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理事長あいさつ・活動内容

ごあいさつ

国際協力機構 理事長 田中 明彦

いま、私たちは歴史の転換期にいます。世界の地政学的競争の激化などにより、冷戦後の国際社会の安定と繁栄を支えてきた法の支配に基づく国際秩序が挑戦にさらされています。また、気候変動は過去と比べて、より具体的な問題として切実感を伴って認識されるようになりました。さらに、世界中で感染症、食料・エネルギー価格の高騰、債務問題などの危機が複合的に発生しています。このような複合的な危機は、全人類への脅威であるだけでなく、開発途上国の脆弱な人々により深刻な影響を与えています。その結果、2030年を期限とする持続可能な開発目標(SDGs)の達成が危ぶまれています。

世界が危機のなかにあるということは、日本人の生活も脅かされているということです。しかし、複雑に絡み合った課題を一国だけで解決することはできません。世界全体が協調して取り組む必要があります。とりわけ2023年は、G7議長国として日本には、こうした議論を力強く牽引することが求められています。国際社会が協調して課題に取り組まなければならない局面において、日本の開発協力の実施を担うJICAの役割はかつてないほど重要になっています。

このような認識の下、2022年度は一刻も早くJICAの活動をコロナ禍前の水準に戻すことを目指しました。私自身も世界13カ国を訪問し、相手国や国際機関などのリーダーらと議論し、パートナーとして、共にSDGsの達成に向けて協力することを確認しました。

2023年度は、2030年のSDGs達成に一歩でも近づくために、さらに取り組みを強化します。新しい開発協力大綱の下、すべての人々が恐怖と欠乏から免れ、尊厳を全うすることができる「人間の安全保障」をJICA事業に通底する理念として協力を進めます。同時に、自然環境を損なうことなく格差の少ない持続的な成長を目指す「質の高い成長」を後押しします。

具体的には、法の支配、自由、民主主義、基本的人権の尊重などの普遍的価値に基づく国際秩序の維持に取り組みます。なかでも、ウクライナとその周辺国への支援を積極的に行うとともに、日本政府の外交政策である「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」のさらなる推進に向けた協力に力を入れます。

また、複合的な危機の影響を受けやすい脆弱な国や人々への支援や、気候変動、保健医療、防災など、地球規模の課題への取り組みを強化します。トルコをはじめとする自然災害に見舞われた地域の復旧・復興支援には、災害大国である日本の知見が役に立つと考えています。

こうした課題を解決するため、2021年に策定した「JICAグローバル・アジェンダ(課題別事業戦略)」を踏まえて事業を戦略的に進め、国際社会の平和と安定、そして繁栄の確保に貢献します。

一方、国内に目を転じると、少子高齢化が進み、国内の活力を維持するためにも外国人材の受入れが必要とされています。JICAは、これまでの協力を通じて培った開発途上国の人々とのネットワークや人材を活用し、選ばれる日本、共生社会の実現に貢献します。

JICA自身の改革も必要です。JICAは開発途上国のSDGs達成を支援する組織です。その名に恥じぬよう自らの組織運営も見直し、取り組みが不十分なところは迅速に改善するなど、サステナビリティ経営を推進します。これに向け、2023年4月には「サステナビリティ推進室」を設置し、組織内の体制を整備しました。

JICAは「信頼で世界をつなぐ」を組織のビジョンとして掲げています。さまざまなパートナーとの連携・共創を図り、コロナ禍のなかで弱まった人と人とのつながり、国と国とのつながりを回復・強化するとともに、新たなつながりも発見・創造することで、開発途上国との信頼を構築し、より良い世界の実現に貢献していきたいと思います。

2023年8月1日
独立行政法人国際協力機構
理事長 田中 明彦

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