国連WFPとの連携

栄養改善のための国連世界食糧計画との連携

新型コロナウイルス感染拡大により各国における栄養改善に関する協力へのニーズの高まりを踏まえ、国際協力機構(JICA)と国連世界食糧計画(国連WFP)は、マダガスカル南部における母子の栄養改善のための166万ドルの協力、およびシエラレオネにおける地産食材による学校給食の推進ための100万ドルの協力について合意し、2021年9月30日、両国における活動に関する協力協定に署名しました。

1.マダガスカル:母子の栄養改善

2019年に発生した新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、マダガスカルにおいても脆弱者層の食料安全保障を脅かしています。特に、感染拡大以前より深刻な栄養状態が報告されている南部地域においては、新型コロナ感染時の重症化リスクも踏まえ、免疫機能の維持・強化に向けた迅速な栄養改善に向けた支援が必要となっていました。こうした状況において、マダガスカル国家栄養局からJICAを含む開発パートナーに対する協力要請がなされ、これに応える形で、広範な地理的カバレッジおよびネットワークを有する国連WFPとの連携によるマダガスカル南部での協力を決定したものです。協力期間は9カ月を予定しており、マダガスカル南部アヌシ県において、妊産婦および2歳未満の子どもとその母親、合計約21,800人を対象に、栄養補助食品の配布と、栄養啓発およびキッチンガーデン等における実践を含む研修事業を行う予定です。

また、JICAの技術協力プロジェクト「食と栄養改善プロジェクト(PASAN)」では、マダガスカル中央高地のイタシ県、アムルニマニア県、ヴァキナカラチャ県を対象として、マルチセクトラルアプローチの実践に向けたパイロット事業と、国家栄養局・県栄養局の調整能力強化等を行っています。今回の国連WFPとの協力は、本技術協力プロジェクトの一環として実施し、国連WFPがマダガスカルにおいて実践を積み重ねているマルチセクトラルな介入手法であるMIARO("MIARO"はマダガスカル語で守る(Protect)の意)アプローチと、PASANが開発している栄養、保健、農業、水・衛生の各セクターの教材の活用を組み合わせることで、相乗効果の発現を目指します。

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開始式にて(左から、マダガスカル国家栄養局ファイナンスディレクター RASOAZANATODY Norohanta Alexandrine氏、PASAN専門家 畑明彦氏、JICAマダガスカル事務所長 田中香織氏、国連WFPマダガスカル事務所代表 Pasqualina Disirio氏)

2.シエラレオネ:地産食材による学校給食の促進

内戦の影響から国民の半数近くが健康に生きるために必要な量の栄養を摂取できない状態にあり、アフリカの中でも深刻な状況にあるシエラレオネ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響から2019年以降国内の食料安全保障状況は急速に悪化しており、飢餓に瀕している世帯の割合は47%から63%へと急激に増加しています。シエラレオネの主食の一つであるコメは重要な栄養源である一方、農業セクターでは稲作農家の約8割を占める小規模農家の生産性向上が課題となり生産が追い付かず、農業・栄養の両面から状況改善に向けた支援が必要となっていました。

こうした状況に対し、JICAでは国連WFPが実施する「地産食材を用いた学校給食プログラム」と連携し、技術協力プロジェクト「持続的コメ生産プロジェクト(SRPP)」を通じて農家の生産性向上を支援します。具体的には地域の小規模農家約3,000世帯が生産した作物を給食用に購入したり、コメを活用した栄養価の高いメニューの開発を行い、学校給食として提供していく予定です。協力期間は2022年8月までの授業が行われる190日間、カンビア県とプジュン県の公立小学校からパイロット校として選ばれた15校のおよそ5,000人の児童が対象になっており、児童の栄養改善と同時に学校関係者や親に対する栄養啓発、および稲作農家の増産に対するモチベーション向上を目指します。

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署名式にて(左からJICAシエラレオネ支所長 佐藤仁氏、国連WFPシエラレオネ事務所代表Steve Nsubuga氏)

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学校給食プログラムで提供される食事を楽しむ児童たち ©WFP/Evelyn Fey

3.今後の展開

マダガスカル、シエラレオネにおける両事業は、JICAの技術協力プロジェクトを活用して新型コロナウイルス感染拡大を契機に高まった各国のニーズに応え、また2019年に締結した国連WFP-JICA間の連携協定をより一層強固にするものです。さらに、今回の両機関の連携は、2017年に設立された「食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA:Initiative for Food and Nutrition Security in Africa)」が契機となっています。

マダガスカルにおいて、国連WFPは、栄養補助食品の配布だけでなく、学校・家庭菜園も含めたマルチセクトラルなアプローチも推進しています。シエラレオネでは、学校給食の献立や地産地消というアプローチを進めています。JICAも、保健、農業、水衛生などマルチセクトラルな栄養改善を推進しています。また、既存の農業開発事業に栄養改善の要素を加えた「栄養センシティブ化」の取組も行っています。国連WFPとJICAのアプローチは互いに独自の要素を持ちつつ、補完的に活動しうるものです。

今後もJICAは、IFNAの枠組みを生かして国連WFPを含む開発パートナーと協働し、それぞれの強みを生かしながら各国における栄養改善に貢献してまいります。

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