第10回自治体等水道事業関係者勉強会を開催
掲載日:2024.12.27
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2024年12月16日~18日の日程で、第10回自治体等水道事業関係者勉強会(以下、本勉強会)をJICA沖縄センターで開催しました。本勉強会は2014年3月に第1回を開催して以来、新型コロナの影響を受けた2020年を除き、毎年開催してきましたが、直近の3年間は新型コロナの影響によりオンラインでの開催だったため、4年ぶりの対面での実施となりました。北は東北、南は沖縄まで、全国19の組織から46名が参加しました。
これまで、本勉強会は、国内の水道関係の自治体等による国際協力の事例共有を主な目的として実施してきましたが、今回はその目的に加えて、「共創」をメインテーマに置き、JICAと自治体等が一緒に議論しながら、これまでにない新たな協力や、自治体にとってもメリットのある協力を考えることを狙った勉強会としました。
勉強会では、国内外の国際協力の動向を踏まえつつ、自治体等による多様な水道分野の協力の取り組み事例の共有と、その内容を深掘りするためのラウンドテーブル*1、新しいアイディアを生み出すためのアイディアソン*2などを行い、最後は所属組織ごとにKey Takeaways*3の作成を行い、印象に残った言葉や組織へのフィードバック内容などを発表しました。
*1:「ラウンドテーブル」とは、円形に配置されたテーブルを囲んで参加者が平等に意見を述べ合う会議形式のことを指します。この形式の最大の特徴は、参加者全員が対等な立場でディスカッションに参加できることです。(出典:イベント用語辞典)
*2:アイディアソンとは、アイディアとマラソンを組み合わせた造語です。新しいアイディアを生み出すために行われるイベントで、主にIT分野で使われています。(出典: Wikipedia)
*3:プレゼンテーションやミーティングで覚えておくべき主要なポイントや関心事のことです。(出典:覚えておきたい英語のビジネス用語45選 Indeed)
初日午前中に、沖縄県企業局が運転維持管理を行う、北谷(ちゃたん)浄水場を視察しました。同浄水場は国内でも珍しい、硬度低減化施設や海水淡水化センターを有しており、貴重な施設の見学となりました。沖縄県は水源が限られており、本土復帰の1972年以来これまでに延べ1,000日を超える給水制限を経験していることから、水源の確保や水運用についても話を伺うことができました。
初日午後からは、JICA沖縄センターに戻り、JICA及び国土交通省から情報共有を行いました。JICAからは、今回の勉強会のテーマである“共創”と“革新”を考える必要性の説明と事例紹介を行いました。国土交通省からは“国土交通省が取り組む水道分野の国際協力における「共創と革新」”というテーマで地球規模の課題、共創による水道分野の国際展開の推進や革新の観点から、上下水道一体で取組を進める視点などについて説明を頂きました。
初日の午後と2日目の午前を使って、“共創”と“革新”の視点から、参加者による事例発表を頂きました。
初日の午後は“共創”をテーマに、沖縄県、福岡市、北九州市から発表を頂きました。
沖縄県からは、「「共創」~自治体間の共創について~」というテーマで、沖縄県や名護市、名護市管工事業協同組合から参加を頂き、それぞれの立場から国際協力に携わるメリットや、今後よりメリットを感じるために解決したい課題などについて発表がありました。福岡市からは、「国際協力における共創の取組み」として、国際協力を実施する際の庁内の連携体制や、局内の国際協力の実施体制について紹介がありました。北九州市からは、「NHK「新プロジェクトX」放送に伴う北九州市の広報」というテーマで、2024年10月に放送された新プロジェクトX放送に至るまでの北九州市のメディア活用の事例を紹介頂きました。
2日目の午前中には、横浜市、大阪広域水道企業団、名古屋環未来研究所から、“革新”をテーマに発表頂きました。
横浜市からは「横浜市水道局が取り組む国際事業について」というテーマで発表を頂き、横浜市が国際貢献を行う意義や、多様な国際協力メニューの創出などのご紹介を頂くとともに、継続的に国際協力を実施していく中で抱えている課題についても共有いただきました。大阪広域水道企業団からは「タイ王国首都圏水道公社(MWA)と大阪広域水道企業団間の国際交流」として、MWAとの関係構築の経緯や独自の協力枠組みなどについて紹介頂きました。最後に名古屋環未来研究所からは、「水道局の外から見た水道分野の国際協力の可能性」として、名古屋市副市長もご経験された山田様より、ご自身の国際協力のご経験やエネルギーの確保も含めた水循環の一部として水道を捉えることの重要性や、国際協力を推進するためにどのように関係者に働きかけていくのが効果的かなどのお話を頂きました。
それぞれの発表後には、参加者を3つのグループに分け、それぞれの発表者が20分ずつ各グループを回りながら、質疑応答等をするラウンドテーブルの場を設け、いずれのグループでも時間が足りなくなるぐらい活発な意見交換が行われていました。
2日目の午後からは、所属組織や地域が重ならないように参加者を7つのグループに分け、アイディアソンを行いました。事前に所属地域の課題や考え得るパートナー、イノベーションについて、それぞれの参加者に作成を頂きました。その上で、課題×パートナー、課題×イノベーションという視点から、マトリックスを用いた強制連想法を使い、アイディアを創出するワークを行いました。マトリックスが完成したタイミングで中間発表を行い、良いと思ったアイディアへ各参加者に投票をしてもらい、客観的な視点での評価も加えた上で、グループ毎に具体的な検討をするアイディアを決め、最後に発表しました。強制連想法を用いることで、なかなか普段の業務内では発想に至らないようなアイディアが数多く発表され、参加者からはこのアイディアを自分の業務でも実践してみたい、といった声も聞かれ、非常に有意義な時間となりました。
最終日には、所属組織ごとにKey Takeawaysを作成してもらい、発表を行いました。Key Takeawaysには、「勉強会への期待とその結果」、「アイディアソンで発表されたうち、一番良いと思ったアイディアとその理由」、「印象に残った言葉や事例」、「その他所属組織へのフィードバックや全体的な感想」を記入してもらいました。
参加者からは、「他の事業体の共創の例を聞くことができ、非常に参考になった」「参加者同士でのコミュニケーションもあり、多くの刺激を受けた」、「アイディアソンの有効性を感じた、自分の組織でも実施したい」といったポジティブな評価が共有されました。
参加者から頂いたポジティブな評価も踏まえ、引き続き国内のパートナーとの連携を強化することができる場を、来年度以降も継続していきたいと考えています。
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