【教師海外研修 授業実践報告】萩市立須佐中学校

#4 質の高い教育をみんなに
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2023.12.04

 山口県萩市立須佐中学校で英語を教える樋口一貴先生は、2023年度JICA教師海外研修に参加され、ナミビアを訪問しました。国内外の研修で学んだことを生徒につたえるべく、2023年12月4日(月)、中学1~3年生を対象に総合的な学習の時間として2校時続けて授業を実践されました。

人は見○○ものだけを見○?!

 最初の授業で、樋口先生は4つのアクティビティを展開しました。ワークシートに書かれた9つの点を一筆書きでつなげるにはどうしたら良いか?という問題や、短い動画を見て考えるクイズ、「仲間」を探すセッションなど、一見バラバラに見える問いやアクティビティには、樋口先生が生徒に伝えたい共通のメッセージがありました。
 それは、「人は見たいものだけを見る」ということ。私たちは誰しも、多少なりともなんらかの思い込みを持っています。それゆえに視覚には入っていても、予測していなかったものや、ともすると本能的に見たくないと思っているものを認知しないことが少なくありません。社会がどんどん多様化する中で、どうやったら見方を変えることができるだろう?どうしたら考え方を広げることができるだろう?笑顔で楽しみながらそれぞれのアクティビティに参加していた生徒の表情は、樋口先生の問いを聞き、真剣な面持ちに変わりました。

自分の豊かさ、開発途上国の豊かさ

 休憩をはさんで2校時目は、豊かさを考える授業でした。生徒は事前アンケートとして「あなたが今ほしいものは何ですか?」「あなたの住む街に今ほしいものはありますか?」「それらはなぜ必要なのですか?」という問いについて、自分なりの答えを考えていました。それをふまえて、自分が必要とする豊かさとはなにか、24枚の具体的な条件カードから優先順位をつけていきました。そしてグループで共有し、意見交換しながらグループにとっての豊かさの順位も決めていきました。

 その後、樋口先生は夏に訪問したナミビアについて話しました。現地の教室の古い机といす、給食費が払えなかったり制服を購入できなかったりする子もいるという経済的課題と裏腹に、目を輝かせて将来の夢を語る笑顔の子どもたちなど、写真を交えて先生自身の気づきや感想を述べ、改めて生徒に問いました。「開発途上国の子どもにとって、豊かさとはなんだろう?」。

 考える材料として樋口先生が提示したのは『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』という書籍に出てくる指標でした。途上国と先進国といった思考分断的な分け方ではなく、1日あたりの所得ごとに4つのレベルでとらえるという視点と、ナミビアの話をヒントとして、生徒は途上国に暮らす子どもにとって重要な点を自分のことのように考えていきました。
 グループで考えた優先順位が発表されたのち、樋口先生は4つの指標を再度提示しました。実はナミビアは「途上国」の中でも経済が安定しており、4段階のレベル3に位置しています。もっと低い生活水準をイメージし、驚きの声をあげる生徒に、樋口先生は再度言いました。「私たちは、見たくないものを見ないね。だったら、意識することで見えるものが広がっていくのではないかな?」

 樋口先生の授業は、ナミビアそのものを伝えるのではなく、ナミビアでの体験を踏まえて、生徒と一緒に考えたいテーマを取り上げたものでした。答えのない問いを大人と同じ目線で考えた生徒の皆さんは、この複雑で多様化する社会の中で、広い視点を持つことの意味を深く受け止められたことでしょう。

生徒の考えを見て回る樋口一貴先生

「豊かさ」において必要なものは?

先生方も生徒と一緒に「豊かさ」を考えました

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