2015年7月の活動

2015年7月31日

I.プロジェクト管理面に関わる活動

(1)週例会議の実施

プロジェクト対象3郡それぞれと、週1回のペースで会議を開催しました。その他のプロジェクト研修や会議が行われた週には、週例会議開催は次週へと持ち越しました。主な参加者は、各郡自然資源管理チームリーダー、バックストッパーです。バックストッパーがFFSモニタリングと実施状況について報告し、特に問題が見られるFFSグループについては、どのように対処するかを参加者で協議しました。週例会議で挙げられた問題点については、上位の会議であるマネジメント会議でも協議し、対処方針を決定しました。各郡の問題点については、III 1)に記載しています。
また、週例会議では、バックストッパーが主導して、月例ファシリテーター会議の技術インプットの準備や、マネジメント会議で議論する議題の準備と整理なども行ないました。

(2)月例ファシリテーター会議の実施

各郡で、第2ラウンド、第3ラウンドFFSのファシリテーターを対象に、月例会議を開催しました。主な議題は次のとおりです。
(1)FFSの進捗確認(乾期の苗木生産数再確認、雨期の準備、AESA(Agro-Ecosystem Analysis)等)
(2)AESAチャートの改善点
(3)アグロフォレストリーとアグロフォレストリーPTD(Participately Technology Development)
(4)乾期活動の結果分析
(5)苗木の移植(実演)
会議は、各郡の自然資源管理チームリーダーが進行しました。FFSの進捗確認では、バックストッパーが担当するFFSグループから過去1か月の活動について聞き取り、個別の状況に応じてアドバイスをしました。主な聞き取りの内容は、現在のグループメンバー数、グループが記録するウィークリーレポートの内容、乾期活動で生産した苗木数、Agroecosystem Analysis(AESA)の回数と内容、Today’s Topic(ファシリテーターによる技術的インプット等)の回数と内容、雨期作準備の状況についてです。このように詳細な情報を聞き取っていく段階で、グループの問題が浮き彫りになります。また、月例会議にはファシリテーターのみでなく、各FFSグループから代表者1名が参加して、ファシリテーターの報告内容をクロスチェックする機能を果たします。ファシリテーターがToday's Topicを教えていないケースや、ファシリテーション自体を放棄している状況も問題として報告されました。この問題は、特にリベンチュカラ郡において顕著であり、マネジメント会議の場で対策について議論しました。その他、アグロフォレストリーのコンセプトを組み込んだ圃場づくりや、苗木の移植方法について、バックストッパーが技術的な側面から指導しました。ファシリテーターは会議後1カ月の間に、各FFSグループのメンバーに対して同内容について指導する予定です。

(3)月例マネジメント会議の実施

月例ファシリテーター会議の翌週に、3郡で順次、月例マネジメント会議を実施しました。マネジメント会議を開催するのは3回目、開始してから3か月目ですが、同会議を開始したことによって、郡レベルの農業分野活動を指揮する主要人物が協議するよい機会となっています。これまでは、プロジェクト活動への郡上層部の巻き込みと情報共有が断片的でしたが、会議をはじめたことで、円滑かつ定期的に行われるようになってきました。また、7月の会議にでは、上層部より有益な助言がなされたり、パフォーマンスが悪いバックストッパーやグループへの指導が行われました。農業事務次長や課題別専門官はこれまで、主にバックストッパーからの報告で、間接的に進捗についての情報を得ていましたが、直接問題のあるFFSグループに赴いて問題の改善に対処するきっかけにもなっていることが確認できました。

(4)合同モニタリング評価の実施

6月下旬から7月上旬にかけての5日間で、州・県・郡レベルのプロジェクトC/P、連邦農業省専門官、プロジェクト専門家が協働して、プロジェクトの合同モニタリングを実施しました。7月には、リベンチュカラ郡のモニタリングを実施しました。合同モニタリング評価の目的は、1)プロジェクトの進捗状況を確認し、内容をモニタリング・シートに反映させること、2)現状の問題点やグッド・プラクティスを把握して今後の計画に反映させるための情報を得ることでした。
収集した情報は、最終日に行われたラップアップ会議で参加者が取りまとめ、規定のモニタリング・シートに反映しました。合同モニタリングチームからは、各郡で既に目に見える成果が出てきており、特にこれまで苗木の生産に関わったことのなかった農民により育苗活動が開始されていることは重要であるとの意見がありました。課題としては、FFS卒業後の方向性とプランが十分練られていない点、また郡による活動モニタリングの不十分さが指摘されました。その他の結果についても、合同モニタリング参加者がモニタリング・シートに記載しました。

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FFS卒業生の苗畑で生産される苗木と家畜用の飼料

【画像】

合同モニタリングでのFFS圃場視察

(5)四半期会議の実施

第2年次の第2回四半期協議会では、各郡からの進捗報告、合同モニタリングの報告、モニタリング・シート案についての協議を主な議題として実施しました。各郡からの進捗報告では、乾期活動の遅れから苗木生産数が伸び悩んでいることへの対策として早生樹種の導入で改善を試みていること、また、バックストッピングの改善に取り組んできていることなどについて、自然資源管理チームリーダーが報告しました。また、合同モニタリングとその結果に基づいたモニタリング・シート案についての協議では、主に現状の課題とその原因抽出に努め、各課題の対策案について参加者間で意見を出し合いました。特に、成果3(事業結果の郡計画への反映)に関して、郡レベルの活動指針となる郡年間計画を各郡が策定しており、今後郡年間計画の中にFFSを正式に組み込むよう、郡内での合意形成を行なっていくと全3郡が合意したことは大きな前進です。

II.能力強化に関わる活動

(1)マスタートレーナー養成研修(ToMT(注))ブロック5の実施

ToMTブロック5を7月11日〜15日の5日間で実施しました。
主な研修トピックは以下の通りです。
1日目:FFS運営(6月のモニタリング結果共有、FFSファシリテーションの向上にむけて)
2日目:FFSバックストッピング(アダマ郡、Galdiya Mukiye村)
3日目:FFS技術(野菜・作物・果樹に関する総合病虫害防除(IPM)の講義と実習)
4日目:FFS技術(アグロフォレストリー講義・実習、共有地・FTC・農地における植林に対する議論、樹木及び果樹の植栽実習)
5日目:AESA実施手法に関する議論・整理、月例会議における講習内容の検討、次回のToMTの計画
FFS運営(郡の計画にFFS活動を入れるためには、6月月例会議の計画策定、7月のTOMTの講義内容の確認)
今回は外部講師として、初めてホレタ農業研究所のベケレ博士を招請しました。博士により行われた、病虫害の観察手法、作物の被害状況に合わせた適切な指導内容は30年以上にわたる業務経験の深さを推察させるすばらしいものであり、プロジェクトが今まで実施してきたFFS、とりわけAESAの観察手法を根本から反省させるものでした。今後も可能であれば博士をTOF(Training of Facilitator)などの機会に講師として活用することを検討します。加えて、当プロジェクトが使用しているAESAチャート(AESAを圃場で行なった結果を記録する様式)に関しては、いままでのプロジェクトでの手法との違いが議論になりました。この違いについては日本人専門家が指導をして、参加者全員が納得する形で整理しました。その他、アグロフォレストリーに関するPTAレイアウトの実習や、ウッドロットをどのように奨励していくのかについて、有用な議論をしました。

(注)Training of Master Trainers

III.FFS実施に関わる活動

(1)第2ラウンド、第3ラウンドFFSの実施

7月は、各グループが、引き続き乾期の苗木管理と、雨期作の準備を進めました。また、雨期のアグロフォレストリーを取り入れた圃場の準備のために、生産した苗木を移植するための植え穴も準備しています。以下に、7月の時点での各FFSラウンドの郡ごとの苗木生産数を示します。

FFSのラウンド
苗木の生産数
第2ラウンド 第3ラウンド
本/平均
リベンチュカラ郡 9,041/393 757/121
ボラ郡 2,097/233 627/125
アダマ郡 300/150 1,359/226
小計 11,438/258 2,743/157

グループメンバーやバックストッパーからの報告と、プロジェクトの調べによると、リベンチュカラ郡では、以前より普及員の異動によりファシリテーターが不在になり、グループ活動が停滞しています。この問題について、郡カウンターパートが対応策を決定しました。議論の結果、普及員ファシリテーターが不在となったグループには、近隣の村の農民ファシリテーターをサポート役として配置し、グループが卒業する10月まで支援することとなりました。農民ファシリテーターのパフォーマンスが郡内で高く評価されている結果と言えます。一方で、ファシリテーター不在のグループを担当している一部のバックストッパーからは、グループ活動の停滞についての責任を回避するような発言が会議で出ており、バックストッパーのコミットメントに懸念が残ります。この点については、今後プロジェクト専門家内でも対応策を検討していく必要があります。

ボラ郡では、森林協同組合FFSでの活動において、全3グループの動きが停滞しています。関係者による情報収集と議論から、停滞の主な原因は、担当する普及員ファシリテーターのパフォーマンスだと判明しました。3グループのうち1グループは、同普及員ファシリテーターをFFS担当から解任し、普及員の直属の上司であるDAスーパーバイザーが担当を受け持つという決定がなされました。なお、ボラ郡ではバックストッパーが責任をもってFFSのモニタリングにあたっており、その他停滞しているグループについても、継続してバックストッパーと普及員チームリーダーがフォローアップをしていきます。
アダマ郡においては、自然資源管理チームリーダーのリーダーシップのもと比較的順調に活動が進められています。

IV.その他

(1)オロミア州農業局長への活動成果ブリーフィング

オロミア州農業局の局長、マネージメントボードのメンバーに対して、これまでのプロジェクト成果についてブリーフィングを行なう会議を企画・実施しました。目的は、第1年次からの活動を通して見えてきた、FFS手法を活用した自然資源管理の成果と教訓をオロミア州農業局上層部に共有することであり、この報告を通じて、将来的にFFS手法をエチオピアの普及手法に組み込む可能性について探ることです。ブリーフィングに対するオロミア州農業局上層部からの主な反応は次の通りです。
‐エチオピアの普及政策であるFTC(Farmer Training Centre)について、FFS手法が補完的役割を果たすことができるという教訓は重要であり、評価する。
‐ただし、オロミア州だけを見ても、種々の自然環境と生計手段が混在しており、現在の東ショワ県での活動成果のみをもとに、オロミア州全域に直ちにスケールアップすることは難しい。
‐プロジェクトがスケールアッププランを示すのであれば、オロミア州としてバックアップする。
‐実際の現場を直に見る機会として、次のステップとして事業地視察を計画・実施するのがよい。
‐FFSのメンバーは1年後(又は1年半後)に卒業となるが、卒業試験のようなものは実施するのか。政府が実施しているCOC(Certificate of Competency)を受験するようにして、政府の評価方法と統合を測ってはどうか。(現在のFFS受講者の卒業は、卒業前のFFS独自の技術理解度試験や出席率を基準に決定している。)
‐FFSのグッド・プラクティス事例を集め、活発に周辺住民や近隣郡にも経験を共有すべきである。

当プロジェクトとしては、州農業局上層部の意見を考慮し、次の段階として、同上層部、その他AGP(Agricultre Growth Program)関係者を巻き込んだ当プロジェクト事業地視察を計画していく予定です。

(2)JICA 英国駐在員の視察受け入れ

JICAエチオピア事務所からの要請により、JICA英国主席駐在員による、プロジェクト事業地視察を受け入れました。視察は1日の行程で、ボラ郡農業事務所の専門官へのインタビュー、FFS卒業生の活動地視察、現FFSメンバーの活動地視察をしました。同駐在員からは、エチオピア農村部の状況について理解が深まり、FFS卒業後に農民らが自らで工夫しつつ習得した技術を取り入れている様子を視察できてよかった、とのコメントを頂きました。