5PTIクラスターにおけるスタディーグループ活動(SGA)を実施しました

2011年7月17日

7月上旬に、5PTI(第1回—クルナ・ボリシャル・シレット/第2回ダッカ南部・チッタゴン)におけるスタディーグループ活動(SGA)を実施しました。スケジュールは以下の通りでした。

7月9日(土)クルナPTIクラスター(第1回)
ダッカ南部PTIクラスター(第2回)
※7月9日は、6〜8日及び10〜11日に野党による現政権への抗議行動(ホルタル)が実施されたため、両PTIにおいて、半日の短縮プログラムを実施したため、模擬授業は実施せず。
7月14日(木)ボリシャルPTIクラスター(第1回)
7月16日(土)シレットPTIクラスター(第1回)
チッタゴンPTIクラスター(第2回)

今回が初めての開催となる、クルナ、ボリシャル、シレットの3PTIには、DPE訓練課と国立初等教育アカデミー(NAPE)から、活動のモニタリングを行うオフィサーが派遣されました。

当日の流れは、以前に実施されたSGAと同様で、SGAの開催に関する情報共有、またPTI教官同士による授業改善(教員養成課程C-in-Edの理科と算数)に関する技術交流を実施しました。

クルナPTIのSGAの参加者がもちよった指導案をルーブリックに基づいて点数をつけたところ、算数は最高得点が98点、最低が68点、理科は最高が170点、最低が95点でした。SGAの活動のポイントの一つですが、それぞれのグループが最高得点のついた指導案を選び、その指導案にみんなで改善を加えていく協働作業があるのですが、いずれのグループも活発に議論をしていました。クルナPTIでは、残念ながらホルタル(ゼネスト)による、短縮プログラムのため、ビデオを見ることで模擬授業の代わりとしましたが、やはり折角選ばれて、さらに改善を加えられた指導案に基づく授業を見てみたかったと思います。算数の選ばれた指導案の写真を掲載します(写真1)が、とても丁寧に図形についての指導案が書かれていました。

【写真】

(写真1)クルナPTIで選ばれた算数指導案

シレットPTIでは、通常通り、指導案を選んだあとに、それぞれのグループが模擬授業を実施しました。理科の授業では、選ばれたシレットのPTI教官が、個体、気体、液体について、生徒を3つのグループに分けて、3つの異なる実験をし、それぞれのグループがお互いの席を移動して、全員が一度はその実験を見られるようにしていました。ですが、この3つのそれぞれあまり関連性がないように見える実験を一度の授業で実施したことにより、盛りだくさんになってしまい、授業の意図がぼやけてしまったように思います。生徒に伝えたい一番のメッセージが何なのか、伝わってきませんでした。

算数の授業では正方形と平行四辺形についての授業で、教官が生徒をグループ分けして、実際の形を色紙で作ったものを見せて、説明させようとしました。しかし、生徒はこの違いを、きちんとわかっていなかったようで、グループ活動で導きだそうとしていた結論は出ませんでした。そのことは、教官自身が後の反省会でも述べていました。

シレットPTIにおける算数・理科の授業に共通して見られたのは、「グループ活動をすること=生徒に考えさせる授業」というバングラの授業でよくみられる仮説だったように思います。グループ活動自体は、よく生徒中心の授業で用いられる手法ですが、その前に、生徒が何を理解していて何を理解していないのか、を教官が事前に把握しておくことが重要ですし、考えさせるためのヒントを与えてあげること、思考を促すために教官が何をするべきか、その授業でこれだけは理解してほしいことは何か、という視点を持ってもらうことが必要ではないかと感じました。

【写真】

シレットPTIの理科の模擬授業の様子

【写真】

シレットPTIの算数の模擬授業の様子

ボリシャルPTIは算数専門家の高橋がモニタリングを行いました。算数では四角形の性質、理科では磁石の性質がテーマでした。算数に関して、宿題で持ち寄った指導案の検討ではTPの記述を参考にしたような記述も見られましたが、誤って平行四辺形等を定義している教科書の記述に縛られ、かつ図形の定義と性質の違いが明確に理解されていないのが目に付きました。これはPTI算数教官の基本的な教科知識の不足を示していると言えます。続いてPTI学生に対して行われた授業では、ボリシャルでも上記シレットPTIと同様にグループワーク等を行うことで満足してしまっていて、学習者の学習意欲をかき立てるような「活動を通じた発見」の機会はなく、さらには教科書以上の何かを学習者が得る授業にはなっていなかったことは残念でした。ただ、こうした授業はバングラデシュでは非常に一般的であり、ここに集まったPTI教官の出来が格別悪いと言うことではありません。逆にこうした現状を少しずつ変えていくのが我々のプロジェクトに課せられた使命なのです。

一方、理科グループはボリシャルPTIの理科教官と他のPTIの理科教官の能力がやや開いている印象を受けました。結果として、順当にボリシャルPTI理科教官の指導案が選ばれ、また実際に行われた授業も、学習者が磁石を用いて様々な発見をしていくのを促す、我々の視点から見ても良い授業と言えるものでした。この理科グループの課題は、ボリシャルPTI理科教官と協力して他のPTIの理科教官の専門知識や授業能力を如何に強化するか、ということになると思います。この意味では現時点では団栗の背比べ状態の算数グループよりも1歩、2歩先を進んでいると言えそうです。

【写真】

ボリシャルPTIの算数の模擬授業の様子1

【写真】

ボリシャルPTIの算数の模擬授業の様子2

【写真】

ボリシャルPTIの理科の磁石の性質に関する模擬授業の様子

第2回のSGAが実施されたチッタゴン、ダッカ南部PTIクラスターでは、第一回のSGAの経験に基づいて、円滑に第2回のSGAが実施されました。ダッカ南部クラスターでは、クルナPTIクラスターと同様にビデオによる授業分析を実施しましたが、2回目だったので大きな混乱はなかったようです。

5PTIクラスターにおけるSGAを同時期に実施し、今年次のSGAの最後の活動が終了しました。2年次は、第3グループ(ラッシャヒ、ロングプール)、第4グループ(マイメンシン、コミラ、ボグラ)のPTIクラスターに活動を広げ、全10PTIクラスターにおいて、SGAを実施していくこととなります。

文責:
研修計画・モニタリング1 笹間 郁子
算数教育1  高橋 光治