公共財政・金融システム

公共財政・金融システム

#8 働きがいも経済成長も
SDGs
#10 人や国の不平等をなくそう
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

途上国の経済を安定させ成長を促すために、財政・金融、税関行政の適切な運営を支援します。

グローバルアジェンダの目的

国民の生活が安定、向上する社会を目指し、資源の効率的な配分が行われるよう、財政・金融に関する政策・制度の発展及びこれを担う人材の育成を行います。また、税関行政の改善を通じ、貿易円滑化及び連結性の向上を図ります。

背景と課題

(1)公共財政・金融の課題

  • SDGsの2030年達成に向け、官民とも多額の資金需要を抱えていますが、動員可能な資金量との間には、大きなギャップが存在しています。また、コロナ禍に伴い、歳入不足、財政需要の拡大が生じており、そのギャップを満たす資金の確保及び確保された資金を迅速に執行していくことも課題です。
  • 2009年から2018年の10年間で、低所得国及び中所得国の対外債務のGNI比は増加しています。対外債務残高も、サブサハラアフリカ諸国のうち半数の国で、倍増から3倍増となっています。また、アジア・大洋州・アフリカでは、特定の国に対する債務が集中し、債務の持続可能性に懸念が生じています。
  • 世銀等の指標や調査によると、公共財政管理、税関、税務等のいずれの項目に関しても、開発途上国の多くで課題が見られるのが現状です。例えば、税収のGDP比は全世界平均14.3%ですが、アジア太平洋諸国では9.95%と低くなっています。
  • 金融については、資金動員の観点に加え、経済成長を実現していく基盤としても重要であり、国内からの資金動員を強化する上で金融市場の基盤強化が必要です。加えて個人や企業による金融サービスへのアクセスを向上する金融包摂も課題となっています。さらに、過去の金融危機を通じ、金融システムの脆弱性は、経済に負のインパクトを与えることが明らかになっていますので、金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、金融システムを強化する必要があります。

(2)日本・JICAが取り組む意義

  • 公共財政・金融システムは、他の開発課題においてそれぞれの課題を解決し、成果の持続性を担保していく前提条件の一つです。従って、公共財政・金融システムの改善を通じて、他の開発課題における日本の開発協力の成果を最大化し、その持続性を担保するため日本として支援していく必要性があります。また、日本は相手国のオーナーシップを尊重し、債務の持続性を踏まえた資金協力を実施し、各国のインフラを中心とする質の高い経済社会基盤の整備を通じ、相手国との信頼関係を構築してきました。
  • 公共財政・金融システムは、国家が過度に特定の国に政治的・経済的に依存することなく、自立性を維持する上で重要(債務の罠の回避等)です。特に、我が国と経済・社会的に密接な関係にあり、我が国の安全保障上も重要な位置にあるインド太平洋地域を、政治的経済的な安定を維持しつつ自由で開かれた地域とするためにも、その重要性は更に高まっています。
  • 自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現のための柱の一つとして、経済的繁栄の追求(連結性,EPA/FTAや投資協定を含む経済連携の強化及びビジネス環境整備)が謳われていますが、公共財政・金融システム、とりわけ、税関、税務、金融分野に関する支援は極めて重要性が高いと言えます。

主要な取り組み(クラスター事業戦略)

JICAは、「国家財政の基盤強化」「関税の適正かつ公平な徴収と貿易円滑化」「金融政策の適切な運営と金融システムの育成」の三つの主要な取組を実施しています。これらの主要な取組に基づき、これまでの協力の成果・インパクトを踏まえ、次の二つのクラスターに取り組みます。なお、公共財政・金融システム分野においては、IMF、世銀、世界税関機構等との連携が重要であり、今後とも連携を推進、拡大します。

(1)「国家財政の基盤強化」クラスター

税務行政に関する組織・制度・人材に関する支援を通じた歳入基盤の強化及び公共投資計画・管理を通じた歳出管理における開発計画との整合性や規律性・持続性の強化の二つの取組により、資金を効果的に配分し、開発政策を具現化できる財政基盤を構築することを目指します。公共投資計画・管理は、各々の公共投資案件が財政に過度の負担とならないように担保することにもつながり、債務の持続性の確保にも資するものです。

(2)「税関近代化支援を通じた連結性強化」クラスター

国際的な通関手続き調和化に沿った国境における通関手続き(税関等)の効率化を通じ、貿易円滑化を図ります。具体的には、税関近代化の観点から、分類、評価、リスクマネジメント及び事後調査に関し、能力強化を行います。またアフリカでは、One Stop Border Postを通じた国境での通関手続きの効率化を行い、FOIPにおける連結性強化への貢献、またアフリカ大陸自由貿易圏の実現にも寄与していきます。