ジェンダー平等と女性のエンパワメント

ジェンダー平等と女性のエンパワメント

#5 ジェンダー平等を実現しよう
SDGs

女性や女児のエンパワメントを推進し、人々の意識・行動を変えることで、ジェンダー平等で公正な社会の実現を目指します。

グローバル・アジェンダの目的

一人ひとりが、性別にとらわれず、人間としての尊厳をもって、それぞれの能力を発揮できる社会の実現に向けて、社会や組織における差別的な制度や仕組みを是正し、女性や女児の可能力を強化するとともに、社会や人々の意識・行動変容を促す取組を実施していきます。

ジェンダー平等は、人権及び安全保障の概念に密接に結び付いた普遍的かつ根源的な価値です。また、女性や女児のエンパワメント(能力開花)を推進し、平等で公正な社会システムを構築していく取組は、経済的な合理性があり、貧困削減と経済成長を大きく促進する有効な開発手段でもあります。

背景と課題

ジェンダー平等と女性のエンパワメントの推進は、1995年の「北京宣言・行動綱領」の採択以降、国際的な取組課題として位置づけられています。世界的にみて、ジェンダー平等が達成されている国は存在せず、ジェンダー平等と女性のエンパワメントの推進は、先進諸国を含む世界共通の目標です。

(1)ジェンダー格差の現状

ジェンダー格差を示す代表的な指標の1つに、世界経済フォーラム(WEF)が2006年より『Global Gender Gap Report(GGGR)』において発表しているジェンダーギャップ指数(GGI)があります。GGIは、1)経済的参加と機会、2)教育達成、3)健康と生存、4)政治的エンパワメントの4つの側面からジェンダー格差に着目し数値化したものです。ジェンダー平等の達成には99.5年の期間が必要とされていますが、特に1)経済的参加と機会について、経済面における格差が完全に解消されるまでには257年を要すると指摘されています(WEF, 2020)。これは、ジェンダー格差を示すもう1つの代表的な指標として、国連開発計画(UNDP)が2010年より『人間開発報告書(HDR)』において発表しているジェンダー不平等指数(GII)からも把握できます。GIIは、1)リプロダクティブヘルス、2)エンパワメント(立法府の議席に占める男女比および男女の中等・高等教育の達成度)、3)労働市場への参加の3つの側面におけるジェンダー格差を数値化したもので、2010年の発表以降、1)リプロダクティブヘルスや2)エンパワメントの側面では改善していますが、3)労働市場への参加の側面では後退しています。

(2)ジェンダーに基づく暴力の存在

上述のジェンダーギャップ指数(GGI)やジェンダー不平等指数(GII)の要素となっていませんが、ジェンダー平等に深刻な影響を与えている問題として、ジェンダーに基づく暴力(GBV)の存在があります。2020年現在、世界の女性の3人に1人が身体的・性的暴力を経験し、10人に1人の女児が望まない性行為や性暴力の被害を受けていると言われています。これらの被害は、女性や女児の心身の健康と平和を脅かすとともに、被害を受けたサバイバーへの支援サービスの費用から刑事司法制度による対応の費用に至るまで、地域の社会や経済に多大なダメージや損失をもたらしています。世界規模では、女性と女児に対する公的、私的、社会的領域での暴力のコストは、1.5兆米ドル、世界のGDPの約2%に相当すると推計されています(UN Women, 2020)。

(3)新型コロナウイルス感染拡大の影響

新型コロナウイルス感染拡大が続く中、ジェンダー不平等の状況がさらに悪化することが懸念されています。例えば、経済的な側面では、コロナ禍で最も大きな打撃を受けたセクターの女性労働者が職場に戻らない場合、世界の経済成長から1兆米ドルが失われる可能性があると推計されています(McKinsey, 2020)。また、GBVの問題がさらに深刻化しています。2020年4月にUN Womenが発表した調べによると、外出制限や都市封鎖が続く中、多くの国や地域で、夫や交際相手、家族からのDVが平均で約30%増加し、10代の女性の望まない妊娠が大幅に増加したとの報告がなされています(UN Women, 2020)。

ガイダンスノート

ポジションペーパー

SDGsポジションペーパー

主要な取り組み

(1)ジェンダー主流化の推進

JICAによるあらゆる取組へのジェンダー主流化(注)を推進します。ジェンダー平等と女性のエンパワメントの推進に向けた取組を検討し、2030年までの達成目標(定量指標)として、80%の案件(件数ベース)をジェンダー案件とすることを目指します。また、JICAの研修・留学生事業における女性の割合(人数ベース)50%を目指します。

課題の現状、日本政府の政策、及びJICAのポートフォリオに鑑み、1)女性の経済的エンパワメントの推進、2)女性の平和と安全の保障、3)女性の教育と生涯にわたる健康の推進、4)ジェンダー平等なガバナンスの推進、5)女性の生活向上に向けた基幹インフラの整備推進の5つを優先取組課題とします。また、いずれの優先取組課題においても、1)その課題にかかる制度や仕組み、2)女性や女児の可能力の強化、3)社会や人々の意識・行動変容の3つの視点から、女性や女児を取り巻く問題の構造を総合的に分析した上で、効果的な取組を行っていきます。

(注)ジェンダー主流化とは、様々な分野における政策や事業の立案・実施・モニタリング・評価時において、ジェンダーの視点に立った取組を進めることである。

(2)クラスター「ジェンダースマートビジネスの振興」及び「ジェンダーに基づく暴力の撤廃」

「ジェンダースマートビジネスの振興」は、ジェンダー平等と多様性を尊重する組織文化の醸成や、良質・適正価格・利便性の高い“女性フレンドリー”な製品・サービスが市場から提供されるために、政策・制度整備、リソース動員、及び人材育成等を通じて、女性の起業、リーダーシップ、就労の促進と、インフォーマルビジネスを含む市場の拡大や課題解決を図っていきます。

「ジェンダーに基づく暴力の撤廃」は、GBV被害を受けたサバイバーの保護・救済及び自立・社会復帰に向けた制度整備や人材育成等とともに、社会の意識・行動の変容に向けた活動を通じて、サバイバーへの支援サービスの拡大を図るとともに、ジェンダーに基づく暴力を生み出さない地域や社会づくりに貢献します。