置!

インフラの未整備と自然環境への配慮

 ガスの供給がほとんどないマラウイでは、料理をするのも薪や炭が使われます。ヘルスセンターなどの医療機関でも状況は変わらず、消毒や病院食等の調理にも薪や炭を使わざるを得ない状況は、衛生的な環境を維持するのに困難で、環境保護の観点からも持続可能とはいえません。
 これらの課題をふまえ、本事業では太陽光からお湯を沸かすことのできるソーラーボイラーを活用しています。Colorbathスタッフからその効果と使い方を習ったヘルスセンターの医療従事者は、ソーラーボイラーを利用して、医療器具の煮沸消毒や住民への栄養改善指導などを行っていました。
 今すぐに改善すべきことを考え、できることから実践し、マラウイの未来も視野に入れながらプロジェクトは続きます。

薪と炭で調理する様子

栄養指導のデモンストレーション

医療器具の煮沸

(報告:JICA中国 新川 美佐絵)

■ 関連リンク:
JICA草の根技術協力事業
NPO法人Colorbath

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