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理事長あいさつ・活動内容

ごあいさつ

国際協力機構 理事長 田中 明彦

現在の世界は長期の複合的危機の下にあります。気候変動による自然災害が頻発し犠牲者が増加するなか、感染症の危険も去ったわけではありません。相次ぐ武力紛争や人道危機の継続など、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序への挑戦も続いています。世界経済の動向と各国の内政は相互に連関して、国際関係を揺り動かしています。国際協力なくしてこのような複合的危機に対処することはできません。気候変動や感染症対策は、先進国であっても一国だけでは効果的な対応は不可能です。開発途上国が直面する多くの開発課題は、当事国の努力に加えてさまざまな援助機関やNGOなどの効果的な協力があって、解決に向かうことができます。一部の援助国からの援助額が低下することが見込まれるなか、量的な低下を補う質的に効果的なアプローチが求められています。複合的危機によってさまざまな課題に直面している世界ですが、他方、革新(イノベーション)の可能性はますます大きくなっています。最新の技術革新によって従来とは異なる形で問題解決が図られる可能性が生まれています。また最新技術を使わなくとも、現場でその効果が確認された手法も生まれています。

 

このような革新を生み出す最も効果的なやり方は「共創」です。現地政府とJICAのような援助機関に加えて、民間企業やNGO、さらには大学などに属するさまざまなステークホールダーが共創することで、新しい技術を活用したり、開発効果の高い手法を普及させたりすることができます。そのようにして生まれた革新は、開発途上国の開発課題に応えることに加えて、共創を通じて世界各地の人間の安全保障にも貢献することができます。つまり共創は「環流」を生み出します。共創によってつくり出された革新を世界中の国々の間で環流させることこそが、複合的危機の時代における最大のテーマです。JICAも共創によってつくり出される革新を世界中で環流させることで、世界における人間の安全保障と持続的発展に貢献し、日本国内の課題解決にもつなげたいと考えています。

 

2024年度を事業面から振り返ると、JICAは、引き続きウクライナの復旧・復興支援やガザへの人道支援など平和・安全・安定な社会の実現、質の高い成長を実現するインフラ支援を含む自由で開かれたインド太平洋(FOIP)に貢献するさまざまな取り組み、地球規模課題への取り組み、民間企業などとの連携による開発課題への取り組み、また直近ではミャンマーで発生した大地震への緊急支援などを実施しました。また「JICAサステナビリティ方針」で掲げる気候変動対策や生物多様性の主流化、基本的人権の尊重など2030年のSDGs達成に向けた取り組みも強化しています。202410月に副理事長を最高サステナビリティ責任者(CSO)に任命し、組織面においてもカーボンニュートラル達成の追求や情報開示の推進など、サステナビリティ経営を加速化しています。2025年は、1965年に初めて海外協力隊を派遣してから60周年にあたります。海外協力隊は生活環境が厳しい開発途上国の現場で、文化や価値観の違いを理解し、現地の人々と共創することでさまざまな課題に取り組んできた人材です。その取り組みから多くの革新が生まれています。帰国後にはその経験を生かし、日本各地の課題解決や地域社会の活性化に貢献するグローカル人材として活躍する人も増えています。まさに環流を実現する人材群です。2025年4月には国際協力機構法が改正されました。この改正によって、JICAは民間資金とのさらなる連携、また高等専門学校や独立行政法人、現地NGOなどの新たなパートナーとの連携が可能となりました。ここでも民間を含めたさまざまなパートナーとの共創により革新を生み出し、その成果を日本のみならず世界に環流させたいと思います。組織運営では、透明性の確保や説明責任の徹底に重きを置き、真摯に事業を推進してまいります。フィリピンの鉄道事業の実施段階で起きた情報漏洩事案については、JICAの行った対応について検証委員会に検証を行っていただき、2025613日に報告を受けました。検証委員会の指摘を踏まえ再発防止にしっかりと取り組み、ODAの信頼回復に努めます。JICA関係者の方々が安心して業務に取り組めるよう、安全対策も引き続き徹底してまいります。


JICAは、共創によって革新を生み出し、その成果を日本を含む世界で環流させていきます。こうした取り組みを通じ人間の安全保障の実現 、国際秩序の維持、世界の日本に対する信頼の向上に貢献し、「信頼で世界をつなぐ」というJICAのビジョンを実現していきたいと思います。


2025年11月1日
独立行政法人国際協力機構
理事長 田中 明彦

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