運輸交通

運輸交通

#9 産業と技術革新の基盤を作ろう
SDGs
#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs
#13 気候変動に具体的な対策を
SDGs

運輸交通は、人間社会において人々が文化的に、未来に向かって創造的に生きていくための活力の源泉です。

グローバル・アジェンダの目的

運輸交通分野における低・脱炭素化を進めつつ、国内及びグローバルにひろがる運輸交通インフラの整備や維持管理技術の向上、安全の確保に取り組みます。それにより、すべての人が安全で自由に移動でき、必要なモノがあまねく世界に行き渡る社会を目指します。

背景と課題

(1)運輸交通の役割

運輸交通は、時間距離と輸送コストの低減を通じて、人の移動機会や移動範囲の増大、モノの商圏の拡大などにより、経済発展に貢献するとともに、人びとの生活を豊かにする点で水や電気と同様に必要不可欠な社会基盤です。特に国際交通・物流を支える運輸インフラを整備することは、当該国の国際競争力を高め、海外直接投資を誘致するうえで必要です。

(2)運輸交通インフラ/サービスの現状

運輸インフラの多くは、政府等の公的部門が政策や計画の策定、資金調達、整備、維持管理等において様々な役割を負っていますが、必要なタイミングに適切な規模・態様のインフラが提供されているとは言い難いです。開発途上国におけるインフラ需要は推定約2兆ドル/年、そのうち特に運輸交通分野のニーズは大きく、政府、民間等をあわせた投資可能資金とのギャップは膨大です。
加えて、港湾、空港、鉄道、バス、有料道路等では、インフラの整備・維持のみならず、適切に運営してサービスを提供する役割も存在しますが、多くの開発途上国では、非効率なサービスが目立ちます。また、人やモノの移動において安全性の確保は最優先課題ですが、政府の役割である安全規制の制定・実施、車両増加の中での道路交通安全の確保、治安が悪化した海域での海上保安活動の実施は容易ではありません。

(3)気候変動への影響

都市化の急速な進展により交通渋滞、更には大気汚染の激化が予想されます。世界の全温室効果ガス排出量の20%を運輸セクターが占めています。運輸交通セクターからの温室効果ガスの発生源の70%にあたる自動車からの排出量を削減することも気候変動対策上、喫緊の課題です。

(4)日本・JICAが取り組む意義

運輸交通分野における日本の強みは、質の高いインフラシステムであり、それは1)長寿命、2)相手国発展の基盤づくりとなる長期計画策定から人材育成、運営支援までを包含、3)工期の遵守など契約事項の確実な履行、4)環境・防災・安全面への配慮、という特徴から成り立っています。この強みを生かした支援を行うことは、連結性の強化、地域における経済社会活動の活性化、ひいては、地域全体の安定と繁栄に貢献するという意義を有します。また、日本の優れた技術やノウハウを活用することは、途上国の開発だけでなく、日本経済にとってもメリットがあります。
JICA協力の優位性・意義として、資金協力、技術協力等、全スキームを駆使した事業実施、国交省や地方自治体、関連企業など日本国内リソースの動員力、JICA資金を呼び水とした民間資金の動員などが挙げられます。

主要な取り組み(クラスター事業戦略)

開発途上国の持続可能な成長に資する「連結性向上」とそれに伴い対応が必要となる課題、ならびに「気候変動対策」に取り組むこととし、以下5つのクラスターに注力します。

(1)「グローバルネットワークの構築」クラスター

世界各国の都市圏は、グローバルネットワークと結ばれることで物流コストの低減や信頼性の強化を実現でき、さらには都市圏としての魅力向上にもつながります。そのためには、物流の拠点となる国際港湾や港湾までの道路、これらの都市間を有機的に結ぶ幹線道路の整備等が必要不可欠です。JICAでは、国境を超えて都市圏と都市圏を結ぶ国際回廊や海、空におけるグローバルネットワークの構築を支援することで、世界各国の首都ならびに、開発途上国に100以上ある人口300万人以上の都市圏が、円滑に結ばれる社会の実現を目指します。

(2)「海上保安能力強化」クラスター

海上交通には海賊事案や海難事故など危険が多く、また、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の観点からも、海の安全性向上は重要な課題です。沿岸国の海上保安組織に対し、自律的に警備救難活動を行い、違法行為や環境汚染に適切に対応できる能力の強化に取り組みます。
「普遍的価値の共有、平和で安全な社会の実現と安定」にも資するものであり、グローバル・アジェンダ「法と行政」の下にも位置付けられます。

(3)「道路アセットマネジメント」クラスター

開発途上国では道路や橋梁などを適切に維持管理することへの認識が一般的に低く、それらの老朽化が懸念されています。道路インフラ施設をアセットとして捉え、計画、実施、評価の一連のサイクルを通じて予防保全的な維持管理を行い道路インフラ施設の長寿命化により、持続性・安全性・信頼性の高い道路交通網の構築に貢献します。

(4)「道路交通安全」クラスター

利便性の高い運輸交通サービスがもたらす負の側面の1つに、交通事故の増加があります。道路整備を積極的に推進してきたJICAはこの問題に取り組む責務があると考え、「持続可能な開発目標(SDGs)」のターゲットである、2030年までに世界の交通事故死傷者数半減に貢献すべく、モデル国において交通事故死者数を半減させることを目指します。

(5)「都市公共交通推進」クラスター

公共交通は、交通渋滞や大気汚染といった環境負荷軽減に貢献するのみならず、すべての人が利用できる地域の社会・経済活動の維持・発展に有効な移動手段であり、コロナ禍においてもエッセンシャルワーカーの活動を支えてきました。「感染症対策」という新たな視点も取り入れたうえで、都市圏人口300万以上の大都市において信頼性・安全性が高く、環境に優しい公共交通の整備・利用促進を図ります。

その他取組み、関連資料

動画資料

SDGsポジションペーパー

過去の資料