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食と栄養のアフリカ・イニシアティブ(IFNA)

IFNAの概要

IFNA (Initiative for Food and Nutrition Security in Africa) は、栄養改善に向けた国際的な機運の高まりを受け、2016年の第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)でJICAが主導しアフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)と共同で立ち上げた2025年までのイニシアティブです。
アフリカの栄養不良の状況、マラボ宣言やSDGs、2016年から開始した「栄養のための行動の10年」など栄養改善に向けた国際的な機運の高まりを受け、アフリカ各国と支援機関が連携を深めることで、栄養改善に向けた現場レベルでの具体的な取り組みを推進するために、IFNAが立ち上げられました。
IFNAは10の国際機関・研究所(注1)と運営委員会(Steering Committee: SC)を結成し、運営を行っています。

(注1)運営委員会メンバー10機関


  • アフリカ開発銀行(African Development Bank:AfDB)
  • アフリカ連合開発庁 アフリカ開発のための新パートナーシップ(African Union Development Agency:AUDA-NEPAD)
  • 国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization:FAO)
  • 国際農業開発基金(International Fund for Agricultural Development:IFAD)
  • 国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:JICA)
  • 国際農林水産業研究センター(Japan International Research Center:JIRCAS)
  • 国連児童基金(United Nations Children’s Fund:UNICEF)
  • 世界銀行(World Bank:WB)
  • 国連世界食糧計画(World Food Programme:WFP)
  • 世界保健機関(World Health Organization:WHO)

関連リンク

栄養の課題

栄養不良とはエネルギーや栄養素の摂取における不足や過剰、不均衡のことです。栄養が足りない「低栄養」の問題と栄養を取りすぎて健康被害を引き起こす「過栄養」の問題が併存する「栄養不良の二重負荷」が生じています。(最近は、微量栄養素欠乏を特だしして、「栄養不良の三重負荷」ということもあります。)

TICADと栄養サミットにおける取り組み

2016年 TICAD Ⅵ @ナイロビ

アフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)と共同で食と栄養のイニシアティブ(IFNA)を立ち上げ、「IFNA宣言」が採択されました。

2019年 TICAD Ⅶ @横浜

「IFNA横浜宣言2019」が採択され、2億人の子どもの栄養改善に向けて当初参加国(10か国)の経験を全アフリカに拡大する「IFNA全アフリカ展開」を宣言しました。

2021年 東京栄養サミット(N4G)2021

栄養サミットは、2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックの際に世界的なスポーツの祭典を契機として地球規模で栄養改善について取り組もうと開始された「成長のための栄養(Nutrition for Growth:N4G)」イニシアティブです。東京栄養サミットでは、東京オリンピック・パラリンピック開催国として日本政府が主催し「東京栄養宣言」が採択されました。JICAは、公式サイドイベントにおいて、栄養に向けた10箇条を記した「JICA栄養宣言 」を発表しました。

栄養改善に向けた二つのアプローチ

IFNAは栄養改善に向けて、Nutrition-focused Food Access Improvement ApproachとMulti-Sectoral Collaborationの二つの手法を重視していきます。

①栄養素ギャップに基づく食料アクセス改善アプローチ(Nutrient-focused Food Access Improvement Approach:NFAアプローチ)現在の食事で摂取している栄養素を可視化し、特定された栄養素ギャップを補うために栽培すべき作物や摂取すべき食物を推奨し、栄養啓発や農業セクターの介入に結び付けます。

②マルチセクトラルな連携(Multi-sectoral Collaboration)栄養不良の諸要因に関連する多様な分野(保健、農業、水・衛生、教育)が連携して、セクター横断的に取り組みます。

出展:UNICEFを基にJICA作成

各国のIFNA案件

マダガスカル「食と栄養改善プロジェクト」(2019年3月~2024年6月)

マダガスカルでは、5歳未満児の発育阻害率が49%と世界で5番目に高い水準にあり、栄養不良が深刻な課題です。本プロジェクトでは、特に発育阻害が深刻な中央高地3県において、マルチセクター調整機能の強化や住民の行動変容の促進を通じて、女性と子供の栄養状態の改善を目指します。

ナイジェリア「連邦首都区における栄養改善能力向上プロジェクト」(2019年1月~2024年11月)

ナイジェリアでは、5歳未満児の慢性、あるいは急性の栄養不良が深刻で、国民の栄養状態について課題を抱えています。本プロジェクトでは、「対象グループへの介入」と「コミュニティ全体への介入」の2つのアプローチを通じて、食を通じた効果的な栄養改善アプローチの実施を目指します。

ケニア「乾燥・半乾燥地域における食と栄養改善を通じた気候変動適応力強化プロジェクト」(2022年2月~2027年1月)

ケニアは全国土の8割を農耕に不向きな乾燥・半乾燥地域が占め、近年では気候変動により慢性的な食料不足や水不足が発生しています。本プロジェクトでは、特に栄養不良が深刻なトゥルカナ郡とキツイ郡において、野菜給食活動、宿題による野菜栽培学習の実施、定住地での牧草栽培活動を通じて、家庭の食と栄養の改善を目指します。

ブルキナファソ「農業を通じた栄養改善プロジェクト」(2021年2月~2027年2月)

ブルキナファソは、度重なる政変・政治危機、また人口増や気候変動がもたらす失業や食料危機を起因とする深刻な貧困蔓延の問題を抱えています。本プロジェクトでは、SHEPアプローチを用いた学童の保護者(農家)の農業収入向上等による住民の栄養改善を目指します。

エチオピア「栄養センシティブ農業モデル村構築プロジェクト」(2022年8月~2025年8月)

エチオピアでは、高い栄養不良率による経済の減速が問題となっています。本プロジェクトでは、栄養センシティブ農業モデル村の設立を目指します。

ルワンダ「農業変革を通じた栄養改善のための分野別政策借款」(2019年2月~2021年9月)

政策対話及び財政支援を通じて、農業セクターにおける栄養主流化のためのガイドラインの策定や高栄養価作物の生産指導を実施しました。

課題別研修・地域研修

課題別研修

課題別研修は、各国の栄養関連省庁職員が来日し、農業を通じた栄養改善プログラムをマルチセクターで計画・実施・管理するための知識と実践的な方法を学ぶ、約3週間の研修です。研修員は最後にアクションプランを作成します。

  • 農業を通じた栄養改善(英語圏・仏語圏)(2017年度~2021年度)
  • 南アジア・マルチセクターで取り組む栄養改善(世銀連携)(2021年度~2024年度)
  • マルチセクターで取り組む食を通じた栄養改善(英語圏・仏語圏)(2022年度~)

地域研修

地域研修は、AU傘下の地域経済共同体(RECs)と協働で実施され、各国の栄養関連省庁職員が栄養に配慮した農業への理解を深めるための3日間の研修です。

協力ツール

NFAアプリ

NFAアプリは、アフリカ連合開発庁(AUDA-NEPAD)とJICAが共同で開発した、ウェブアプリケーション・ツールです。
食事ガイドラインに基づき、対象地域の栄養ギャップを可視化し、健康的な食事へのアクセス向上のための提言を行います。ガーナ、セネガル、ザンビア、マラウイでの現地試験に基づき、最終調整段階にあります。

以下3つの機能によって、食料アクセスの改善を通じた健康な食事の推進をサポートします。

  • 機能 1: 対象者の日常的な食生活を可視化・評価し、栄養素ギャップを特定します。
  • 機能 2: 農業カレンダーと社会経済的背景から、対象住民の食料アクセスを確認します。
  • 機能 3: 栄養に配慮した農業と健康な食事(Healthy Diet)摂取を推奨します。

Food Tracking Tool


不足している栄養素を可視化することによって食生活の改善を促す啓発ツール。
【マダガスカル「食と栄養改善プロジェクト」作成】

買い物すごろく


「予算内で選び、購入する」という適切な消費活動を身につけるための啓発ゲーム。
【海外協力隊員作成】

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