jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

事業展開の方向性

JICAの挑戦

国際社会が複合的危機にさらされ、直面する社会課題・開発課題も複雑化していくなか、JICAは「人間の安全保障」の理念に沿って、さまざまな危機の予防と対応能力の強化を図り、包摂性、強靱性、持続可能性を伴う経済社会づくりを一層推進します。
開発協力大綱が示す重点政策を踏まえ、JICAは「新しい時代の『質の高い成長』とそれを通じた貧困撲滅」「平和・安全・安定な社会の実現、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化」「複雑化・深刻化する地球規模課題への国際的取組の主導」に取り組みます。その際、開発途上国を含む諸外国や日本国内のアクターと新しい解決策を共に創り出していく「共創」を推進します。また、70年にわたる開発途上国との協力で培った知見・経験や社会課題の解決策を日本へ環流させることで、日本国内の諸課題解決にも貢献します。

1 新しい時代の「質の高い成長」とそれを通じた貧困撲滅

「国づくりは人づくり」の考えの下、日本は開発途上国における人材育成や質の高いインフラの整備、法制度整備などを行い、開発途上国の経済成長を実現します。それを「質の高い成長」として、貧困削減を持続可能な形で進め、一人一人が尊厳を持って、幸福で生きられる豊かな社会の実現を目指しています。

質の高い成長とは、誰一人取り残さない「包摂性」、自然災害や経済危機などに耐え回復する「強靱性」、経済・社会・環境が調和する「持続可能性」を兼ね備えた成長を指します。

JICAは、質の高い成長の実現のため、食料・エネルギー安全保障など経済社会の自立性の強化、デジタル技術を用いた社会課題の解決や質の高いインフラ整備に取り組みます。

2 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化

開発途上国では、地政学的な緊張や紛争などによる平和と安定の問題の深刻化、民主化・人権擁護に逆行する動き、海賊行為やテロなど、平和で安定した社会が脅かされています。

こうした脅威に対し、JICAは、危機を予防し対応するための人材・社会の能力強化を図り、人道・開発・平和の連携(ネクサス)を推進しつつ、社会の平和と安定に向けた協力に取り組みます。また「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のビジョンの下、法の支配に基づく国際秩序の維持・強化を図り、日本と世界の平和と繁栄に貢献します。

このために、開発途上国の主体性を重んじ、関係者間の信頼を醸成しながら、各国における法の支配の確立、グッドガバナンスの実現、民主化の促進・定着、基本的人権の尊重のための人材育成などを進めていきます。

3 複雑化・深刻化する地球規模課題への貢献

感染症や気候変動など、国境を越えて人類が共通して直面する課題は、国際社会全体に大きな影響を与え、多くの人々に被害をもたらします。特に開発途上国、貧困層などの脆弱な立場に置かれた人々に、より深刻な影響をもたらす傾向にあります。

JICAは、気候変動対策を初めとしてさまざまな地球規模課題に取り組み、開発途上国の環境と調和した社会の形成や環境管理能力の強化、気候変動の緩和・適応に資する開発途上国の体制やインフラ整備に協力します。

また、SDGsの達成に向けて、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進、日本の防災・減災の知見を生かした防災協力、万人のための質の高い教育の推進などに取り組みます。

4 開発途上国で培った知見・経験の日本社会への環流

開発協力大綱では「共創と連帯に基づき生み出した新たな解決策や社会的価値を日本にも環流させることを目指す」とうたわれており、日本社会への環流を国際協力の重要な要素としています。

JICAは、次世代を担う人材を育て、日本自身が直面する経済・社会課題の解決や経済成長にもつなげる視点と日本と世界に共通する課題を解決する取り組みを活用することで、新しい価値を創ることを目指しています。

日本社会への環流として、開発途上国で活動したJICA海外協力隊員が帰国後に日本と開発途上国との懸け橋となり、日本国内の地域創生や社会課題の解決に貢献する事例が増えています。