教育

2015年は、世界の教育にとって節目の年です。2015年9月に開催された国連持続可能な開発サミットにおいて新たに「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、「すべての人にインクルーシブかつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する」という教育目標を含む17の持続可能な開発目標が発表されました。また、日本政府は同サミットにおいて「平和と成長のための学びの戦略」という教育分野における新政策を発表しました。

日本政府の教育戦略に基づき、2030年までのこの新たな教育目標の達成に向けて取り組むために、JICAは今後5年間の教育ポジションペーパーを策定しました。途切れない学び(LearningContinuity)の実現という新ビジョンを据え、教育の段階や国の状況によって質の高い学びが途切れることのないよう、また、人間の安全保障の考えに基づき、一人一人の成長を重視し、教育と他セクターの連携による分野横断的な支援を目指しています。さらに、JICAはこれまでの事業経験に基づいて、教育協力を実施するにあたり、「信頼」「学び合いによる知識創出」「公正・インクルーシブ」を基本理念として重視していきます。実施においては、多様なパートナーと連携し、(1)学びの改善に向けた質の高い教育、(2)公正で持続的な成長を支える教育、(3)知識共創社会づくりのための教育、(4)インクルーシブで平和な社会づくりを支える教育の4つを重点分野として取り組んでいきます。

基礎教育

2000年以降世界で大きな進展が見られたものの、依然5,800万人の不就学児童がおり、初等教育を修了していない子どもも約1億人います。さらに世界の初等教育就学年齢の約4割近い2億5000万人の子どもたちが、基礎的な読み書きや計算能力を習得しておらず、そのうちの1億3,000万人は少なくとも4年間学校に通った経験があると推計されています。

JICAは、子どもが基礎的な学力と、自ら学び考える力を身につけることができるよう、「学びのサイクル」アプローチを強化し、(1)カリキュラム、(2)教科書・学習教材、(3)授業、(4)学力評価(アセスメント)の一貫性のある支援を行い、総合的なソリューションを提供していきます。さらに、各国の状況を的確に診断し、教育政策策定・制度改善、教育人材育成、学校運営改善、学校建設を含む学習環境改善に向けた支援を効果的かつ選択的に組み合わせて総合的な実施を行います。また、実施にあたっては、今後も研修や国際会議などを通じて、グローバル及びリージョナルな「学び合い」を促進していきます。さらに、貧困層、女子・女性、障害のある人々、少数民族、紛争や災害の影響を受けた人々など、不利な立場に置かれた人々に配慮した支援の取り組みを強化します。

職業技術教育・訓練

世界の若年失業率は2007年から2013年の間に11.6%から13.1%に上昇しており、成人失業率の約3倍となっています。若年失業は税収減や社会保障費の増大、社会の不安定化につながる深刻な課題です。この原因のひとつに、若年人口の多い開発途上国で、若年層が産業界のニーズに合致する教育・訓練を受ける機会が限られており、人的資源が有効に活用されていないという現実があります。適切に訓練された人材の不足は産業振興を妨げる要因に、質の高い産業人材の不足は経済成長を妨げる要因にもなっています。これらの課題に対応するためJICAは、職業技術教育・訓練(TVET)機関が「出口のある教育」を提供できるよう、関連分野との連携を強化した協力を行っています。また、社会的弱者に対する生計向上のための訓練も行っています。

高等教育

グローバル化と知識基盤型社会の進展に伴い、高度化・複雑化する各種課題の解決には、イノベーションを創出できる人材の育成が高等教育機関には期待されています。これを支えるため、JICAでは、日本に比較優位のある工学教育分野を中心に、各国で中核となる大学の能力強化、大学間ネットワークの強化、教育の質保証の制度構築等を支援しています。
同時に、高等教育機関は、産業界で即戦力となる人材育成の役割も期待されています。JICAは、途上国における産学連携活動を促進している他、各国で産業開発を担う優秀な若手人材を留学生として受け入れ、大学での学習機会と、企業でのインターンシップの機会を提供しています。
このほか、途上国の行政機能の向上、社会経済開発の基盤づくり、日本の良き理解者として友好関係強化につながる人材育成にも積極的に取り組んでいます。