パキスタン向け無償資金協力贈与契約の締結：農村部における女子就学率向上、ガンダーラ仏教の文化遺産の保全・理解促進に貢献

国際協力機構（JICA）は、2月10日、イスラマバードにて、パキスタン・イスラム共和国政府との間で、計2件、総額17億3,480万円を限度とする無償資金協力の贈与契約（Grant Agreement: G/A）を締結しました。

今回贈与契約を締結した無償資金協力案件は以下の2件です。
（1） シンド州農村部における女子前期中等学校拡充計画（16億8,600万円）
（2） タキシラ博物館機材整備計画（4,880万円）

　各案件の詳細は以下のとおりです。
（1）シンド州農村部における女子前期中等学校拡充計画
（The Project for Upgrading Primary Girls' Schools into Elementary Schools in Rural Areas of Sindh）

【事業の目的及び概要】
パキスタンでは、学齢期人口（5～16歳）の4割以上にあたる約2,280万人が不就学で、これは世界で2番目に多い数とされています。特に、日本の中学校にあたる前期中等教育（6～8年生）の純就学率（学齢期人口の中で就学している者の割合）は49%（男子53％、女子45％）に留まり、なかでも女子生徒の就学率の向上が喫緊の課題となっています。パキスタンでは、社会通念的にコミュニティ外の学校へ女子を通学させることに抵抗感が強く、近隣に学校がないことが子供（特に女子）を通学させない要因の1つになっています。

本事業は、中学校の純就学率が34％（男子37％、女子30%）と低いシンド州の農村部において、中学校校舎を新設し、教室用家具等を整備することにより、女子の中学校へのアクセス向上を目指すものです。本事業により、対象地域における就学率の向上とジェンダー間格差の是正に寄与するもので、SDGsゴール4（質の高い教育をみんなに）及び5（ジェンダー平等を実現しよう）に貢献します。

（2）タキシラ博物館機材整備計画
(The Project for Improvement of Equipment for Exhibition and Conservation of the Taxila Museum)

【事業の目的及び概要】
本事業の対象となるタキシラ博物館は、ガンダーラ仏教美術の歴史的・文化的価値を持った世界遺産であるタキシラの仏教遺跡群の中に位置し、これら一帯で発掘された貴重な出土品を展示・保存しています。同遺跡はまだ全体の3割ほどしか発掘されておらず発掘作業は現在も進行している一方、増加し続ける出土品を同博物館に展示するための十分な展示設備、出土品の劣化を防ぐための保存環境整備の設備が不足している状況です。

本事業は、パンジャブ州観光庁が所管するタキシラ博物館において、タキシラのガンダーラ遺跡群から収集される歴史的出土品の保全・展示環境改善に必要な機材を整備することにより、より多くの出土品が適切に保全・展示されることで、それら出土品の展示を通じた国内外の訪問者への情報提供の拡充を目指すものです。ガンダーラ仏教の歴史や文化遺産への関心醸成や理解促進を図り、青少年の人材育成、文化遺産保護を通じて、SDGsゴール11（住み続けられるまちづくりを）に貢献します。