【教師海外研修 授業実践】鳥取県立米子東高等学校

#4 質の高い教育をみんなに
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2023.11.30

2023年度のJICA教師海外研修に参加した鳥取県立米子東高校の藤原先生が、ナミビアでの現地研修を経て、授業実践をおこないました。その日は、今年最後の日本史の授業の日でした。どのようにして、ナミビアでの体験を日本史の授業に取り入れるのだろうかと、ワクワクしながら高校に向かい、授業を見学させてもらいました。

多民族国家ナミビアの文化と課題を知って、日本の課題に向き合おう

 藤原先生がナミビアでの滞在で強く印象に残っていることの一つに、人々の長めの挨拶があります。ナミビアは多民族国家であるため、長い挨拶を通してお互いを良く知ろうとするのだそうです。買い物に行くだけでも、店員と長めの挨拶を当たり前のようにするなどの経験をして、先生はとても温かい気持ちになったと言います。その温かくなった気持ちを、なんとか生徒たちに共有できないかと考えました。そこで、授業のアイスブレイクとして、この一年、一緒に日本史を学んできた生徒たちでグループを作り、それぞれをどのような人物であるかをエピソードを思い出しながら考え、それを本人に伝えてもらいました。生徒たちは自分が友人からどのように認識されているかを聞いて、「えー!」と驚いたりしながらも、みんな笑顔になっていました。

 ナミビアの人とのつながりの強さに目が向くのは、日本人ならではかもしれません。先生の授業で示された資料によると、日本のソーシャルキャピタル(家族以外の社会的なつながり)のランキングは世界で141位。日本は福祉制度が整備されてきたがゆえに、他者とのかかわりが極端に薄くなってしまったのです。また、近年、福祉制度を享受できずに困っている人が増えてきているという課題も出てきています。どういう人が困っていると考えられるかと問う先生への生徒たちの回答は、今の日本が高校生にはどう見えているのかが垣間見え、興味深かったです。

 一方で、この一年をかけて藤原先生の日本史の授業で見てきたのは、家族以外の他者、また海外の文化を受け入れながら、人と助け合ってきた日本の姿でした。そうした自分たち国の歴史を理解し、その上で今の日本の課題に向き合うためにすべきことはなにかを考えさせる藤原先生の授業は、とても刺激的なものでした。

 先生によると、普段からこのように、生徒たちに考えさせ、話し合う時間を多く取っているとのことです。それと同時に関連する日本史の中身について学ぶため、記憶に残りやすく、好奇心が刺激されることを意識しており、実際、生徒たちの成績も伸びてきているそうです。

 藤原先生は、今後さらにナミビアでの経験を授業にうまく生かしていきたいとおっしゃっていました。先生の授業を受け、海外にも、日本にも関心の持つ生徒がたくさん出てくるのではと思うと、今からとても楽しみです。優しく謙虚な藤原先生ならではの、記憶に残る授業を見せてもらい、不思議とこちらまで温かい気持ちになりました。ありがとうございました。

(報告:鳥取県JICAデスク 首藤 あずさ)

ナミビアの子どもたちとの交流について

福祉制度を受けられない人はどういう人か、大切にしたい対面的な扶助はどういったことかについてグループで話し合われました

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
一覧ページへ