ガバナンス

ガバナンス

#8 働きがいも経済成長も
SDGs
#16 平和と公正をすべての人に
SDGs

人権の保障、民主主義、法の支配を実現し、一人ひとりが尊重される社会の構築を支援します。

グローバル・アジェンダの目的

人身や言論の自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値が実現し、一人一人の国民が人間として尊重され、幸福である社会を目指すため、こうした理念の実現に寄与する民主的かつ包摂的なガバナンスの強化を支援します。具体的には、行政及び司法、メディアにおける制度構築・改善及びこれを担う人材の育成を行うことを目的とします。

背景と課題

(1)ガバナンスの課題

  • 世界の民主主義の状況は15年連続で後退し、また自由が享受されていない国も増加しています(Freedom in the World,2021)。
  • 民事・行政上の法的な問題に直面している国民は世界で14億人にのぼり、そのうち2.5億人は極めて困難な状況におかれており、国民が何らかの行政・司法サービスにアクセスできる基盤の整備が重要です。
  • アジア・アフリカ・大洋州諸国の多くでは、腐敗、行政手続の不透明性、法令が適切に執行されていない、行政サービスが十分に提供されていない等の課題があり、これらの問題により不利益を被っている国民の救済も十分には行われていません。
  • メディアに関しても、報道の自由が満足いく状態と評価されている開発途上国は、わずか13ヶ国に留まり、国家によるメディア介入等をなくし、国民の情報に対するアクセスを改善することが課題です。
  • また、国際場裏における法の支配の実現の観点では、各国が国際法を執行できる体制の強化が課題であり、こうした問題が顕在化している海洋に関し、海上保安を担う組織の強化が重要です。

(2)日本・JICAが取り組む意義

  • 適切なガバナンスは、一人ひとりの権利が保障され、人々が安心して経済社会活動に従事し、社会が公正かつ安定的に運営されるために不可欠の要素であり、格差の是正を始め、公正で包摂的な社会の実現を含む「質の高い成長」の前提をなすものです。
  • 日本は、150年前に、その近代化の過程において、自国の社会、文化を踏まえて、各種の国家制度を欧米諸国から取り入れ、これを受容してきた経験を有しています。こうした経験を下に、それぞれの国には固有の状況と背景があるという観点を堅持して相手国の主体性と内発性を重視した協力を実施し、相手国の課題をともに考え、相手国の現状に則した法制度や地方行政の枠組みを構築するといういわゆる“寄り添い型”の手法により、成果を挙げるとともに、相手国の信頼を得てきました。

主要な取り組み(クラスター事業戦略)

JICAは以下の3つのクラスターに重点的に取り組みます。人身・表現の自由、基本的人権、法の支配、民主主義といった理念は概念的、抽象的なものであり、そうした理念の定着を図るために、長期にわたり相手国との関係を構築していくことが極めて重要です。

(1)「法の支配の実現」

普遍的な価値(基本的人権、自由、平等等)に基づき、法令の整備・運用能力や司法アクセスの改善、公共放送・メディアに対する支援を通じ、基本的な権利・自由の保障・実現及び公正かつ透明なビジネス環境整備を目指します。また、基本的な人権をあらゆる層で担保するため、脆弱層を守るための新たな取組も積極的に推進していきます。

脆弱層を守る新たな取組としては、内外の様々な関係者と協働して、児童労働撤廃等「ビジネスと人権」の関する協力も実施していきます。

(2)「公務員及び公共人材の能力強化」

法の支配等の普遍的価値及び住民との協働の視点に基づいて適正かつ効率的な行政サービスを提供できる中央・地方の公務員制度の構築、人材育成を図るとともに、国民へのサービスデリバリーに必要な、地方自治体の計画立案、事業実施の能力の強化を図ります。

(3)「海上保安能力の強化」

海洋における法の執行にあたる海上保安組織の能力強化を通じて、国際場裏における法の支配の実現に向けた法執行を強化していきます。

これらのクラスターの協力の成果のインパクトを拡大する上で、開発政策借款の政策マトリックスを通じた政策レベルの打ち込み等、資金協力との密接な連携を図ります。

パートナーとの協働

法の支配を確立し、人々が尊厳をもって暮らせる社会を実現するためには、経験や知見に富む省庁や自治体、高度な専門性をもつ法曹関係者や研究者、留学生事業 で実績のある大学など、多種多様なパートナーが欠かせません。長期的な視点に基づいて支援を積み重ね、新たな協力の在り方を追求します。