プロジェクトニュース_24

2017年4月21日

経験のとりまとめ方法に関する地域セミナー

プロジェクトでは、コスタリカのカウンターパートたち自らが、自分たちの参加型の生物多様性保全活動の経験を取りまとめて文書化できるようになるための活動を進めてきました。そしてその手法はマニュアルとして取りまとめられ、現在その他の多くのカウンターパートたちにも教授されています。この手法を学んだカウンターパートたちによって、これまでに22の参加型の生物多様性保全活動事例報告書が取りまとめられています。

この手法を中米地域に広げるため、2017年2月27日から3月3日にかけて中米各国から環境関連省庁の職員を招待し、当該手法の紹介セミナーを行いました。このセミナーには、中米統合機構加盟国のグアテマラ、ベリーズ、ホンジュラス、エルサルバドル、ニカラグア、コスタリカ、パナマ、ドミニカ共和国の合計8か国から、合計31名が参加しました。セミナーのインストラクターは、すでに自分たちの経験を取りまとめて文書化しているコスタリカのカウンターパートたちで、事前に数回のミーティングを行い、準備万端でセミナーに挑みました。

セミナーオープニングでの、フェルナンド・モラ環境副大臣、サルバドル・ニエト中米環境と開発委員会(CCAD)事務局長、JICA半谷所長の挨拶、その後、日本の環境省OBである青山銀三氏から、日本における参加型の生物多様性保全活動、自然公園の協働管理事例の紹介、そしてそれらの経験を取りまとめて発信していくことの重要性についての発表がありました。

プロジェクトで作成したマニュアルは14ステップからなるのですが、大きな流れは、1.取りまとめていく経験・事例の特定の仕方、2.誰が取りまとめに参加するのか、3.エポックとなる事項の特定と時系列による整理、4.エポックに関連した情報を収集するための手法、5.収集された情報を基にしたエポックとなる事項の分析、6.エポックの分析から教訓を導き出す技術、7.以上の情報の文書化、という過程を踏みます。実際には、各過程の最後にそれ以前の過程の見直しを行い、経験の分析や教訓の抽出を深化させます。また、情報収集は既存の報告書や文書のみによらず、関係者へのインタビューや、必要によっては関係者を集めてのワークショップ等を行うため、全体の工程を終えて報告書ができるまでには、少なく見積もっても3,4か月はかかります。

セミナーでは全体の工程を擬似的に経験することに主眼を置き、そのために各国の参加者に、それぞれの国で取りまとめていく事例を一つ選んでもらいました。

また、セミナー4日目には実際に事例をまとめた地区を訪問し、地元の水資源管理団体の人たちと交流を持ちました。取りまとめた報告書に基づいた自分たちの経験を発表する寸劇の発表や、意見交換がなされ、「自分たちの経験を取りまとめることによって、自分たちがやってきたことの意義がよりはっきりした。またそれによって国家保全地域システム庁の職員とのつながりが、より強固になった。皆さんもぜひ、地域のステークホルダーと共に、皆さんの経験を取りまとめ文書化してください。」との意見を聞くことができ、カウンターパートだけで事例を取りまとめるのではなく、その事例にかかわった人たち全員で事例を取りまとめることの重要さが再認識できました。

最終日に行った参加者へのアンケートでは、ポジティブな意見が多数聞かれました。特に手法が実践的なものであること、セミナーのインストラクターとなったコスタリカ人カウンターパートの質の高さ、そしてセミナーのオーガナイズを高く評価してくれたことは、プロジェクトで紹介した技術がコスタリカ人に技術が根付いたことを意味し、セミナーを企画、開催した我々にとっても非常に嬉しいことでした。

今後は、今回のセミナーで紹介した手法を使って、参加者が実際に自分たちの経験事例を取りまとめて共有してくれることを願っています。

【画像】8か国31名プラスインストラクターを含めた全員の集合写真

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ニカラグアからの参加者に手法を説明するコスタリカ人インストラクター

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エポックとなる出来事はこのような年表形式で時系列に沿って整理される。

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時系列に沿って整理されたエポックとなる事項を表形式で分析するグアテマラからの参加者。手前に見える小冊子がプロジェクトで作成したマニュアル。