国際緊急援助隊(JDR)について

日本は、地震や台風などの自然災害が多いため、これまでに豊富な経験と技術的なノウハウを蓄積してきました。こうした経験を途上国の災害救援に活かしたいとの思いから、1970年代後半に医療チームの派遣を中心とする国際緊急援助活動が始まりました。

1987年には「国際緊急援助隊の派遣に関する法律」(通称JDR法)が施行。1992年の同法改正も踏まえ、救助チーム、医療チーム、専門家チーム、自衛隊部隊の派遣が可能となりました。

また、2014年に西アフリカで流行したエボラ出血熱への支援の経験を踏まえ、感染症による被害に対してより効果的な支援を行うため、2015年10月に感染症対策チームが新たに設立されました。これらの5チームを災害の種類や規模、被災国の要請に応じて、いずれかのチームを単独ないしは複数のチームを組み合わせて派遣しています。

国際緊急援助隊の種類と役割

救助チーム

被災地での被災者の捜索、発見、救出、応急処置、安全な場所への移送を主な任務としています。チームは、外務省、警察庁、消防庁、海上保安庁、JICAに登録している医療班、構造評価専門家、そしてJICAの業務調整員で構成され、チャーター機の活用などにより、政府の派遣決定後、迅速に日本を出発する準備を整えています。

2010年には、国際捜索救助諮問グループ(International Search and Rescue Advisory Group: INSARAG)による、能力評価(INSARAG External Classification INSARAG:IEC)を受検し、三段階の評価のうち最高分類である「重(ヘビー)」の評価を受けました。その後、2015年、2022年と2回の再評価(INSARAG External Re-Classification:IER)を受検し、引き続き、「重(ヘビー)」の国際認証を更新しており、派遣時の一層の活躍が期待されています。

医療チーム

医療チームは、被災者の診療にあたるとともに、必要に応じて疾病の感染予防や蔓延防止のための活動を行います。メンバーは個人の意志で登録している医師、看護師、薬剤師、医療調整員の中から選ばれるのに加え外務省の職員やJICAの業務調整員から編成されます。隊の構成は、被害状況や被災国のニーズに応じて、柔軟に対応できるよう体制を整えています。また、医療チームは国際緊急援助隊の中で最も歴史が長く、派遣回数も最多です。

専門家チーム

専門家チームは、建物の耐震性診断や、火山の噴火予測や被害予測など、災害に対する応急対策と復旧活動について被災国政府へ助言を行います。また新たな感染症に対して、被害の拡大を食い止めるため助言を行うこともあります。チームは、災害の種類に応じて、関係省庁、地方自治体や民間企業の技術者・研究者などで構成されるほか、JICAから業務調整員が帯同します。

自衛隊部隊

大規模な災害が発生し、特に必要があると認められた場合、自衛隊部隊が派遣されます。自衛隊部隊は、艦艇・航空機を用いた輸送活動、給水活動、医療・防疫活動を行います。

感染症対策チーム

2014年に西アフリカで感染が拡大したエボラ出血熱への対応を踏まえ、2015年10月に新たに設立されたチームです。このチームは感染症に関する幅広い支援を実施するため、「疫学」、「検査診断」、「診療・感染制御」、「公衆衛生対応」の4つの専門機能と、自己完結型の活動を行うための「ロジスティック」を合わせた5つの機能から構成されます。

国際緊急援助隊の事務局機能はJICA国際緊急援助隊事務局が担っています。