ジェンダーと開発

【ジェンダーと開発】

課題の現状

ジェンダーとは、社会的・文化的に形成される性別のことで、男らしさや女らしさといった特定の社会で共有されている価値観などによって形作られる、男女の役割やその相互関係を含む意味合いを持ちます。一般に、社会における固定的な男女の役割や責任は、その地域の人々の価値観、伝統、慣習などによって無意識のうちに規定されていることが多く、各種政策や制度、組織などもその影響を受けています。また、社会通念やシステムは、男性の視点に基づいて形成されていることが多いため、不平等が内包されていることがあります。ジェンダー関係が不平等な社会では、一見、「中立的」な開発政策や施策、事業であっても男女それぞれに異なる影響を及ぼす可能性があります。

ジェンダー平等と女性・女児のエンパワメントは、多くの開発途上国において包摂的な社会と強靭な経済を構築する上で、喫急の課題と認識されています。例えば、以下の調査や研究の成果があります。

  • 世界173か国中、155か国で何等かの男女不平等な法律が存在する、
  • 141か国で自然災害による死者数は男性より女性の方が多く、この差は男女の不平等な社会的地位と密接に関係する、
  • 男女の雇用格差の減少は先進国、途上国双方にてGDP を上昇させることが可能、
  • 農業においては、肥料、農業機械等の投入面でジェンダー格差が解消されると、男女間の生産性における格差が縮まる、等。

持続可能な開発目標(SDGs)では、「ジェンダー平等、すべての女性・女子の能力強化」は17のゴールの中の独立したゴール(ゴール5)であるほか、「すべてのゴールとターゲットの進展において決定的に重要な貢献をする」と位置付けられるなど、すべての開発目標の達成において必要不可欠な横断的課題として認識されています。また、SDGsの「目指すべき世界像」として、「すべての女性と女児が完全なジェンダー平等を享受し、そのエンパワメントを阻む障害が取り除かれる」ことが掲げられています。

JICAの方針

JICAでは、ジェンダー平等・女性のエンパワメントについて5つの優先開発課題を掲げています。

  1. 女性の経済的エンパワメントの推進
  2. 女性の人権と安全の保障(紛争、災害、暴力や人身取引からの保護)
  3. 女性の教育と生涯にわたる健康の推進
  4. ジェンダー平等なガバナンスの推進
  5. 女性の生活向上に向けた基幹インフラの整備推進

SDGsゴール5の実現に向けて、これら優先開発課題に重点的に取り組んでいます。

またJICAは、事業のあらゆる段階で、社会における男性と女性の社会的な役割の違いや力関係によって生じる課題やニーズを踏まえ、ジェンダーの視点を組み込んでいく「ジェンダー主流化」を推進することで、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの実現を目指しています。

JICAでは、こうした考えのもと、ジェンダー平等な政策・制度の構築支援、また母子保健、女子教育や女性企業家支援など女性・女子のエンパワメントの推進、女性・女子に対する暴力への対応、人身取引被害者の保護・自立支援などに取り組んでいます。同時に、農業、自然環境保全、防災、ガバナンス、インフラ開発など、その他の多様な分野においても、事業を通じて達成すべき成果や活動のなかに、ジェンダーの視点を組み込んで事業を実施しています。

また、近年ジェンダーの視点に立った投資への注目が高まっており、JICAにおいても、海外投融資や円借款(ツーステップローンなどにおける中小企業支援)、民間連携事業においてジェンダーの視点を反映していくことを重視しています。

課題別指針

ポジションペーパー

SDGsポジションペーパー

国際社会・開発協力の動向

開発援助においては、1980年代頃から「ジェンダーと開発(GAD:Gender and Development)」(注1)というアプローチが着目されるようになりました。GADのアプローチは、ジェンダー格差を生み出す仕組みや制度を変革し、社会的・経済的に不利な立場に置かれている女性のエンパワメントを目指すというものです。1995年に開催された第4回世界女性会議(北京)以降、GADを定着させる政策アプローチとして、「ジェンダー主流化」(注2)が国際社会で重視されるようになりました。

(注1)女性だけに注目するのではなく、社会の中で女性と男性が置かれている状況を把握し、不平等を生み出す制度や仕組みを変革し、社会・経済的に不利な立場におかれている女性のエンパワーメントを目指す。

(注2)すべての開発政策や施策、事業は、中立ではなく男女それぞれに異なる影響を及ぼすという前提に立ち、すべての開発政策、施策、事業の計画、実施、モニタリング、評価のあらゆる段階で、ジェンダーの視点に立って開発課題やニーズ、インパクトを明確にしていくプロセスである。

また、2000年の国連安全保障理事会決議第1325号「女性・平和・安全保障」を契機として、紛争・災害影響国への国際支援における、女性の社会・経済参画やリーダーシップの推進やジェンダーに基づく暴力(Gender Based Violence:GBV)の撤廃に取り組むことの重要性が、国際社会に大きく認識されることとなりました。

我が国においては、開発協力大綱(2015)においては、「人間一人ひとり、特に脆弱な立場におかれやすい子ども、女性、障害者、高齢者、難民・国内避難民、少数民族・先住民族等に焦点を当て、その保護と能力強化を通じて、人間の安全保障の実現に向けた協力を行う(後略)」ことが基本方針として示されています。また、2016年5月に日本政府によって発表された「女性の活躍推進のための開発戦略」は、開発におけるジェンダー主流化促進の加速を図ることをビジョンとし、特に以下のような分野を重点としています。

  • 女性と女児の権利の尊重(差別の撤廃・暴力の根絶、女性にやさしいインフラとコミュニティづくり、女性の生涯にわたる健康確保等)
  • 女性の潜在力を引き出す(女子教育推進、科学・技術分野での女性の活躍拡大等)
  • 政治、経済、公共分野における女性のリーダーシップ向上(女性の経済的エンパワーメント、紛争予防・解決、防災等における意思決定過程への女性の参画等)

近年、G7/G8やG20においても、ジェンダー平等や女性のエンパワメントに関する議論が活発に行われ、国際社会の取組みは加速化されています。

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