第1回スタディワークショップ(SW)を実施しました(チッタゴン/ダッカ南部PTIクラスター)

2011年6月11日

バングラデシュも雨季に入りました。この季節の雨が、農作物にとっての恵みの雨となるそうです。

さて、3月に「横の連携強化」を目的として行ったスタディーグループ活動(SGA)に引き続き、チッタゴン(6月8日・9日)とガジプール(6月11日)それぞれの初等教員訓練校(PTI)で「縦の連携強化」を実践するスタディーワークショップ(SW)を実施しました。当初は、各PTIで2グループにわけて2日間実施する予定でしたが、野党による現政権への抗議活動(ホルタル)が起こり、ガジプールPTIでは2グループをまとめて1日で実施することになりました。本ワークショップは、初等教育局(DPE)監督のもと、各地域拠点PTIと各県初等教育事務所(DPEO)の共催で行われました。また、DPE訓練課と国立初等教育アカデミー(NAPE)からは、活動のモニタリングを行う人を派遣してもらいました。本ワークショップでは、ディストリクト(日本の県としての行政区間に近い)内の教員養成課程を実施する機関のPTI、郡内の学校をモニタリングする機関の郡教育事務局(UEO)、郡内の小学校教員に教科別の現職訓練を施す機関の郡リソースセンター(URC)、実際に子供に授業を行う現場の小学校(PTI実験校やURCのモデル校を含む)という、ディストリクト内の初等教育機関の関係者が一堂に集まり、授業の質改善についての協議を行います。また、今回はその初回となるため、活動目的の共有と授業研究の導入が主な内容となりました。筆者(河原)はガジプールPTIで行われたSWに参加したため、ガジプールでの活動を通しての活動報告を致します。

今回のSWは、以下のような流れで行いました。

  1. 開会式
  2. Primary Education Development Program 3(PEDP3)における本案件(JICA Support Programme2:JSP2)の役割についての説明
  3. 授業研究(Lesson Study:LS)についての説明と指導
  4. 授業観察に向けての授業の評価基準についての説明
  5. PTI実験校教師による生徒中心の授業の公開と参加者による授業観察
  6. 授業観察結果に基づいての議論
  7. 各学校での活動計画の策定
  8. 閉会式
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授業研究の手法を説明するPTI算数教官

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公開授業「距離の単位の変換」での一コマ

これまでのJSPの活動(過去のプロジェクトニュース参照)では、PTIやURCの教官が参加する機会はあっても、生徒と接する現場教師の参加の機会は限られたものとなっていました。そこでまず、PTIの教官から上記2.と3.の説明を行ってもらい、ディストリクト内の教育従事者の今後の活動に関する知識の共有を行いました。この、説明をPTIの教官が行う、という点がポイントで、この段階を踏むことで、今後の現場の先生方の活動が円滑に進む事になります。次に、4.を通して生徒中心の授業を基準とした評価を行い、現状の教師の授業評価から生徒の学習の評価への転換を促しました。そして、5.のPTI実験校教師の「距離の単位の変換」に関する授業を観察した後、6.の議論を通して、授業研究の手法を実践していくための準備を行い、最後に7.で各々の学校での具体的な活動計画を策定しました。授業観察後の議論では、子供の誤答への対処についての提案や、授業の最後に子供達自身で内容を振り返らせた事への肯定的なコメント等がありました。その後で、授業を公開した教師が参加者から出された意見に対して謝辞を述べ、「更に良い授業が行えるように精進していきます」と晴れ晴れとした笑顔で答えた時の目がとても印象に残っています。授業を他の教師に見せるという習慣の無かったこの国で、授業研究の手法によって授業者が非難の対象としてさらされるのではなく、授業の質を進歩させるための手法として受け入れられた事を、教師の目が物語っているように感じました。

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閉会式で本日の成果とExciting Schoolを強調する相馬専門家(総括/理科教育1)

全体を通して見ると、日程の変更やジェネレータの不具合で進行が滞る等の予定外の出来事もありましたが、会場では本活動への肯定的な意見が飛び交い、和やかな雰囲気の中で導入としての活動を終える事ができました。PTI校長のSW開催に関するマネジメントが良かった事、DPE訓練課の課長補佐が熱心に授業観察を行っていた事、そして、参加者が建設的な議論を行っていた事等、成功の陰には各々のより良い教育現場を作っていこうという熱意がありました。今後は、SW参加者のPLAN-DO-SEEサイクルの実践を通して授業研究に対する理解を深め、参加者と共に授業の質の向上を追及していく予定です。雨の中、多くの教育従事者が参加した今回のSWが、上層機関から現場の学校の子供たちへ繋がるパイプラインとなり、今後も回数を重ねる毎に、授業の中に豊かな実りを育んでくれるものと期待しています。

文責:インターン 広島大学 河原 太郎