2023年度「神戸大学連携国際協力連続セミナー in JICA関西」を実施しました。

2024.01.15

 本セミナーでは、関西地域で活躍している大学(研究者)、市民社会(NGO)、民間企業という異なるセクターから講師をお招きし、アジア・アフリカ地域の開発や国際協力についてお話しいただきました。全3回のセミナーに延べ50名を越える参加者があり、活発な質疑が行われました。また、終了後も個別に講師に質問される方も多くいらっしゃいました。

講義の内容

  • 第1回 11月29日(水) 18:30-20:30
「国際機関の教育援助開発」
神戸大学国際協力研究科教授 小川啓一氏

教育開発に従事する国連機関として、ユネスコ(UNESCO)は政策提言や教育統計等を担う機関で、ユニセフ(Unicef)は政策提言だけでなくむしろ現場で支援活動を行う機関である等、その役割やアプローチの違いについてわかりやすく教えていただきました。また世界銀行もこの分野の事業を行っていることを解説していただきました。
 講義のなかで小川氏は、ミレニアム開発目標(MDGs)により開発途上国の就学率は改善された一方で、「教育の質」はまだ解決すべき多くの課題があり、継続的な支援が必要であること、教育経済学の視点から、事業効果を上げるためには適切な統計データを使い「費用対効果」の分析が重要であることなどを指摘されていました。

  • 第2回 12月12日(火) 18:30-20:30
「NGOによる紛争被害者支援と市民連携―コンゴ・ウガンダを事例に」
関西NGO協議会事務局長 栗田佳典氏

 NGOの歴史・現状を解説いただきました。NGOは、直接的な支援活動だけではなく、団体間のネットワーク支援や政策提言活動など、さまざまな活動を行う団体があり、近年は市民社会団体(Civil Society Organization: CSO)として、行政・企業・研究機関・コミュニティ(家族)を結びつける役割も期待されているとのことでした。
 後半は、NGOの活動事例としてテラ・ルネッサンス(京都市)による元子ども兵の社会復帰や紛争地域における生活支援について教えていただきました。写真や動画からは、紛争によって家族や家・農地を失った人たちや、子ども兵だった記憶を抱えながら一所懸命に生きている人たちの姿が伝わってきました。

  • 第3回 12月16日(土) 14:00-16:00
「民間企業による国際開発援助」
石光商事株式会社代表取締役社長 石脇智広氏

 石光商事が関わったエチオピアの残留農薬問題、ルワンダ・コーヒープロジェクト、タイ王室プロジェクトを紹介いただきました。 
 エチオピアの残留農薬問題では、現地で原因を特定、解決策を提示したことにより、状況は劇的に改善させることができたとのことでした。事態を重く見たエチオピア政府は、農薬の使用禁止に踏み切ったそうですが、実は、危険な農薬でもエチオピアではマラリア撲滅のためにあえて使用されている状況があるとのことで、農薬使用禁止によりマラリア対策に影響したのではないかとの憂慮も示されました。日本の消費者には、なかなかそのような情報が届かず「知る」ことが重要であると指摘されました。

参加者からの声

【第1回】

  • 様々な国際機関の役割やプロジェクトの詳細や問題意識がわかってよかった。
  • ユネスコ、ユニセフ、世界銀行の取組みの違いがわかった。

【第2回】                                
                                   
  • 非常に濃いお話でとても勉強になりました。自分が知らない地域での知らない活動ということもあり、新たな視点をいただけたことが良かったです。
  • 世の中には知らないこと、そして知らなければならないことがたくさんあるなと実感しました。子ども兵のお話もどこかで聞いたことはあっても、今回のような具体的なお話を聞いたのは初めてでした。紛争鉱物のお話も衝撃的で、自分の使っているスマホのチップなど、知らないうちに紛争に加担していることになりかねないことを知りました。

【第3回】                                                                    
                            
  • 民間企業による国際開発という観点では興味があるトピックだったので話が聞けて良かったです。民間の社会課題解決に対するスピードという点はやはり重要なポイントだと感じました。
  • エチオピアの残留農薬問題の事例では、農薬がどこからきたものなのか、つきとめることが出来た事と共に、実はその農薬はこちら側に原因がある事がわかった事など、正しく知る努力はどんな場合においても続けていくことの大切さを痛感しました。
  • 本当の支援とは、タイ国王の母君の話の通り「魚を与えるより魚の捕り方を教えなさい」の言葉通りだと思いました。その国の人々の手で自立して行い、利益をもたらす事の出来るようになるまで支援し導く事が大切と強く感じます。
  • 民間と行政の関わりの難しさも、お互いが同じ目標であるという認識のもと、違いを認め合いながらもそれぞれの良さを生かして相手国の立場になって協力していく姿が大切と感じます。その努力が成功した時に、その努力が困っている国の人々の喜びにつながり、またその喜びの姿が支援に携わる者の大きな喜びになるものと私は心からそのように信じています。

まとめ

 今回のセミナーでは、大学(研究者)、市民社会(NGO)、民間(経営者)というさまざまな視点から国際協力や途上国支援について学んでいただく場を提供させていただきました。JICAのような政府系機関や国連機関等では手が届かない支援やよりスピード感のある支援等、お互いの得意分野を活かし、弱いところは補完し合いながら、SDGsの達成や持続的に発展できる社会の実現に向けて協働していくことが重要となっています。

 またこのような機会を設けていきたいと思いますので、ぜひ皆様お楽しみに。

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