【岩手県】三陸地方で学び海外活動へ（JICA海外協力隊グローカルプログラム(GP)最終報告会）

　JICA は、当プログラムを全国14自治体で展開し、岩手県では釜石市、陸前高田市、遠野市の3市で実施しています。2024年度に海外へ派遣予定の6名が（陸前高田市2名、遠野市4名）プログラム終了にあたり、実習の締めくくりとお世話になった皆さんへの感謝も込めて、最終報告を行いました。

　陸前高田市では、赤田慎太郎さん（派遣国：フィジー、職種：病院運営管理）と垣内颯真さん（派遣国：ブラジル、職種：野球）が実習を行いました。
　赤田さんは一般社団法人トナリノで高齢者がLINEを利用できる環境作りを行った他、医療従事者としての海外経験を活かし、日本語が母語でない方とスマホの翻訳機能やアプリで交流する方法を学ぶ会を開き、多文化共生を考えるきっかけづくりに励みました。「在住外国人とのよりよい交流のため、地域の相棒として、地域住民も在住外国人に寄り添う形となることが重要。」と発表を締めくくりました。
　NPO法人SETで活動した垣内さんは、陸前高田の風景や、手作りのご馳走、漁船に乗せてもらった思い出の写真を見せながら、「地元の方が見ず知らずのよそ者の自分に話しかけてくれてとても嬉しかった。」と、多くの優しさに触れた純粋な感動を伝えました。陸前高田では、活動の成功と地域住民との関係性は密接に関わっていることを学んだと言います。
　最後に、佐々木市長より「地域の現場に入り込んで様々な人と出会い、課題解決へ導こうとした姿がよく見えた。陸前高田での経験は任地でも活かせるし、2人ともきっと現地の方とすぐに仲良くなれるはず。大変さも楽しんで。」と、はなむけの言葉が贈られました。

　遠野市のGP参加者は、樋口紗穂さん（派遣国：ミクロネシア、職種；環境教育）、山下理呂さん（派遣国：メキシコ、職種：学芸員）、加藤圭介さん（派遣国：ケニア、職種：野菜栽培）、池田ゆりかさん（派遣国：スリランカ、職種：日本語教育）、の4名。㈱Brew Goodで活動した加藤さんは、ホップの栽培から販売までを実際に体験し、関係者からのヒアリングを重ね、ホップで遠野を盛り上げるため試行錯誤を重ねました。更には、もう一つの名産「ワサビ」による地域おこしの可能性を伝えました。
　NPO法人山里暮らしネットワークで実習した山下さんは、多角的な分析により、よそ者が「同化」ではなく「身近な他者」として地域の窓口となることがあることを伝えました。実習先のスタッフに同行しながら、現場の方と真摯に向き合う姿勢を学んだそうです。
　一般財団法人 遠野市教育文化振興財団で在住外国人向けの日本語クラスを担当した池田さんは、地方の日本語講師不足による負担軽減を図る教師用マニュアルのインデックス作成に取り組みました。
　農事組合法人 宮守川上流生産組合で実習した樋口さんは宮守地区の魅力を伝えるために、SNS宣伝カードを作成し、畑～産直～カフェの導線作りに励みました。更には、「地域の二ーズに合った持続可能なGP活動を引き継ぐことが大切」と述べ、次回の実習生へバトンを渡すための資料を作成しました。
　「充実の大旋風」だったと語る遠野の実習生達は、実習のみならず郷土芸能「平倉神楽」にも挑戦しました。遠野の味わい深い風土を満喫した様子に、多田市長が「言霊の強さを感じた。各々が遠野という土地で有意義な活動をしてくれ、心から感謝している。」と感想を伝えました。

　三陸地方で実施するGPの特徴は、東日本大震災から復興に向けてまちづくりを行う行政と地域に根差した活動やビジネスに取り組む、多種多様な団体や企業で学べることです。また、東北ならではの郷土芸能、方言、自然豊かな海と山に育まれた食材など、「地域に関わりながら働き、暮らす」からこそ発見できる様々な感動を味わえることも魅力です。
　地域の方々による温かい応援のもと、これから途上国を舞台に活動するGP実習生はまさに世界と東北を結ぶ「グローカル人材」。三陸で培った課題解決力や地域と共存する力を、派遣国の活動に役立てつつ、協力隊派遣後も日本の地域活性化に貢献することが期待されます。

（報告者：JICA東北 荒屋敷、市川）

遠野市：https://city.tono.iwate.jp/　
陸前高田市: https://www.city.rikuzentakata.iwate.jp/　
JICA海外協力隊グローカルプログラム：https://www.jica.go.jp/volunteer/glocal_program/index.html