栄養改善

栄養改善

#2 飢餓をゼロに
SDGs
#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs

途上国の子どもを中心に深刻な影響を与えている、低栄養と過栄養のニ重負荷を低減します。

グローバル・アジェンダの目的

開発途上国の子どもを中心とする脆弱な人々の慢性的な「低栄養」状態の改善に向けた取組により、国際的に深刻化が懸念されている「栄養不良」の課題解決を目指します。また、「過栄養」に対する取組も、同課題が深刻化している国において推進することにより、栄養不良の二重負荷(低栄養、過栄養)の低減を目指します。また、2021年12月の「東京栄養サミット(N4G)2021」において発表した「JICA栄養宣言」を具現化して実施することを通じて、これらの課題解決に取り組みます。

背景と課題

(1)栄養不良の負の影響

生命・健康の維持には栄養の適切な摂取が不可欠です。死亡リスクが高い急性の低栄養(飢餓)のみならず、慢性の低栄養も、子どもの脳の発達への影響、将来の非感染性疾患(NCDs)リスクの増など、生涯にわたり負の影響を与えます。いまだ、世界で約9人に1人が飢餓または低栄養状態であり、5歳未満児の死亡の45%が低栄養に関係すると言われています。特にアフリカで子どもの低栄養が増加傾向にあり、世界的にもCOVID-19により、栄養不良人口の増加が懸念されています。

一方、NCDsの要因になる過栄養も増加傾向にあり、同じ国で低栄養と過栄養が併存する「二重の負荷(double burden)」が生じています。

(2)分野横断的な介入の必要性

栄養不良(低栄養)の直接的要因として不適切な食事摂取と病気が挙げられますが、その背後に、食料入手の困難や軽視されがちな子ども・女性に対する配慮の欠如、保健サービスや水・衛生環境の不備等があります。また、栄養に関する知識・教育不足も関係しています。

よって、栄養に特化した直接的な介入だけでなく、保健、農業・食料、水・衛生、教育など多様な関連分野にわたる取組(マルチセクトラルな取組)が必要であり、ジェンダー・女性に十分配慮しつつ、各分野で栄養に配慮した取組(栄養センシティブ化)を行っていくことが重要です。

(3)日本・JICAが取り組む意義

日本は、戦後の深刻な栄養不足、炭水化物への偏重と塩分摂取過剰等、時代の課題を多様な施策により克服してきました。具体的には、食事・人材・エビデンス重視の栄養政策、母子手帳、学校給食、生活改善普及事業、手洗いの習慣化や食育といった知見・経験があります。

栄養課題に直面する途上国に対し、これらの経験を共有・活用する取組は成果を上げており、人間の安全保障の推進等からも大きな意義があります。

(4)「JICA栄養宣言:栄養をすべての人々へ-人間の安全保障のための10箇条の約束-」

2021年12月に日本政府は「東京栄養(N4G)サミット2021」を主催しました。この支援のうち二国間協力に関して、JICAは同サミットに際し、その基本的考え・取組方針を示した「JICA栄養宣言:栄養をすべての人々へ-人間の安全保障のための10箇条の約束-」を発表しました。

主要な取り組み

慢性の栄養不良のうち、特に低栄養については、主要要因である病気および不適切な食事摂取とそれらの背後にある原因に着目し、保健分野及び農業・食料分野で主要な取組を行います。あわせて、マルチセクトラルな取組、マルチステークホルダーによる取組、過栄養への対応も推進します。中でも、次の2つのクラスターを重点的に推進します。

(1)母子栄養改善

栄養不良による死亡リスク、発達及び将来にわたる健康・疾病への影響が最も大きい胎児~満2歳までの「最初の1000日」に焦点を置いた低栄養対策の取組を行います。栄養指導や微量栄養素補給等の取組に加え、母子手帳など日本の経験も活用・応用するなど、母子保健の取組に栄養改善のコンポーネントを含めた一体的な母子保健サービス提供体制の実現を目指します。

(2)食と栄養のアフリカイニシアティブ(IFNA)

第6回アフリカ開発会議(TICAD VI、2016年)に際し、JICAとアフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)はアフリカにおける栄養改善を目指す「食と栄養のアフリカイニシアティブ(IFNA)」を立ち上げました。IFNAは10機関による国際的なイニシアティブとなり、第7回アフリカ開発会議(TICAD7、2019年)では「アフリカの子ども2億人の栄養改善」に向け、IFNAの全アフリカ展開が宣言されました。今後は、1)政治的リーダーシップの強化、2)人材育成、3)現場の栄養改善事業、特に栄養の適切な摂取に必要な農産物・食品供給に向けた「農業セクターにおける栄養素アプローチ(Nutrient Focused Approach:NFA)」を推進していきます。