「ローカルでグローバルな挑戦」トークイベント実施のご報告

2024.02.17

世界も日本の地方も元気にするアクターの皆さんによる報告書「世界も地方も元気にするアクターの協働と共創」を発行

この度、JICA中国は、冊子『持続可能な未来を創るための国際協力と地方創生:世界も日本も元気にするアクターの協働と共創』を発行しました。

冊子発行を記念し、寄稿いただいた方々の中から以下の3名をお呼びしてトークイベント「ローカルでグローバルな挑戦」を2月17日に広島市留学生会館で開催しました。
・ブータン・島根県(浜田市)×美術教育・地域活性化×浜田市世界こども美術館の高野さん
・ベトナム・岡山県(津山市)×介護予防・多文化共生×社会福祉法人やすらぎ福祉会の平井さん
・ネパールやスリランカ・広島県(神石高原町)×地域振興・担い手育成×NPOピースウィンズジャパンの束村さん

今回のイベントはオンラインでは実施せず、対面のみとし、パネルディスカッションの後には交流会を設けました。また、会場にはベトナムやネパールなど6種類のお茶を準備。参加者はお茶を片手に、和やかな雰囲気でイベントは進みました。

高野訓子さん(浜田市世界こども美術館)

平井尚隆さん(社会福祉法人やすらぎ福祉会)

束村康文さん(特定非営利活動法人ピースウィンズジャパン)

それぞれの「国際協力」

高野さん:「ないからできないではなく、ないならないなりにアイディアを出して突破していくこと」
浜田市世界こども美術館は、ただ見るだけでなく楽しむことができる現代美術展を開催していることが特徴です。
ブータンと浜田市の交流の歴史は非常に長く40年近くあり、なんと二国間に国交が樹立されるより前にスタートしています。2013年にブータンの小学校で図工の授業がスタートしたものの、先生方は美術の指導方法など学んだことがなく、友好交流協定書を締結している浜田市が、協力を開始しました。草の根技術協力事業は2017年に開始し、文化交流だけではなく、ブータンの先生方の指導力の向上を目指して活動しています。私たちのモットーは「ないからできないではなく、ないならないなりにアイディアを出して状況を突破していくこと」それは、ブータンの先生方の創意工夫する力につながっています。『ブータンに画材を送ろうプロジェクト』というもの実施していますので、H.P.などをご覧いただけると嬉しいです。自分たちにできる国際協力になるのではないでしょうか。

平井さん:「特別なことはしていません。誰でもできることだから、現地で受け入れられ、続いているのです」
始めてベトナムを訪れたのは2012年でした。ベトナムの保健省の方と知り合う機会があり、高齢化が急速に進んでいるため、対策が必要だと耳にしました。それがきっかけとなり、介護予防の体操や口腔ケア、栄養指導などの事業を開始しました。私たちが取り組んでいるのは、特別なことではなく、誰でもできることです。だから、現地にも受け入れられやすく、現地の人たちにとって続けてできることなのだと思います。そこで重要なことは、日本の常識ややり方を押し付けるのではなく、その国に合ったやり方を、彼らと一緒に考えることだと考えます。

束村さん:「息子は出稼ぎが必要なくなった。家族で一緒に過ごせる今が人生で一番嬉しい」そんな言葉も。
2015年に別の事業でネパールを訪れたことがきっかけとなり、今の活動が始まりました。ネパールの山間地域は出稼ぎなどによる人口流出が課題となっています。農業は行われていますが、栽培技術や営農計画は不十分、何かできることがあるのではと考えました。私たちは土づくりからはじめ、栽培技術指導をして、売れる野菜作りに取り組みました。そして、営農計画づくりの指導を行うことで販売量も増加、農業での収入向上につながりました。現地の参加者からは、「息子は出稼ぎの必要がなくなった。家族が一緒に暮らせる今が、私の人生で一番嬉しいです。」そんな言葉をもらいました。

イベント参加者の皆さんからは、「様々な国際協力のあり方を知った。」「いろいろな立場で国際協力に関わることが可能だということを学んだ。」「もっと視野を広げたい」「今後のキャリアを考えるうえで参考になった」などのご感想が寄せられました。

オンラインの交流ワークショップで完成した作品を紹介するブータンの子どもたち

報告会で日頃の体操成果を披露する地域のリーダーたち

活動を行う小規模農家の現場にて

異なる文化と触れ合うことで気づくこと

現地の課題は、見方を変えると、日本の地方の課題にも共通しているのでノウハウが活かされると皆さんおっしゃいます。また、文化の異なる人々と触れ合うことで、大切なことにも気づくそうです。

束村さん:
現地では、助け合いや家族を大事にするという当たり前のことを大切にしていることを実感します。また、海外でよく「日本ではどうしているの?」と聞かれ、答えられないことがあります。国際協力に携わるのなら、日本のことをもっと知って、物事を比較する視点を持つことも重要だと思います。

平井さん:
海外に出ると文化や社会の多様性を感じます。最初は時間や約束にルーズで「一緒仕事はしたくない。」という印象を持ちました。活動中に先のことを心配しすぎる私に「起こってもないことを、そんなに心配しすぎてどうするのですか?」と現地スタッフから言われたこともあります。今では、予定通りに進まない時など「しょうがない」と受け止められるようになり、楽になりました。自分はぎすぎすしているな。この人たちのような生き方はいいなと思います。

高野さん:
日本人のタイムマネジメントは良い部分でもあり、大事にしたいと思います。ブータンの先生方も、時間の大切さを理解し、日本での研修時は、時間を守っていました。一方で、私も、日本人は時間にもう少しおおらかになった方がよいと感じることもあります。

イベント参加者の皆さんからは、「分野が違っても、通じるものがあるのだと思った。」「国際協力のイメージが一方的なものだと思っていたが、両者がwin-winな関係になっていることに気づいた」などの感想をいただきました。

皆さんメモを取りながら聞き入っています。

世界のお茶

「多文化共生」を考える上で必要なのは日本人に対しての教育

皆さんは「多文化共生」という言葉を耳にしませんか?
総務省による定義:「国籍や民族など異なる人々が、互いの文化のちがいを認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共にいきていくこと」
今、日本にはたくさんの外国籍の方々がいらっしゃいます。観光客だけでなく、留学や仕事のために来られた方やそのご家族など、日本に居住している方もたくさんいます。日本は、現地に日本の技術やノウハウを移転する一方で、深刻な人手不足が課題です。そのため、外国籍の人材は非常にありがたい存在です。彼らには、日本で働きながら知識を得た技術を、自国に戻って活かしていただくという流れが重要だというお話も出てきました。

平井さん:
私の施設でも外国籍の方が技能実習生としてお仕事をしてくださっています。彼らには、日本の習慣として、目を見て挨拶することを伝えています。そうすることで、地域の人から「気持ちのいい挨拶をするね」などと声を掛けられるようになり、野菜をもらったりしているようです。地域の人たちとの相互理解が生まれています。
一方で、彼らの利用者さんへの接し方からは学ぶものがたくさんあります。日本人職員は、それを目の当たりにし、良い刺激をたくさん受けています。私たちは、彼らに対して『来てくれてありがとう』という気持ちを持つべきだと思います。国籍や言語、文化を理解したいと思う気持ちが大切だと考えます。

束村さん:
挨拶はとても大事。自分はしらなくても相手は自分のことを知っている場合もあります。自分から挨拶をすることで、相手への印象は変わるものです。また、地域にいる技能実習生に日本語を教えたり、相手の母語を教えてもらったりと、触れ合うことで、相互理解は深まります。そういった交流は、身近でできることではないでしょうか。

高野さん:
日本で、ブータンの先生方が学生たちとの交流の場を持ちました。学生は、相手を知りたいという気持ちで事前学習をし、そして英語を使って交流しました。この交流は、学生にとって良い刺激となったようで、後に語学留学した生徒もいます。私たちは、こういう機会を継続的に持つことが大切だと思います。

共通しているのは、相手を知ろうと思う気持ち。「関心」を持つことが、全ての始まりなのではないでしょうか。
イベント参加者の皆さんからは、「様々な分野で、定住先として選んでもらえる日本になると良いなと思う」「地域づくりの参考になった」「地方に住む外国籍の方々の声を聴いてみたい」などの意見が寄せられました。

交流会を含め、2時間にわたるトークイベントが終了しました。参加者の皆さんからは、「登壇者の方々や参加者同士で話ができ、充実した時間でした」「オンラインでは味わえない、対面ならではのイベントだった」「多くの視点、切り口からお話が聞けたことでモチベーションがあがりました」「アンテナを張っておこうと思う」「日本で働く外国籍の方々からお話を聞きたい」「日本人に対する教育が必要だと感じた」など、さまざまな感想をいただきました。

引き続き、さまざまなテーマで「ローカルでグローバルな挑戦」を実施していきたいと考えていますので、JICA中国にご注目いただけると嬉しいです!

交流会の様子
質疑応答では対応しきれなかった質問に答えて回る登壇者

最後まで残ってくださった皆さん

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