jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

南南・三角協力

南南協力、三角協力とは

南南協力とは、ある分野において技術や知見を有する開発途上国が、他の開発途上国の開発を支援することです。
JICAでは、「開発途上国が相互の連携を深めながら、技術協力や経済協力を行いつつ、自立発展に向けて行う相互の協力」と定義しています。

また、三角協力とは、先進国や国際機関が、途上国が他の途上国に対して行う南南協力を、資金・技術・運営方法などで支援することを指します。

これらの協力は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた重要な手段として国際的に認識されています。国連南南協力事務局(UNOSSC)や経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)では、南南協力と三角協力を国際援助政策の柱の一つとして位置付けています。2019年の第2回国連南南協力会議(BAPA+40)では、三角協力は「SDGs達成に貢献する重要な取り組みであり、多様な技術や資金を動員する手段」として明確に位置づけられました。2024年の国連総会で採択された”Pact for the Future”においても、SDGs達成のために南南協力と三角協力を推進していくことが言及されています。
(以下、本項では「南南・三角協力」とします。)

気候変動、感染症、自然災害、地政学的対立などの複合的な危機により、開発途上国の課題はますます複雑化し、単独の国・機関だけでは解決が難しくなる状況の中で、国際社会における南南・三角協力の重要性は、今後もさらに高まることが予想されます。

なぜ南南・三角協力が必要なのか?

支援の担い手の拡大

地球規模の複合的な危機は更に不確実性が増し、課題の解決に向けた取り組みは一つではなく、多様なソリューションが考えられます。従来の先進国主導のODA(政府開発援助)や国際機関による支援に加え、成長を遂げてきた複数の新興国が、今度は支援する側の新たな担い手として開発協力に幅広く参画すること、そして各国・地域に則した技術を相互に活用し、多様且つより効果的な開発協力の推進が期待されています。

新興国の能力向上と発展

支援の受け手から担い手に変化する開発途上国は、南南協力を通じて援助国としての経験を蓄積し、自国の発展に必要な能力を高めることができます。
例えば東南アジアや中東、中南米などの地域では、新興国が援助主体としての役割を強め、周辺国への技術協力や機材やインフラ整備などの支援を積極的に実施しています。JICAが新興国の援助機関(新興ドナー)との連携を強化することで、開発効果の相乗効果も期待できます。

新たなネットワークと価値の創造

もう一つの重要な側面は、新たなネットワークと価値創造の場としての機能です。昨今では、新興国がG20や世界経済フォーラムなど多くの国際会議を主催・リードし、2023年からは新興国の連携強化と発信力向上を目的としたグローバルサウス・サミットも開催されています。「北から南へ」という伝統的な価値観に基づく二国間援助ではなく、同じ仲間として多国間で知識を共有し、共同プロジェクトを進めることで、より多様な解決策が生まれることが期待されています。

JICAが取り組んできたこと

日本は1954年にコロンボプランに加盟し、国際協力を開始しました。日本が戦後復興の途上で海外援助を始めたことは、南南協力の先駆けともいえます。その後、1975年にタイで開始した第三国研修を皮切りに、JICAは50年以上にわたり三角協力を推進してきました。
途上国から発展を遂げた12カ国とパートナーシップ・プログラム(PP)を締結し、第三国研修の参加者総数は累計8万人に達し、日本人ではない第三国の専門家の派遣数は2,000人を超えています。
近年では、新興ドナーとの連携強化にも注力し、国際機関や他の援助機関と協力しながら、開発協力の効果を最大化する取り組みを進めています。

JICAが大切にしている価値や強み

JICAは、三角協力50年以上の経験や教訓をもとに、以下の点を強み・価値として大切にしています。

  • オーナーシップの尊重:途上国が自らの発展を主導できるよう、途上国の主体性を最大限に尊重した協力を推進する。
  • 知識や経験の共創(Co-Creation):JICAからの一方的な技術提供ではなく、相互に学び合い、新たな知見や技術を共に創出する。
  • 現場に根ざしたネットワークの構築:JICAの現地事務所と対象国との長年の信頼関係を基盤とし、持続的かつ実効性のある支援を実現する。
  • SDGsや地球規模課題への対応:パートナー国と築き上げた現地に根ざした知見をグローバルな課題解決に活用。

三角協力の更なる発展

JICAは、従来の三角協力の枠組みを超え、より多様なパートナーと連携し、新たな協力モデルを推進しています。

  • 多国間協力の推進:支援の提供国・受益国・JICAの三者に加え、さらなる国や機関を巻き込んだ「多国間協力」を導入し、広域に渡る多様な国・機関との支援を展開。
  • 資金調達の多様化:多国間開発銀行(MDBs)、新興ドナー、民間セクターなど多様なアクターと連携し、技術協力やイノベーションを促進。
  • 技術や知見の共有・活用:JICAが過去に支援してきた開発途上国の知見や技術拠点を活用し、南南・三角協力を通じた各国・地域のニーズとリソースを繋ぐ架け橋として課題解決に貢献。

JICAは今後も新興国との連携強化、広域支援の推進、多様な資金調達の活用等を通じ、多様化するグローバル課題の解決に貢献していきます。