持続可能な水資源の確保と水供給

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グローバル・アジェンダの目的

統合水資源管理を実現するため、地域の水問題の解決に責任を持つ水資源管理主体と、合意形成を図るための協議体を増やすとともに、安全な水へのユニバーサル・アクセスの達成に貢献するため、自立的に資金を調達して水道サービスの拡張と改善を進めることができる「成長する水道事業体」を増やすことで、水資源を適切に管理し、全ての人々が飲料水等として持続的に利用できる社会を目指します。

背景と課題

(1)水資源管理の課題

必要な水が十分に得られない人々が2015年時点で29億人以上と言われており、都市での人口増加や気候変動の影響による旱魃の増加・激甚化によって、水不足が深刻化しています。また、2030年には水需要量に対して水資源量が40%不足するとの予測や、地下水の過剰揚水による地盤沈下、水質汚濁などの問題、限られた水資源を巡る利害の対立等が懸念されています。

(2)水供給・衛生の課題

2020年時点で安全な水にアクセスできない人々は20億人、都市部では6.1億人となっています。アクセス率は、地方部では2000年の39%から2020年の60%へと増加しましたが、都市部は86%から変わらず足踏みしており、人口増加に対応した施設投資ができていません。また、水因性疾病により、乳幼児を中心に年間50万人以上が死亡し、低体重・栄養失調の50%は水・衛生の問題に関連しています。女性や子どもによる水汲み労働も大きな負担となっています。UHC(ユニバーサルヘルスカバレッジ)に通じる公衆衛生の確保や人間の安全保障に直結する重要な開発課題でもあります。清浄な水を用いた手洗いの励行は、新型コロナウイルス感染症の基本的な予防対策です。

(3)気候変動の影響

降雨の極端化や海面上昇等により、干ばつによる給水制限や沿岸部の水源の塩水化などの問題が顕在化しています。水資源の開発や持続的利用と保全は、気候変動適応策としても重要です。

(4)日本・JICAが取り組む意義

日本では高度経済成長期に渇水被害、地盤沈下、水質汚濁等の問題が深刻化しましたが、科学的知見の蓄積、河川管理者や自治体の役割等の法制度の整備、流域協議会等の協議メカニズムの整備、河川施設の整備、市民活動の促進などの総合的な取組を進めた結果、これらの問題を大幅に軽減することに成功しています。また、県をまたぐ河川の上下流問題の解決や、ダム、河口堰の建設等を巡る問題への対処の経験も豊富です。

また、全ての国民が安全な水を24時間蛇口から得られる高品質の水道を実現していますが、その過程で、法制度整備、技術基準の整備、高度経済成長期における急速な施設整備とそのための資金調達、人材育成と技術の継承を行うと共に、全国平均で約10%という低い無収水率を維持している無収水管理などのノウハウを蓄積しています。

このような経験やノウハウを生かし、我が国は2007年から2017年まで水・衛生分野のトップドナーであり、インフラと運営・経営能力の両輪が必要な本分野において、資金協力と技術協力を一体的に活用して貢献が可能です。

課題別指針

SDGsポジションペーパー

主要な取り組み

JICAでは、以下の2つのクラスターに重点的に取り組みます。また、村落給水及び衛生も重要な開発課題であり、持続可能性を高めるために栄養、保健、教育等のセクターと連携して取り組みます。

(1)「地域の水問題を解決する実践的統合水資源管理」クラスター

水不足やそれに起因する利害対立を解決して限られた水資源を有効に活用していくために、科学的データを蓄積し、科学的・技術的根拠に基づいて、利害を調整し合理的に水資源の持続的利用と保全を推進する責任主体を育成します。また、事業を実施する主体が複数にまたがる場合が多く、利害関係者も多いことから、十分に機能する協議体を形成・運営し、社会的合意形成に基づいて水資源を巡る課題を解決していく体制を構築します。このような地域の水資源管理の問題を自ら解決できるような能力を強化し、地域の水資源問題を解決に導いていくことを目指します。

  • 2030年までに10以上の地域で水問題の解決に向けて、責任ある水資源管理主体を育成し、協議体メカニズムを形成して機能させることを目指します。

(2)「水道事業体成長支援-都市水道-」クラスター

サービス水準の低さ、それに対する市民の不満と水道事業に対する信頼の欠如、非効率な事業運営、資金不足が悪循環のように連鎖している状況を、サービスの改善、運営の効率化、料金収入の確保、投資の確保という好循環に転換して、水道事業体を成長軌道に乗せるための運営・経営の改善を目指します。また、民間資金を動員するためにも健全経営の水道事業体を増やすことが重要です。そのため、施設整備による料金収入基盤の拡大とサービス向上を起点とするアプローチと、無収水削減による収支改善とサービス向上を起点とするアプローチを採用し、円借款、海外投融資を積極活用し、PPP等民間資金動員にも貢献します。

  • 2030年までに40都市以上で経営指標を改善することを目指します。
  • 2030年までに10万人以上の人材育成、3,000万人以上の給水人口の増加を目指します。