専門家一時避難の状況での主要病院の保健医療従事者向け研修の実施

2020年10月30日

2020年10月19日から22日の4日間、グレーターアクラ州の州都アクラで主要病院の保健医療従事者向け研修が実施されました。同州内の拠点病院に勤務する31名の保健医療従事者(助産師29名、栄養オフィサー2名)が参加し、母子手帳の効果的な活用及び栄養カウンセリングサービスとリスペクトフルケアについて、講義やグループワークを通して学びました。主要病院の保健医療従事者向け研修は、2019年1月~3月に実施された第1回全国モニタリング・スーパービジョンの結果、病院勤務の保健医療従事者、なかでも助産師の研修修了者数が少ないことがわかり、主要病院勤務の助産師を対象に全国で追加実施することになったものです(ホームページ記事「全10州において、母子手帳活用状況に関するモニタリング・スーパービジョンの実施(2019年3月31日)」参照)。すでに2019年12月にアシャンティ州で37名、2020年3月にボルタ州で34名、グレーターアクラ州で21名、合計で92名のヘルスワーカーが研修を受けており、今回は病院数が多いグレーターアクラ州における2度目の主要病院向け研修となります。

研修準備・実施体制

今回のグレーターアクラ州での研修は、コロナ禍で一時避難帰国中の日本人専門家が、GHS家族保健局、グレーターアクラ州保健局と3名のプロジェクトナショナルスタッフによる研修準備と実施を遠隔から支援する形で進められました。また、JICAガーナ事務所にも実施面での支援を受け開催することができました。プロジェクトのナショナルスタッフは、これまで専門家からの直接の指示の下で研修準備・運営に当たってきましたが、今回は専門家の遠隔からのサポートを得つつ、家族保健局及び州保健局と現場で適切にコミュニケーションをとりながら、研修を滞りなく進めることが求められました。専門家の側では、ナショナルスタッフが漏れなく研修準備を進めることが出来るようチェックリストを作成し、SMSやオンラインミーティングを通して密に連絡を取り合って進捗を確認するように努めました。ナショナルスタッフの頑張りがあり、研修会場の手配から研修物品の用意、各病院からの参加人数の把握まで、一歩一歩着実に研修を進めることができました。

改訂版研修プログラムと教材の試用

2020年4月からの一時避難帰国中、専門家はGHS家族保健局のナショナル・ファシリテーター達とオンラインで定期的に会議を持ち、研修プログラムと研修教材の改訂を進めてきました。この作業を経て、研修教材の構成や流れが整えられ、母子栄養の基礎や栄養カウンセリングサービス、リスペクトフルケアの講義やグループワークの内容、保健医療施設での実習がより充実したものとなり、結果として研修プログラムが3日間から4日間へと拡大されました。今回の研修でこの改訂版の研修教材を試用し、研修後に最終化することになりました。(ホームページ記事「研修教材とプログラムの改訂」参照)

コロナ感染リスク軽減策を模索しながらの研修実施

参加者間の身体的距離を十分取るために、当初は参加者人数を減らす方向で調整を行いましたが、GHS側から人数を減らさず広めの会場にすることで、身体的距離がとれるようにしてほしいとの要望があったため、いつもの研修よりも広めの会場を確保して対応しました。研修中はマスク着用を徹底するとともに研修会場入り口と各机の上に手指消毒液を置いて適時の使用を呼びかけました。研修初日には参加者の体温計測も実施しました。また、これまで研修では、食堂で昼食が配膳され集まって食べていましたが、今回は、個別に用意された食事を研修会場内の自席で食べるように手配しました。

【画像】ナショナル・ファシリテーターの机に手指消毒液が置かれている様子

また、アクラのコロナ感染者が他州に比べて多いことから、州や郡保健局、そして病院責任者と相談し今回の研修では保健医療施設での実習を行わず、代わりに参加者間で演習を行うことにしました。保健医療施設で母子を相手に母子手帳の説明や、身体計測、カウンセリングの練習などを行う事で実際の感覚をつかむことが理想的ではありますが、会場内は研修講師の目が行き届きやすく指導を受けやすかったこと、移動時間が必要ない分練習時間が増えたことは、研修会場での演習のプラスの側面であったと言えます。

【画像】カウンセリングの練習

【画像】母子の体重計測の練習

研修の成果

通常時とは異なる点が多く、準備・実施期間を通じて様々な工夫や対応が求められたグレーターアクラ州での研修ですが、これまでも専門家とともに何度も研修を実施してきたグレーターアクラ州の州ファシリテーター達のもと充実した講義や演習が行われました。栄養カウンセリングサービスやリスペクトフルケアなどの新しく加えられた内容に関しては、ナショナル・ファシリテーター達が適宜支援をして、参加者に理解がしやすいよう明確な説明を行いました。また、3日間から4日間へと研修期間がのびたことで、以前の研修よりも余裕を持って講義やグループワークを行う事が出来るようになりました。事前・事後テストの平均点が、24点(事前)から71点(事後)に大きく上がったことからも、研修の質と参加者の習得度の高さがうかがえます。

今後の予定

主要病院の保健医療従事者向け研修は、母子手帳を使ったサービスを定着させる上で非常に重要であり、これからも全国で順次実施していく予定です。今回のような形での研修準備・実施は、通常時の研修に比べて非常に手間と時間がかかるものではありますが、専門家の遠隔からの支援を受けながら一つ一つ課題を乗り越え研修を成功させたナショナルスタッフの活動実施力が大きく育ったことは間違いありません。また、2018年に実施した講師育成研修後2年が経過し、ナショナル・ファシリテーター、州講師が、その場の状況に柔軟に対応しながら、質の高い研修を実施できるようになっていることが確認でき、大きな成果を実感できました。プロジェクトでは、今後も専門家とナショナルスタッフが一丸となり、新型コロナウイルスにかかる状況の変化を見守りつつ、その時々の最善の方法で研修を実施し参加者の学びを最大限支援していきます。