ガバナンス

人権の保障、民主主義、法の支配を実現し、一人ひとりが尊重される社会の構築を支援します。
人身や言論の自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値が実現し、一人一人の国民が人間として尊重され、幸福である社会を目指すため、こうした理念の実現に寄与する民主的かつ包摂的なガバナンスの強化を支援します。具体的には、行政及び司法、メディアにおける制度構築・改善及びこれを担う人材の育成を行うことを目的とします。
JICAは以下の3つのクラスターに重点的に取り組みます。人身・表現の自由、基本的人権、法の支配、民主主義といった理念は概念的、抽象的なものであり、そうした理念の定着を図るために、長期にわたり相手国との関係を構築していくことが極めて重要です。
普遍的な価値(基本的人権、自由、平等等)に基づき、法令の整備・運用能力や司法アクセスの改善、公共放送・メディアに対する支援を通じ、基本的な権利・自由の保障・実現及び公正かつ透明なビジネス環境整備を目指します。また、基本的な人権をあらゆる層で担保するため、脆弱層を守るための新たな取組も積極的に推進していきます。
脆弱層を守る新たな取組としては、内外の様々な関係者と協働して、児童労働撤廃等「ビジネスと人権」の関する協力も実施していきます。
法の支配等の普遍的価値及び住民との協働の視点に基づいて適正かつ効率的な行政サービスを提供できる中央・地方の公務員制度の構築、人材育成を図るとともに、国民へのサービスデリバリーに必要な、地方自治体の計画立案、事業実施の能力の強化を図ります。
海洋における法の執行にあたる海上保安組織の能力強化を通じて、国際場裏における法の支配の実現に向けた法執行を強化していきます。
これらのクラスターの協力の成果のインパクトを拡大する上で、開発政策借款の政策マトリックスを通じた政策レベルの打ち込み等、資金協力との密接な連携を図ります。
法の支配を確立し、人々が尊厳をもって暮らせる社会を実現するためには、経験や知見に富む省庁や自治体、高度な専門性をもつ法曹関係者や研究者、留学生事業で実績のある大学など、多種多様なパートナーが欠かせません。長期的な視点に基づいて支援を積み重ね、新たな協力の在り方を追求します。
「ガバナンス」が援助の世界で重要な概念として取り上げられるようになったのは冷戦が終結した1990年代以降になります。この頃から開発援助にあたって人権の擁護や民主化の促進に配慮することにより援助を必要としている人々に開発の成果が届いているかどうかを重視するようになりました。特に、途上国政府及び受益者自身が開発への強い意志を持ち、当事者としての責任を分かち合いながら主体的に開発に取り組むための「オーナーシップ」の醸成が重視されるようになりました。
また、2000年の国連ミレニアム宣言(MDGs)では、開発と貧困削減の目標達成は「とりわけ国内のよい統治にかかっており、また、国際レベルでのよい統治、及び金融・通貨・貿易体制における透明性にもかかっている」としたうえで、「民主主義を推進し、法の支配並びに発展の権利を含む、国際的に認められた全ての人権および基本的自由の尊重を強化する」ことを謳っていました。
これらの経緯を踏まえ、SDGsゴール16においては、法の支配および司法アクセスの提供(16.3)、汚職・贈賄の減少(16.5)、効果的で説明責任があり透明性が高い公共機関の発展(16.6)、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定の確保(16.7)といったガバナンスにかかる目標が設定されました。
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