栄養改善に向けたJICAのアプローチ

1.マルチセクトラルな取り組み

JICAには農業・保健・水衛生・教育の各セクターにおける資金協力、技術協力の実績に加え、民間セクター・大学・NGO・海外協力隊との連携事業を有する強みがあります。これらを最大限活用し多層的な取り組みを強化していきます。

【画像】

栄養改善分野の課題対応力の強化と人材養成

JICAでは、人間開発部、経済開発部、地球環境部、青年海外協力隊事務局及び民間連携事業部等からメンバーが参加する栄養改善ネットワークを組織内に立ち上げ、栄養対策への課題対応力強化に取り組んでいます。またFacebook「みんなの栄養」(注1)を通じて、栄養改善に関するトピックスの発信を強化しています。

さらに栄養改善分野の国際協力を推進する専門家の育成に向けて、年1回、能力強化研修「栄養改善人材養成」(注2)を実施しているほか、栄養改善活動に関心のある様々な分野のJICA海外協力隊、専門家、コンサルタント等のネットワーク化を図る栄養改善パートナー制度(注3)を運営しています。

2.保健分野の協力を通じたアプローチ

脆弱な母子に対する低栄養対策

JICAは妊産婦や子どもに対する栄養対策が特に重要であると認識し、妊婦健診での栄養指導、母親に対する母乳栄養の推進、適切な離乳食(補完食)の指導、保健行政官や保健医療従事者に対する子どもの栄養不良防止のための研修等、母子保健事業の中で栄養対策を進めています。

生活習慣病予防を通じた過栄養対策

過栄養については、過剰な、または、バランスの悪い栄養摂取が、心血管疾患、がん、糖尿病、慢性呼吸器疾患の4大疾患に代表される生活習慣病(非感染性疾患(NCDs)に含まれる食生活や身体活動に起因する疾患)の発症リスクを高める因子の一つであることに注目し、NCDs対策(注4)の一環として過栄養対策に取り組みます。

3.フードシステムを通じた栄養改善へのアプローチ

JICAは、2016年のTICAD VI(第6回アフリカ開発会議)(注5)にて、アフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)(注6)と共同でIFNA(注7)を立ち上げました。IFNAは、アフリカ各国と支援機関が連携を深め、2025年までの10年間にわたり栄養改善に取り組むイニシアティブです。栄養指標が悪いアフリカ地域における栄養改善の推進のため、アフリカ各国と支援機関が連携して現場での具体的な取り組みを推進し、栄養改善に向けた目標の達成を支援します。IFNA発足当時は先行10か国を中心に支援を行いましたが、2019年のTICAD 7の際に「IFNA横浜宣言2019」を発表し、アフリカの2億人の子どもたちの栄養改善への貢献を打ち出しました。今後も、アフリカの国々における栄養改善戦略の策定や既存の分野の垣根を越えた栄養改善実践活動の促進、普及などに取り組みます。

4.水衛生分野の協力を通じたアプローチ

安全な水へのアクセス向上

安全な水を使うことによって下痢症や水を媒介とした感染症から人々を守り、良好な健康状態を保つことで、栄養素はより効率的に体内に吸収されます。JICAは、安全な水へのアクセスを向上させるため、都市部や村落部の給水設備の整備や維持管理能力の向上、住民への安全かつ衛生的な水の使い方の普及などを支援しています。

健康と命のための手洗い運動

調理や食事の前など適切なタイミングに正しい方法で手を洗うことで、感染症や食中毒を予防し、効率的に栄養を吸収できる丈夫な身体を作ることができます。JICAは、手洗いに象徴される衛生的な行動の実践を普及させるため、協力事業への衛生啓発活動などの取り込みを推進しています(注8)。

5.教育分野の協力を通じたアプローチ

みんなの学校プロジェクトにおける自主学校給食

JICAはニジェール、セネガル、マリ、ブルキナファソ、マダガスカル、ガーナにおいて「みんなの学校プロジェクト」(注9)を実施し、コミュニティ参加を通じた教育改善を支援しています。「みんなの学校プロジェクト」を実施した国では、教員・保護者のみならずコミュニティの地域住民が学校運営に参加する仕組みが構築され、各国/各コミュニティの状況/ニーズに合わせて教員・保護者・地域住民が協働して子どもの教育環境の改善を目指しています。

6.民間セクター等との連携

栄養改善の課題は、食品、保健医療、水などの分野で優れた製品やサービスを提供する民間企業による取り組みも大きく期待される分野です。JICAは民間連携事業を通じて、栄養改善に資する技術を持つ日本企業の海外展開を後押ししています。

栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)

2016年に、途上国への栄養改善事業を産官学で推進する「栄養改善事業推進プラットフォーム(NJPPP)」(注10)が設立されました。本プラットフォームは、これまで日本が産官学で蓄積してきた知見を発信するとともに、栄養改善に取り組む企業の国際展開を支援することにより、栄養改善の取り組みの推進を目指しています。JICAは、プラットフォームの運営委員会の共同議長を務め、企業のアイデアを尊重しつつ、具体的な案件の形成や実施の支援を行っています。