JICAの3つの挑戦
世界は今、国際秩序の根幹が揺らぐなかで、気候変動や感染症などの地球規模課題、インフレ、債務危機といった課題が重なり合った複合的な危機に直面しています。JICAは、新しい開発協力大綱の下、人間の安全保障と質の高い成長をミッションとして、開発途上国の創造的復興とSDGs達成に力強く取り組みます。その際、多様なパートナーとの共創を推進し、デジタル技術や革新的手法も活用して、開発効果の最大化を追求します。
1. 普遍的価値に基づく国際秩序維持への貢献
国際秩序の根幹を揺るがすような政変や紛争が発生している今日において、自由・民主主義・法の支配・海洋の自由といった普遍的価値を守ることが一層重要になっています。
JICAは、各国の歴史や文化、発展状況などを踏まえて柔軟に定義された普遍的価値に基づき、日本政府が掲げる「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向けて取り組み、インド太平洋地域全体、ひいては日本と世界の平和と繁栄に貢献します。その際、開発途上国の主体性を重んじ、関係者間の信頼を醸成しながら、日本の強みを生かした開発協力を推進します。
ウクライナに対しては、日本の戦後復興・災害後復興やこれまでの開発途上国への復興支援の経験を踏まえて、地雷・不発弾対策や、エネルギーなどの基礎インフラ整備を含む生活再建など、戦争後を見据えた復旧・復興支援を推進します。また、難民・避難民への支援、周辺国への支援にも取り組みます。
2. 世界が直面する複合的な危機への貢献
世界が直面する複合的な危機に対して、JICAは人間の安全保障の考え方に基づいた協力を実践します。
JICAは、開発途上国の開発と気候変動対策の両立を支援します。開発途上国の立場に寄り添いながら、各国の実情に合わせてエネルギー転換や公共交通整備といった緩和策への協力や、防災・水・農業分野などにおける適応策への協力を展開します。また、民間資金の動員や新しい技術の活用を積極的に促進していきます。
感染症の脅威に対しては、「JICA世界保健医療イニシアティブ」を推進し、すべての人々が、いつでも必要な保健医療サービスを経済的に困難なく受けられる「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の達成を目指します。
食料危機に対しては、特に状況が深刻なアフリカ地域において、「JICAアフリカ食料安全保障イニシアティブ」を展開し、開発途上国の食料安全保障の確保に貢献します。
3. 多様なパートナーとの共創・革新
コロナ禍後の開発途上国において、協力のニーズは変化を続けています。JICAは、データ活用やデジタル技術導入によって、あらゆる事業でDXを推進し、「デジタルで最先端を行くJICA」を目指します。また、開発途上国と日本の研究者との協働を促進し、開発課題の解決に資する科学技術をJICAの事業に活用していきます。
さらに、「JICAグローバル・アジェンダ」の推進、資金動員を含む多様なパートナーとの連携拡大や、海外投融資や民間投資の促進を通じて、事業の効率化や開発インパクトの最大化を図ります。
また、人材育成事業の経験や、JICA海外協力隊経験者といった人的資源など、JICAが長年かけて培った国内外のネットワークを最大限活用し、日本国内の多文化共生や地域経済活性化のための取り組みを強化します。
これらを通じて、JICAは多様なパートナーと共創し、開発途上国の健全な発展と、豊かで持続的な日本社会の実現に貢献します。
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