課題の現状
南南協力とは、開発途上国の中で、ある分野において開発の進んだ国が、別の途上国の開発を支援することです。JICAでは、「開発途上国が相互の連携を深めながら、技術協力や経済協力を行いつつ、自立発展に向けて行う相互の協力」と定義しています。
また、三角協力とは、先進国や国際機関が、途上国が他の途上国に対して行う南南協力を資金・技術・運営方法等で支援することを指します。
SDGの目標17(パートナーシップで目標を達成しよう)において、南南・三角協力はSDGs達成のための重要な手段として明記されています。これは、開発課題が多様化・複雑化するなかで、先進国や国際機関だけでは解決できない多くの問題が存在し、世界的な取り組みが必要であるためです。例えば、途上国間において、言語や文化、気候が類似していたり、同じ途上国としての最近の開発経験に基づく協力を行ったりすることで、適正な技術の移転がスムースに行われ、持続的な開発につながるとも言われています。
また近年、新興国の発展が急速に進んでいる中、途上国・新興国から新たな支援者が誕生することは、世界的にこれらの問題に取り組む仲間が増えることとなります。加えて、途上国諸国が南南協力に取り組むことは、これまでの教わる側から教える側に立つことになり、援助国としてのノウハウや経験を蓄積することになります。その結果、国際社会の一員としての役割を果たすとともに、自国の発展に対する自信と能力を身につけることにもなります。先進諸国・国際機関等は、自らの国際協力実施経験を活かした三角協力を通じて、このような新しい援助の仲間の取り組みを手助けしています。
JICAの方針
日本は、1954年にコロンボプランに加盟して国際協力を開始しましたが、戦後復興の途上で海外援助を始めたことは、南南協力の先駆けと言われることがあります。その後、1975年に最初の三角協力としてタイとの第三国研修を開始するなど、国際社会に先駆けて南南・三角協力の有用性を見出し、実施してきています。
2015年に改定された開発協力大綱でも、「新興国を始めとする諸国と連携した三角協力は、我が国の長年の協力により相手国に蓄積されたノウハウや人的資源、人材ネットワーク等を有効に活用した協力として、国際社会からも高い評価を得ているところ、引き続きこの取組を継続していく」と明示されています。加えて、日本政府と途上国政府との間で他の途上国・地域の開発努力を共同で支援するための総合的枠組みとして12カ国(タイ、シンガポール、エジプト、チュニジア、チリ、ブラジル、アルゼンチン、フィリピン、メキシコ、モロッコ、インドネシア、ヨルダン)とパートナーシップ・プログラムの合意を締結しています。
また、JICAは、このような政府の方針を受け、JICA第4期中期計画(2017年~2022年度)において、「新興ドナーとの連携(三角協力を含む)や経験共有を強化する」という方針を定め、また課題別指針においても、地域ごとの取組と重点項目を整理しつつ、三角協力に積極的に取り組んでいます。2017年度における第三国研修への参加者は計3,055人で、地域別の内訳では、中東地域が最も多く、東南アジア地域、中南米地域及びアフリカ地域がそれに続きます。
国際社会・開発協力の動向
南南協力は東西冷戦の激化した時代に「南の連帯」として促進されてきた経緯があります。1955年にインドネシア・バンドンで開催された「アジア・アフリカ会議」では、アジア・アフリカの途上国が、途上国同士の連帯によって開発問題に取り組む意思を表明しました。さらに、1978年にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催された国連会議で、開発途上国間の技術協力を促進するため、38項目の具体的措置からなる「ブエノスアイレス行動計画」(BAPA)が採択され、その後の南南協力拡大の試金石的な役割を果たしました。バンドン会議に参加し、1975年に三角協力を開始した日本は、南南・三角協力について、国際的にも先駆的な役割を果たしたと評価されています。
東西冷戦の終結によって南南協力の性質が変化するとともに、新興国の台頭に伴って南南協力の規模も大きく拡大しました。国際的には、引き続き先進国によるODAとは異なるという原則が維持されていますが、SDGs達成のためには新興ドナーと南南・三角協力の重要性は高まってきています。2019年3月には、第2回国連南南協力会議(ブエノスアイレス行動計画40周年:BAPA+40)がブエノスアイレスで開催され、三角協力も含む南南協力の新たな枠組みが合意される予定です。また、三角協力に関しては、先進国と途上国間の援助の枠組みを超え、新興国や市民社会、民間企業など多様な主体を巻き込んで形成されたプラットフォーム「効果的な開発協力に関するグローバルパートナーシップ(GPEDC)」における「効果的な三角協力に関するグローバル・パートナーシップ・イニシアティブ(GPI)」での議論が進んでいます。
長年の経験・知見を有するJICAは、新興ドナーとの対話の拡大、BAPA+40成果文書に対する実践的な経験からの発信、GPIを活用し三角協力を切り口とした国際協力の枠組み作り、国際会議等でのグッドプラクティスや教訓の発信に積極的に携わっています。
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