種子・肥料貸付、栽培技術強化プログラムの近況

2019年5月24日

本プロジェクトでは、コメの収量増加をはかるため、「種子・肥料貸付、栽培技術強化プログラム」を実施しています。
これは、生産性向上のための技術研修(注)に、イネ種子と肥料の貸与をセットにした活動です。参加を希望する農家は、まず栽培技術の研修を受講してもらい、その後種子と肥料を配付します。収穫が終わり農家に現金が入ってから、貸し付けた種子と肥料の代金を回収する、というシステムです。

このプログラムは、洪水で被災した農家の支援と、プロジェクトが推進するコメの生産性向上を目的に、2018年(正確には2018年12月から2019年3月まで)の乾季作に実施したもので、現在、その結果をとりまとめているところです。
乾季作での対象は、かんがい水の確保が可能な約1000軒の農家で、その内263軒がこのプログラムに参加しました。

今回、このプログラムの成果の一部が見えてきたので報告します。

サイブリ郡トンヘン地区では、プログラムに参加した48軒の農家の内、10軒の収量を前年の乾期と比較したところ、プログラムに参加する前年が1ヘクタールあたり3.68トン、プログラム参加後は4.55トンと、35%の増収が見られました。なお、同地区でプログラムに参加しなかった農家は、前年と比べ9.4%の減収でした。

一方、サイブリ郡ソムサアード地区は、プログラムに参加した117軒の農家の内、12軒を調査したところ、前年が1ヘクタールあたり5.21トン、プログラム参加後は5.94トンと、15.8%の増収。一方、プログラムに参加しなかった農家は、前年と比べ3.6%の増収に留まりました。

このことから、技術指導に加え、種子と肥料をセットで提供することにより、農家が新たな技術を試す機運を高め、それが生産性向上につながっているということが言えそうです。
以上は、まだ1回の実施を通じた状況ですが、このプログラムは、2019年雨季作(2019年6月から9月頃)も続けて実施していく予定です。

(注)技術研修の主な内容
(種子と肥料の配布後に、これらの内容を農家に実践してもらいます)
1)優良種子の使用と種子の塩水選(塩水に沈んだ重い種子だけを選別して使用)
2)基肥の施用と土壌混和(田植え前に適切な種類・量の肥料を撒くこと)
3)適正な栽植密度(田植えの間隔を適正にすること)
4)追肥(追加の肥料を、適切な時期に、適切な量撒くこと)

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種子・肥料の引き渡しの直前に技術研修を実施。供与でなく貸与であるため農家は真剣に受講。

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研修後の肥料の引き渡し。

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対象農家に対する栽培中のモニタリング。肥料の効き具合や病害虫に応じてその場で技術指導。

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3月下旬、収穫が始まった。増収した農家からは喜びの声が。