バングラデシュとJICA -50年の道のりと今後の展望- (前編)

2023.11.22

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バングラデシュ事務所 所長 市口 知英

ヒマラヤ山脈から注ぐ河川が作った南アジアの国、バングラデシュ。北と東西の三方はインド、南東部はミャンマーと国境を接し、南はベンガル湾に面しています。日本の約4割の広さの国土に、約1億7千万人が住み、人口密度が日本の3倍以上もあります。

バングラデシュは1947年に英領インドから当時のパキスタンの一部として独立し、さらに1971年にパキスタンから独立して現在の姿になりました。その2年後(1973年)には青年海外協力隊の派遣事業を皮切りに政府開発援助(ODA)が始まりました。2023年は、JICAがバングラデシュへのODAを開始してから50年目の節目に当たります。このため、9月11日には、吉川外務大臣政務官やJICAの宮崎理事が出席し、JICA海外協力隊(JOCV)派遣50周年及び2016年のダッカ・レストラン襲撃テロ以降停止していた協力隊派遣再開に伴う式典が在日本バングラデシュ大使館で執り行われました。また、11月6日には首都のダッカで、バングラデシュの財務大臣の出席も得て、協力開始50周年を記念した式典が執り行われました。前編・後編に分けて、バングラデシュとJICAの50年間を振り返り、今後の協力を展望します。

ダッカにて開催された協力開始50周年記念式典(JICA)

ダッカにて開催された協力開始50周年記念式典(JICA)

7年ぶりに派遣された海外協力隊によるスピーチ(JICA)

50年前の「願いと期待」

「日常生活では、米も肉も少なく、衣料も家も酒もなく、バスも舟もガソリンも不足しているというように“ないないづくし”の状態であって、生活水準の向上を性急に望むことはむずかしい。協力隊員が派遣されているどの国よりもバングラデシュの直面している困難は大きく、切迫しているといわざるをえない。しかし、同国では、わが国の協力を強く望んでいる。このことは滞在中にかわされた多くの人達の言葉に表れているばかりでなく、電波のように実感として私達の身体に伝わってきたのである」。

これは、今から50年前の1973年に、バングラデシュへの協力をJICAが開始するにあたり、約1か月間現地に派遣された調査団員の言葉です。(「JOCV News 1973 年5月」出典。)

結びには、「願いと期待 共に汗する友へ」として、「我々のバングラデシュヘの協力には、目の前の飢えからの脱却に少しでも役に立ちたいという願いとともに、新生バングラデシュが、国造りに是非とも成功してほしいという期待がこめられている」と綴られています。短い文章ではありますが、現地の状況を目にし、バングラデシュ政府との対話を重ねた調査団としての強い決意をうかがうことができます。

子供たちに指導する海外協力隊員(谷本美加/JICA)

子供たちに指導する海外協力隊員(谷本美加/JICA)

50年の道のり

この50年間、技術協力、円借款(超長期・低利の融資)、無償資金協力、ボランティア事業(JICA海外協力隊)、民間企業との連携等を通じて、JICAは多くの分野と地域でバングラデシュへの協力を行ってきました。

「円借款」では、電力、運輸分野での大型のインフラ整備を中心にしつつも、防災、農村開発、保健・医療など幅広い分野を対象に、累計で3兆円を超える金額を供与してきており、近年はJICAにとって世界最大の円借款供与相手国の一つとなっています。

「技術協力」では、あらゆる分野を対象に、累計で約5,100人の専門家を派遣し、また14,000人以上を対象に研修を行い、人材育成や制度整備に協力してきました。「JICA海外協力隊」で派遣されたボランティアは累計で1,284人にのぼり、スポーツ、教育、保健、農業、コミュニティ開発とさまざまな分野で活躍してきました。

最近は「民間企業との連携」にも力を入れています。円借款における本邦企業の受注に加えて、民間企業を対象とした「海外投融資」や「中小企業・SDGsビジネス支援事業」の件数も増えています。
したがって後編では、バングラデシュのこれからの発展に向けた展望などについて、お伝えします。(後編に続く

母子保健に関する健康教育を受ける人々の様子(JICA)

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