自動車(バス・大型車)の整備人材育成及び還流サイクルに向けた環境整備

ニュースリリース

背景

JICA社会基盤部では、途上国における公共バスの運転・整備スキルの向上、運行管理能力の強化、経営改善支援等を進めてきました。そのためには国内バス事業者の協力が不可欠ですが、国内のバス業界においても運転士や整備士といった人材の持続的な確保や育成が課題となっているとの声が聞こえていました。特に整備士に関しては、バスのみならず、国内の自動車整備業界全体の課題として、就職を志望する若者の減少に加え、高齢化に伴う引退もあり、向こう5年間で1万3,000人の整備士が不足するとも言われています。

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自動車整備業界としても、これらの課題への対応として生産性の向上や国内における女性やシニア層の活用も含めた人材確保に向けた取組を進めています。それに次ぐ方策として、「外国人材」の活用も一つのアプローチとして考えられますが、近年は自動車整備専門学校を卒業した外国人留学生の採用も見られるようになったものの、「技能実習」や「特定技能」制度を通じて外国人整備士の受入れや育成を行う事業者はまだまだ少ない状況にあります。

JICAではこれまで取り組んできた途上国における自動車整備士育成の知見や経験、途上国とのネットワークを活かし、日本における外国人整備士の育成及び彼らが活躍できる環境づくりを支援する取組を進めています。

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課題とアプローチ

日本における外国人整備士の育成に向けては、以下の課題への対応が必要と考えられます。

(1)国内事業者・業界関係者の連携強化

自動車メーカー、事業者をはじめ、自動車整備業界全体として、外国人整備士の活用や育成のための課題やノウハウ、好事例の蓄積が行われていません。国内の関係者間での連携強化が必要です。

(2)途上国での自動車整備職のイメージ向上、キャリアプランの提示

多くの途上国では未だ、整備士は青空の下で油まみれになりながらの「修理工」であり、日本のように「熟練された技能を持つ職業」とは認知されていません。外国人材が、日本で自動車整備技能を学び、身に着けることで将来的にどのようなキャリアを築くことができるのかを示していくことも大切です。

(3)外国人整備士を育成・活用する国内事業者の負担軽減

特に「技能実習」や「特定技能」制度を活用した外国人整備士の受入れや育成は体力のある大手事業者を中心に進んでいるものの、自社の職員が手探りで人材育成を行っており、多大な労力がかかっています。また、これまで外国人材と接する機会もなかったような事業者においては、心理的ハードルも高い、との声もあります。これらの負担を少しでも軽減していくことが、外国人整備士の育成・受入れの拡充に繋がるものと考えます。

活動紹介

JICAでは、具体的に以下の取組を進めています。

(1)国内事業者連携強化に向けた勉強会の開催

国内整備事業者との勉強会を通し、先行事業者の好事例や現場が持つ悩み・課題を業界内で共有し、今後の外国人材を含めた整備士人材育成の在り方について学びあう国内連携の勉強会を実施しました。また、今後は勉強会で得た気づきや学びを広く日本国内の関係者に向けて広く発信・共有していきます。

開催

(2)自動車整備技能取得後のキャリアプラン形成に向けた調査、広報ツールの制作

日本で自動車整備技能を学ぶ外国人材がどのようなキャリアプランを描いて来日するのか、また来日後は実際どのようなキャリアを歩んでいるのか、その実態調査を行った上で、今後の日本及び途上国における整備士としての就労環境整備における課題や改善策の検討を行います。また、外国人材に向けた自動車整備職の魅力を伝える動画等の広報ツールを制作します。

(3)国内外で広く使える教材の整備

現時点では、外国人整備士を受入れ、育成する事業者向けの統一された教材は整備されていません。外国人整備士にとっても、自主的に自動車整備に関する技能や知識を身に付けるための体系的な教材は存在しないため、彼らがその技能を習得しキャリアアップを目指す際の障害の一つとなっています。このような状況を踏まえ、外国人整備士及び受入事業者の負担軽減に資する教材を作成します。

問い合わせ先

本サイトでは、当活動を紹介するとともに、定期的にイベント、セミナーなどをお知らせします。ご関心がある方は遠慮なくお問い合わせ下さい!

社会基盤部都市・地域開発グループ : imgge@jica.go.jp

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