マーシャル諸島において選挙管理ワークショップが実施されました
2025.04.01
大洋州の国、マーシャル諸島。「真珠の首飾り」とも呼ばれ、広大なエリアに点在する多くの環礁や島で構成されています。日本とは歴史的に関係が深く、近年も多くの分野で協力関係にあります。
86年の独立以降、選挙は4年に一度継続的に実施されていて、その管理を担っているのは文化・内務省選挙管理事務所(RMIEA)です。RMIEAは有権者登録、投開票集計事務等を実施し、選挙結果を公表しますが、有権者名簿の精度の低さを始め、まだまだ課題は多いとRMIEA自身は考えています。
そのような状況のもとRMIEAは、選挙管理に関するワークショップの実施をJICAマーシャル支所に要請しました。支所は西澤昌代企画調査員を中心に調整を重ね、日本からは辰巳知行JICA国際協力専門員と清水大資氏(選挙制度実務研究会理事、元都道府県選挙管理委員会連合会事務局長)が二度、現地を訪問しました。
レクチャーする辰巳国際協力専門員
質問する参加者
2023年の一度目のセミナーでは日本の選挙管理について、その具体的な方法や長年の経験に基づくノウハウの共有が図られ、活発な意見交換が行われました。また、同分野に対する日本の国際協力の考え方や他国における協力経験等も共有され、他の政府機関や市民社会組織からも合わせて約100名の参加がありました。
質問に答える清水氏
マーシャル諸島の主権者教育用ポスター
二度目のワークショップは2025年1月、先方の関心が特に高い「主権者教育」にテーマを絞って実施されました。清水氏と辰巳氏がそれぞれ、日本と世界の主権者教育についてレクチャーを行い、続いて参加者によるグループワークが行われました。日本や世界の経験を、マーシャル諸島においてはどのように活用できるのか、参加者間で活発な議論が行われ、それぞれのチームの代表者が成果を発表しました。
グループワークの様子
グループAによる発表
主権者教育は、選挙管理機関の重要な任務のひとつです。選挙のタイミングで行われる「選挙時啓発」のみならず、平時にも継続的に実施される「常時啓発」は、選挙や民主主義に関する人々の理解を増進し、その国の民主的基盤を育む、とても重要な活動です。
その代表的な活動の一つが「出前授業」です。選挙管理機関のスタッフが学校やコミュニティーに出向き、選挙管理に関するレクチャーをしたり、模擬投票を行ったりする活動です。これまでマーシャル諸島では実施されたことがなく、この機会にチャレンジしようということになり、首都マジュロの主要校であるマーシャル諸島高校へ出向くことになりました。
講義をするベンRMIEAチーフ
講義をする辰巳専門員
参加者は16~18歳の高校生約130名。RMIEAチーフのベン氏が「マーシャル諸島における選挙管理」について講義し、辰巳専門員が「世界の多様な選挙管理」について話をしました。多くの質問が寄せられ、選挙や民主主義について共に考える貴重な機会となりました。相馬大使や大野JICA支所長も会場を訪れ、よりよい民主主義を目指す両国の関係が、一層深まる機会ともなりました。
続いては「模擬投票」です。多くの参加者にとっては初めての経験だったようですが、「難しいと思っていたけど意外と簡単だった」、「自分の考えで投票してよいのだと分かった」等のコメントが聞かれました。その後「模擬開票」も行われ、体験を通して学生たちは、選挙管理のプロセスと民主的な手続きについて理解を深めているようでした。
模擬投票の様子
模擬開票の様子
継続的な出前授業の実施は、選挙管理機関スタッフの能力向上にも大きく寄与します。また、「顔の見える選管」となることは、選挙管理プロセスへの信頼性を高めるだけでなく、選挙暴力の緩和にも一定の効果があると考えられています。
信頼に足る選挙管理は、社会の民主的発展を支える制度的土台として、またひとりひとりの人間が尊重され、法の支配に基づく社会づくりが進められる上でとても重要です。
授業には学校関係者、省庁職員等も多数見学に訪れ、同国初の選挙管理出前授業を高い関心を持って見つめていました。
国名 | マーシャル諸島 |
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協力機関 | 文化・内務省選挙管理事務所(RMIEA) |
対象地域 | マジュロ市 |
事業内容 | 選挙管理に関する現地ワークショップ、 パイロット出前授業、模擬投票等の実施 |
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