「秘境の国ラオス」デザインプロセスを活用し観光商品の開発へ!

2024.02.20

  今回はラオス・シェンクアン県で「国際協力×デザイン」を実践する活動をご紹介。
デザインの力を活用した国際協力活動とは一体どのような取り組みでしょうか?

なぜシェンクアン県で活動しているの?

皆さんはラオスにあるシェンクアンという地名を聞いたことがあるでしょうか。シェンクアン県はラオス北部に位置し、首都ビエンチャンから飛行機で約1時間ほどの美しくて豊かな自然の中にあります。また、ここシェンクアンにある「ジャール平原の壺の遺跡」は、なんと2019年にラオスで3番目に登録された世界遺産となっています!

ラオスで3番目の世界遺産に登録された「ジャール平原の壺の遺跡」

一方でこの地は、ベトナム戦争時代に激しい空爆を受け、いまなお不発弾汚染の問題が色濃く残る地域。この地に住む70%以上の住民は農業を営んでいますが、不発弾汚染による農地不足の影響から、彼らの平均年収は極めて低く、農業だけの収入で生活することはできません。また、一部の住民は農作業中に不発弾の爆発事故に巻き込まれてしまうこともあり、大きな問題となっています。これらの問題に対し、現地政府は観光産業による地域の活性化を目指し、当地域での観光地を整備してきました。
そのような地シェンクアンで現在、新潟県長岡市にある公立大学法人長岡造形大学がJICA草の根技術協力として「デザインプロセスを活用した持続的な観光商品の開発及び質向上プロジェクト」を実施中。対象地域である2つの村(ムアン村・ポンカム村)の住民を対象に、伝統的な暮らしから観光資源を発掘し、住民自らの手で観光客に向けた商品開発と質向上を目指し活動しています。

◆長岡造形大学URL:大学案内 | 公立大学法人長岡造形大学 (nagaoka-id.ac.jp)
◆長岡造形大学 Facebookページ:長岡造形大学 | Nagaoka-shi Niigata | Facebook
◆本プロジェクトのFacebookページはこちら(現地の様子を随時更新中!):Champayayam project | Facebook

長岡造形大学が実施する「国際協力×デザイン」の活動とは?

「国際協力とデザイン??」なかなか普段聞きなれない組み合わせですよね。国際協力と聞くと、貧困解決や就学率の向上などを思い浮かべる方も多いかもしれません。社会課題の解決や国際協力活動にどのように「デザイン」分野が貢献できるのか、見てみましょう。「デザイン」と聞くと見た目がカッコイイものやオシャレなものなど、「モノのデザイン」を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、最近では、人の気持ちや行動の変化を起こそうとする仕掛けやシステムなど、目に見えない「コトのデザイン」も注目を集めています。
ここで1つ質問です。皆さんは普段生活する中でモノを“買う”という行動をしていますよね。
モノを“買う”という行動のなかで、選択基準となるものは何ですか?例えば、その商品の値段であったり、利便性であったり。おそらくその1つには、パッケージである『見た目(モノのデザイン)』が選択の軸となることも多いのではないでしょうか。また、モノをつくる側、売る側の人たちの「自分たちで商品をつくりたい!販売したい!」という気持ちを高めることも非常に重要です。そうでないと、商品の開発から販売までは成り立たないですよね。まさに、この「モノのデザイン」と「コトのデザイン」に目を付けているのが本プロジェクトです。
活動地域のシェンクアンでは、蜂蜜・茶葉・手織物・米麺といった伝統的で魅力的な商品が溢れていますが、商品化部分で課題が残り、住民の生計向上までは結び付いていません。
この課題解決に貢献するため、本プロジェクトでは住民たちが「デザインプロセス」を学んでいます。この「デザインプロセス」こそが、「消費者が手に取りたいパッケージデザインとは何か」をつくり手自らが他者の視点で考える手法なのです。他者視点で物事を捉える「デザインプロセス」の力をつけた村人たちが、村に根ざした魅力ある観光商品開発を行うことで、生計向上を目指しているのです。
先日行われたワークショップでは、デザインプロセスの基礎を学ぶトレーニングを実践。まっすぐな線を引くことや自分の村をイメージしてデザインを思考したりなど、終日にわたるワークショップを終始楽しんでいる様子が伺えました。最後に1人1人が紙袋に横線を引いてブリュットデザインによる紙袋を作成しました!

終始楽しそうにワークショップに参加している村人の様子

大変盛り上がっている様子が伝わってきます!

この活動の先に…

今回このプロジェクトチームの一員である三井さん(長岡造形大学・大学院生)と現地スタッフのウイさんより本プロジェクトに対しての想いを語っていただきました!

三井さんコメント:
「このプロジェクトは、村人と一緒に、伝統の中にある特産品などを活用した観光客向けの観光商品を作り上げることを目指しています。それは、短期間の収益を考えた生産工場ではなく、村人の農業中心の暮らしを尊重しながら、より持続的な方法で、村がより良い未来に近づけるように模索しているからです。その展開として、今後はラオスに伝わる伝統衣装の巻きスカート(シン)のユーズド布を使ったアップサイクル商品(※1)や村人が描いた幾何学模様の手描きイラストを載せたBrut de sign (ブリュットデザイン)(※2)のショッパーの2つを考えています。今後は市街地の土産物店やカフェで、村人が作ったこれらの商品を販売する予定です。「良い花は後から」ということわざにもあるように、少しずつですが着実に前進しています。村の今後を、乞うご期待ください!」

(※1)各家庭の箪笥の奥底で眠っている使わなくなった巻きスカートの布で観光客向けのトートバッグやポーチ、コースターを作成
(※2)蜂蜜や茶葉などの専門的な職能スキルを持たない村人たちでも観光商品の開発に携わることができる「誰一人取り残さない」ためのアプローチ。直線や渦巻など自由に線描きして、観光商品のショッパーやパッケージデザインに活用する。

Brut de signを行う村人の様子

ウイさんコメント:
「このプロジェクトは、村人だけでなく行政、NGO、市街地のカフェオーナーなど様々なところで多くの人たちと協力しながら進められ、面白いです。しかし、農作業を中心とした暮らしを営む村人たちにとって、「観光客目線のデザイン」というポイントはこれまで意識する機会がなく、彼らに「デザインプロセス」の重要性を伝えていく中で難しさを感じることもあります。事前にプロジェクトメンバーとワークショップの準備をしますが、わたし自身もラオス語でうまく表現できない内容もあるので、新しいことをよく理解するためには時間がかかることもあります。だからこそ、わたしは村人にとって身近なことを例に使ったり、身振り手振りしたり、まるでエンターテイナーのように遊び心を取り入れたコミュニケーションを心がけながら、村でのワークショップを行っています。わたし自身も村人たちと共にこの活動を通して、これまで経験したことのないことを楽しんでいます。」

今後の展望として、村で箪笥の奥底で眠っている使わなくなった伝統衣装の巻きスカートであるシンを観光商品の素材として価値を見出し,このシンを観光客向けの商品としてトートバックやポーチ、コースターなどのアップサイクル商品に展開し,村の人が自ら生産・流通・販売までできるようなシステムの構築を目指しています。是非これからも本プロジェクトにご注目ください! 

村人とトレーニングを行う三井さん

村人へワークショップを開催する松岡さん

笑顔が素敵なウイさんは、プロジェクトメンバーと村人たちの橋渡し役として欠かせない存在

報告者:ラオス事務所OJT 本郷

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