\開催報告/草の根技術協力事業「アイディア創出に向けた“繋がる”座談会」を開催しました!

2024.04.04

それぞれ異なる国と地域で、「JICA草の根技術協力事業」を実施する3名のプロジェクトマネージャーが一堂に会し、相互に情報交換を行いました。紹介された取り組み内容や知見、それぞれの熱いパッションとは?!

今回のテーマは、『市場で求められる商品開発と住民のエンパワーメント』

 2024年3月14日、JICA東京では<草の根技術協力事業「アイディア創出に向けた“繋がる”座談会」>を開催しました。この座談会は、草の根事業を実施中の団体と草の根事業に関わりのある方々を対象に、共通テーマに取り組む事業内容や実施団体の知見・経験の共有、そこでの意見交換を通して、横の繋がりを醸成する場として開催され、草の根事業の実施団体9団体とJICA内外から50名ほどが参加しました。今回は、「市場で求められる商品開発と住民のエンパワーメント」というテーマに焦点を当て、3つの実施団体からプロジェクトを力強く牽引されている3名のプロジェクトマネージャーにご登壇頂き、お話をお伺いしました。今回はこの座談会での様子をお届けします!

 一人目の登壇者は、天花寺 宏美さん。一般社団法人コペルニク・ジャパンにて、2021年よりインドネシアの女性零細起業家に対して加工食品や女性向けファッション商品をオンラインで販売するためのスキルの向上支援を行っています。現地の女性支援NGOと協働しながら女性零細起業家への能力研修や丁寧なフォローアップを継続的に行うことで、参加者が自信を持ってスキルを身につけるとともに、オンライン販売実績を大幅に向上させるなど着実な成果に結びついている様子が伝わってきました。

魅力的な商品写真の撮り方を学ぶ女性起業家たち

本事業の取り組みは高く評価され、Asian Venture Philanthropy Network (以下、AVPN) の「Constellations Awards 2023」を受賞しました!

◆関連リンク:
・本事業に関する団体ブログ:Kopernik | デジタル技術と女性零細起業家: オンラインストアの活用による経済的エンパワーメント
・JICA東京 トピックス:\祝受賞/【オンラインビジネス×女性零細起業家】で、インドネシア女性の生計向上を支援する取り組みが表彰されました! | 日本での取り組み - JICA
\草の根事業・中間報告会の開催報告/オンライン販売スキルの能力開発を通して、インドネシアの女性零細起業家を支援しています!(実施団体:一般社団法人 コペルニク・ジャパン) | 日本での取り組み - JICA

 二人目の登壇者は、板垣 順平さん。公立大学法人長岡造形大学にて、2022年よりラオス北部に位置する県で、“「デザイン」の力を国際協力で活かす”という切り口で観光商品の開発支援を行っています。本事業での対象地域は、ラオス北部シェンクワン県にある二つの村。シェンクワン県は、ベトナム戦争中に激しい爆撃を受け、今なお不発弾汚染の問題が色濃く残る一方で、世界遺産「ジャール平原の巨大石壺遺跡群」も有し、海外からも観光客が訪れます。このような地で生産されている蜂蜜・茶葉・米麺・手織物などの地域に根差した生産品を活用し、生産者自らが「消費者が手に取りたいパッケージデザイン」を考えるスキルを身に付けることで、より魅力的な観光商品開発を支援しています。「まっすぐ線を引くこと」や「自分の村をイメージしてデザインする」など、様々なトレーニングを組み合わせながら、活動の中で出てきた新たな課題に臨機応変に対応しています。出来るだけ多くの村人が参加できる「取り残さない」仕組みづくりや自分達の身の回りにあるものが価値ある観光商品になるということを経験してもらうなど、多角的な観点からアプローチを通して進めている様子が報告されました。

専門的な生産スキルを持たない村人でも参加できるよう「誰一人取り残さない」開発トレーニングを目指して

終始、和気あいあいとした雰囲気で、楽しそうなワークショップの様子

◆関連リンク:
・本事業のFacebookページ(活動の様子を日々更新中!):Champayayam project | Facebook
・JICA東京 トピックス:「秘境の国ラオス」デザインプロセスを活用し観光商品の開発へ! | 日本での取り組み - JICA

 三人目の登壇者は、大槻 修子さん。公益財団法人国際開発救援財団(以下、FIDR)にて、2021年よりベトナム中部クァンナム省の山岳・少数民族地域9郡において、少数民族が主体となり、草の根レベルで多様なアプローチ(少量多品種、地産地消、地域ブランド等)を通した、特産品(農林産物、伝統工芸等)を開発しています。少数民族の村人たちはこのプロセスを「宝さがし」と呼び、伝統織物、黒豆茶、竹籠など自分達が愛してやまないものを沢山見つけて特産品の開発につなげています。こうした取り組みは地域の生計向上にとどまらず、民族の誇りや自信が高まるといったプラスの変化をもたらしているとのことでした。

クァンナム省の山岳・少数民族。
伝統衣装を身にまとい、歌やダンスで観光客をお出迎え。(写真提供:FIDR)

日越文化交流イベント「第19回ホイアン日本祭り2023」に参加。出店ブースに並ぶ数々の特産品。(写真提供:FIDR)

◆関連リンク:
・ベトナム中部発展型農村総合開発事業について:ベトナム中部発展型農村総合開発|国際開発救援財団(FIDR)
・(Facebook)少数民族ツアーの様子はこちらから!:少数民族カトゥー族ツアー

 座談会の前半の事例紹介では、発表者の方々が目の前にいる現地の人々のことを第一に考え、三者三様のアプローチで現地を盛り上げ、プロジェクトを引っ張っている様子が非常に伝わってくるご説明でした。

パネルディスカッションで語られた、プロジェクトマネージャー達の想いとは…?

 座談会の後半では、パネルディスカッションを行い、プロジェクトを通して現地の人々にどのような変化があったのかが議論されました。

座談会後半でのパネルディスカッションの様子
(写真左上:FIDR・大槻さん、写真右上:コペルニク・ジャパン天花寺さん、写真右下:長岡造形大学板垣さん、写真左下:JICA東京市民参加協力第二課長 加瀬晴子)

<以下、パネルディスカッションより抜粋>
◆質問:それぞれの事業を通し、「モノができる過程」で作り手のエンパワーメントにつながるよう、どの様な働きかけや配慮を行っていますか?

◆回答:
・天花寺さん(コペルニク・ジャパン):自分のアイデンティティを考え直し表現する、リフレクションの機会を大切にしている。生産者が製作したモノを自分の子供のように慈しみ、商品にまつわるストーリーを語れるようになってきている。

・板垣さん(長岡造形大学):住民の中にはスキル上、どうしても商品開発トレーニングに十分に関われない方も出てくる。そのような方には無理せず、「それでもいいんだよ。」という姿勢で対応し、「出来ない中で何が出来るのか?」を一緒に考え、アイディアを書き出してみる。それを商品に反映させていく中で、自然とやる気が出てくる。リフレーミングを大切にして、一緒に考えていく姿勢を作ろうと取り組んでいる。

・大槻さん(FIDR):「宝さがし」をモットーに、マイノリティである少数民族の弱みを強みに変えていく。自分達の愛してやまないものをとにかく沢山見つけて自信につなげることが大切。「宝さがし」から始めるとアウトプットからイメージすることができる。「私たちの宝」が広がり、観光客など「他の人達の宝」にもなっていくことが誇りにつながると感じている。

◆質問:草の根レベルでの途上国開発に携わるうえで、最も重要なことは何だと思いますか?

◆回答:
・大槻さん(FIDR):「コミュニケ―ション」と「共感力」は非常に大事。

・板垣さん(長岡造形大学):「否定しないこと」もとても大切。これまでの活動を通して感じたことは、否定してしまうと、相手側はもう声を出せなくなり、「正解か」「間違っているか」の二元的な考え方に陥ってしまう。そうなると、指示を待つ姿勢になりかねない。一旦は受入れて、その上で軌道修正していくということを大切にしている。

・天花寺さん(コペルニク・ジャパン):一番重要だと考えているのは、「課題の見極め力」。私たちが外部から見えている課題と現地の人たちが考えている課題はそれぞれ異なる。さらに言えば、現地の住民たちが考える課題と村長が考えている課題も全て異なる。適切なアプローチを取るために、どの課題をどこに設定するかは重要。最終的には現地の人々が活動を継続していく中心人物となるため、現地の人々が納得し、効果的な課題を考え、折り合いをつけながら設定していくことが大事ではないかなと考えている。

 その後も、座談会に参加していた参加者からも登壇者へ質問が投げかけられ、参加者一人ひとりにとって有意義な時間となった様子でした。実際に開発途上国の現場で、現地の人々を目の前にしているからこそ出てくる言葉や考えがそこにあり、それぞれの熱いパッションをお伺いする貴重な機会となりました。天花寺さん、板垣さん、大槻さん、貴重なお話を頂き、本当にありがとうございました!それぞれのプロジェクトの今後の展開にも是非ご注目ください!!

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