栄養改善

【栄養改善】

課題の現状

1.世界に広がる低栄養と過栄養の二重負荷

現在、5歳未満児の年間死亡の45%が低栄養に関係している一方で、途上国を含む世界各国で子どもの過栄養が増加しています(注1)。健全な成長を妨げる低栄養と、生活習慣病等を引き起こす過栄養は、いずれも人間の生命・健康に大きな影響を及ぼします(図1)。

低栄養(Undernutrition)については、世界で約9人に一人が飢餓或いは低栄養の状態にあります。5歳未満児の22%が発育阻害、7%が消耗症であるほか、生まれてくる赤ちゃんの15%は低体重で、40%の妊婦は貧血の状態です(注2)。特に、「人生最初の1000日(注3)」間の低栄養は子どもの身体的・知的発達に遅れを引き起こすほか、その後の就学状況や労働生産性、ひいては国家経済の発展にも多大な影響を及ぼします。

過栄養(Overnutrition)については、5歳未満児の6%が過体重であるほか、成人の13%が肥満(BMI≧30)に陥っています(注2)。過栄養は生活習慣病の原因となり、若年死亡や合併症による障害、長期間にわたる治療等から生産性の低下や医療費・社会保障費の増加につながり、社会的・経済的な負担が増加しています。

低栄養の多くはアフリカやアジアに集中し、特にアフリカでは依然として子どもの低栄養が増加傾向にありますが、実は先進国でも微量栄養素欠乏症が存在しています。また過栄養は世界的に増加傾向にあり、大きな問題を引き起こしています。このように世界全体で栄養の偏りが見られ、「二重の負荷(double burden)」が生じています。

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図1 栄養不良の分類

栄養不良には、大きく分けて低栄養と過栄養があります。

低栄養には、体重が身長相応の標準値に満たない「消耗症」、身長が年齢相応の標準値に満たない「発育阻害」、体重が年齢相応の標準値に満たない「低体重」、ビタミン・ミネラルが不足している状態である「微量栄養素欠乏」の4つの種類があります。

過栄養には、体重が身長相応の標準値を大きく超えている「過体重・肥満」、ミネラル(塩分等)を摂取しすぎている状態である「微量栄養素の過剰摂取」の2つの種類があります。

2.栄養改善に向けたマルチセクトラルなアプローチ

個人の栄養状態は、適切な食料の入手や、子どもと女性への適切なケア、母乳育児・離乳食(世界では「補完食(complementally feeding)」とよばれることが多い)、保健サービスへのアクセス、そして安全な水・衛生環境等、様々な要因に影響されます。これらが十分に整っていない状況では、十分な食事をとることができなかったり、身体が栄養を吸収できなくなったりして様々な疾病と結び付き、栄養状態の悪化を引き起こします。(図2)。

このように複合的な要因によって生じる栄養不良に取り組むには、保健、農業・食料、水・衛生、教育などの様々な分野から、分野横断的(マルチセクトラル)に介入することが重要です。

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図2 栄養不良の原因と改善へのアプローチ

栄養不良は、食事の量や内容が適切でないことや、病気によって十分に栄養が体に吸収されない、或いは過剰に消費されてしまうこと、食事と病気の双方が互いに関係しあうこと、などによって起こります。世帯や母親が質・量ともに十分な食料を手に入れられなかったり、食事やケアの知識や実践が不適切だったりすると、子どもは質・量ともに適切な食事摂取ができません。保健サービスや水衛生サービスが不十分であることは、疾病の要因となります。

こうした問題の背景には、厳しい環境条件(乾燥地帯、山岳地域など)、女性の地位や教育水準の低さ、保健サービスへのアクセスの悪さ、といったものが含まれます。さらに根底にあるのは、世帯レベルの土地、教育、雇用、収入、テクノロジーへのアクセスや、資金的、人材的、物理的、及び社会的な資本の不均衡です。こうした複雑な要因に対応して人々の栄養状態を改善するために、保健、農業、食料、水・衛生、教育の各セクターでの取り組みが必要です。各セクターでの代表的なアプローチには、次のようなものがあります。

  • 保健:母子の栄養改善、プライマリヘルスケア、生活習慣病対策など
  • 農業・食料:食料生産の増加、栄養価の高い食品の開発など
  • 水・衛生:安全な飲料水の供給、手洗いの推進など
  • 教育:学校給食の提供、学校での栄養教育など

JICAの方針

SDGs ゴール2では、2030年までにあらゆる形態の栄養不良を解消するため、青年期の女子や妊産婦、高齢者の栄養ニーズに対応することを目指しています。2012年に設定された世界栄養目標(注4)では、2025年までに妊産婦や子どもの栄養不良の二重負荷の軽減が掲げられています。しかし、これら栄養関連目標の達成に向けた進捗は遅れており、栄養分野の協力の一層の強化が必要とされています。

JICAは、低栄養対策が最も効果的とされる「人生最初の1000日」を重点とし、母子保健分野での協力を通じた取り組みを積極的に推進します。過栄養についても、生活習慣病(非感染性疾患(NCDs)に含まれる食生活や身体活動等に起因する疾患)対策の一環として取り組みを強化します。また、人々が適切な食料を入手できるよう、国際機関と連携してIFNA(食と栄養のアフリカ・イニシアチブ)(注5)による栄養改善への取り組み行います。さらに、「健康と命のための手洗い運動」(注6)では、衛生環境や衛生行動の改善を支援します。これら様々な分野からの取り組みをつなぐSUN(栄養改善拡充イニシアティブ)(注7)のリードグループの一員として、市民社会や企業、国際機関等、多様なパートナーと協力していきます。

国際社会・開発協力の動向

2021年には東京栄養サミット(注8)が開催される予定で、開催国である日本は、世界の栄養改善を目指す様々な関係者との連携の強化や機運の醸成に貢献することが期待されます。同サミットでは、途上国政府や開発パートナー、企業や教育研究機関など様々な関係者が、栄養不良に苦しむ人々を一人でも減らすための取り組みを「コミットメント」として発表するとともに、相互の連携を深めることを目指しています。JICAは、同サミットの成功と国際的な目標の達成に向けて、国際機関や民間企業等、様々なパートナーと連携しながら、途上国政府のマルチセクトラルなアプローチによる栄養対策の能力強化を通じて、栄養改善を支援していきます。

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