栄養改善

JICAの取り組み方針

1.栄養改善へのマルチセクトラルな取り組み

JICAには各セクターにおける資金協力、技術協力の実績に加え、民間セクター・大学・NGO・ボランティアとの連携事業を有する強みがあることから、これらを最大限活用しマルチセクトラルな取組みを強化していきます。
各国の栄養状況の分析に基づき途上国政府によるマルチセクトラルな取組みを強化するため、根拠に基づく効果の高いアプローチを用いた介入デザインを行うとともに、各セクターの介入の栄養への貢献を可視化しさらなるエビデンスの創出に向けた支援も行っていきます。

課題対応力の強化と栄養改善分野の人材育成に向けたJICAの取り組み

JICAでは、人間開発部、農村開発部、地球環境部、青年海外協力隊事務局及び民間連携事業部からメンバーが参加する合同栄養タスクチームを立ち上げ、執務参考資料の作成や勉強会を開催するなどして、栄養対策への課題対応力強化に取り組んでいます。

また国際協力における栄養改善分野の専門家の育成に向けて、外部人材やコンサルタント向けに年1回能力強化研修「栄養改善人材養成(マルチセクトラルアプローチに向けて)」を実施しています。

さらに農業・保健・教育・水・コミュニティ開発等の食と栄養に関連する分野で、栄養改善活動に関心のある有志のJICA海外協力隊、専門家、コンサルタント等のネットワーク化を図るため栄養改善パートナー制度を発足させました。

2.保健分野の協力を通じたアプローチ

脆弱な母子の低栄養対策

母親の胎内にいる胎児期から生後2歳までの1000日間の栄養状態は、子どもの知的発達と身体的発達に影響を与え、生存とその後の健康に大きな影響を及ぼすことが明らかになっています。JICAでは、妊産婦や子どもに対する栄養対策が特に重要であると認識し、母親に対する母乳栄養の推進、行政官や保健医療従事者に対する子どもの栄養不良防止のための研修等、母子保健事業の中で栄養対策を進めています。

母子の低栄養の原因としては不適切な栄養の摂取と疾病があり、これらの背景として1)家庭における食料不足、2)食餌行動とケアの不適切な実践、そして3)健康的でない家庭環境と適切でない保健サービスがあることから、食、保健等を含めたマルチセクトラルな取組みを行います。具体的には、母乳育児、乳児補完食、衛生行動の改善等の栄養への直接介入(注1)と、栄養価の高い食品へのアクセス改善、子供の学習に必要な栄養の確保等の間接介入(注2)を、地域のニーズと利用可能なリソースを踏まえてセクター横断的に組み合わせることを推進します。

(注1)直接介入の例:母乳育児、乳児補完食、手洗いを含む適切な衛生行動の促進、母子のビタミン及びミネラル摂取の改善、全年齢層への微量栄養素強化食品の供給、栄養不良乳幼児への特別治療食の供給

(注2)間接介入の例:栄養価の高い食品へのアクセスの改善、安全な水へのアクセス、子供たちが学習するために必要な栄養の確保。(JICAも参加する国際的な栄養改善ムーブメント「Scaling Up Nutrition(SUN)」による)

非感染症対策を通じた過栄養への対処

過栄養については、栄養過剰摂取が、心血管疾患、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患の4大疾患に代表される非感染症疾患(NCD)のリスクを高める中間因子の一つであり、世界的なNCDの疾病負担の増加に寄与する要因であることに注目し、他の要因とともにNCD対策として対応していきます。

3.国際機関との連携促進

国連専門機関等の知見及び資金的リソースを活用することも重要です。特に栄養指標が悪いアフリカ地域を対象に、TICAD VIにおいてNEPADと共同で発足させた「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)」において、運営委員会を構成する国際機関等と連携し、重点10か国(注)による国別取り組み方針の策定とその実行を支援し、マルチセクトラルな取り組みによる優良事例の創出及び他国への普及に取り組んでいます。更にイニシアティブの推進役として、日本政府との調整、NEPADと連携したIFNA事務局のバックアップを行うほか、国際的な連携促進のために、対外的な発信に注力していきます。

(注)重点10か国:ブルキナファソ、エチオピア、ガーナ、ケニア、マダガスカル、マラウィ、モザンビーク、ナイジェリア、セネガル、スーダン。なお、地域バランスの観点から中央部と北部から1か国ずつ追加することが決定済みであり、調整中。その他、可能な範囲で重点国以外での取組みを展開する。

食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)

JICAは、2016年8月27日に、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)において「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(Initiative for Food and Nutrition Security in Africa:IFNA、イフナ)」を立ち上げました。IFNAは、アフリカ各国と支援機関がより連携を深めることで、現場での具体的な取り組みを推進し、栄養改善に向けた目標の達成を支援するものです。2025年までの10年間で、アフリカの国々において栄養改善戦略の策定や既存の分野の垣根を越えた栄養改善実践活動の促進、普及などに取り組みます。

4.民間連携の強化

産学官の連携を促進する栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)に運営委員会の共同議長として参加することで、日本企業が取り組む途上国における栄養改善事業を促進し、またJICAの持つ官民連携スキームも活用し途上国における栄養改善に貢献していきます。

栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)

日本政府内においても、日本の民間企業の栄養改善事業を後押ししようとする動きに呼応して、途上国への栄養改善事業を産官学で推進する「栄養改善事業推進プラットフォーム」が2016年に設立されました。JICAは、一般財団法人食品産業センターと共同でプラットフォームの運営委員会議長を務めており、企業のアイデアを尊重しつつ、具体的な案件の形成や実施の支援を行っています。本プラットフォームはこれまで日本が産官学で蓄積してきた知見を発信するとともに、栄養改善に資する優れた技術を持つ企業の国際展開を支援することにより、国際的な栄養不良問題を解決することを目指しています。

食品・栄養現地ビジネス視察プログラム

本プログラムはプラットフォーム参加企業等が、現地企業訪問・視察を通じて栄養分野のビジネス展開に繋がる可能性を検討するものです。

これまでに2016年度はカンボジア、2017年度はベトナムで本プログラムを実施し、現地企業及び関連省庁等への訪問・意見交換を通じて、栄養課題とビジネス展開の現状を把握するとともに、同国の日本人材開発センター共催のセミナーを通じて、現地ビジネスパーソンとのネットワーキングを行いました。